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2005年03月22日(火)
「山背郷」 熊谷達也

「山背郷」集英社文庫 熊谷達也
一人の得がたい作家が誕生した。解説で池上冬樹氏がこの魅力的な短編群が生まれた経緯をるる述べているが、今回は氏の説に全面的に賛成する。熊谷達也はこの短編群でひと皮剥けたのだ。

熊谷達也のデビュー作「ウエンカムイの爪」は、フレッシュな面もあったが、中盤のたるみ等、まだまだという感じがあった。しかしこれは違った。描写の緻密さ、浮き上がる人物像、「失われた、自然と人間との関係・闘い」というテーマの普遍性、唸る事しばしば。たった四年ほどで作家というものはこれほどまでに成長するのだ、と嫉妬さえ覚えた。

特に私は『潜りさま』『メリィ』『川崎船』がお気に入り。