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| 2004年12月22日(水) ■ |
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| 「雪明かり」藤沢周平 |
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「雪明かり」講談社文庫 藤沢周平 再読である。しかしこみあげてくる想いはいつも切なく、愛しく、優しく、哀しい。市井ものと武家ものが交互に出てくる短編集。山田洋次監督の映画の原作となった表題作についてはどなたかに譲るとして、今回は2編の市井ものについて述べたい。
「恐喝」竹二郎はあの後、死んだのだろうか。なんとか生き永らえたのだろうか。ひとつ分かるのは、竹二郎が体を張った理由(わけ)は、決してあの心優しいおその嬢のためではなく、寺の後妻に行くと言う二つ上の従姉のためであったのだ。「あんなのと早く手を切らないといけないよ」姉とも愛しいともいえる人のなんでも無い一言が、男に一生一代の行動をとらせるきっかけになる事も、たしかにあるだろう。
「暁のひかり」目の前に、映画のように、早朝の河岸の景色が広がるような一編だった。少しづつ暁の光に包まれていく景色の中で、すさんでいた心は少しづつほぐれていく。市蔵だけではない。読者である私もそうだった。だからその後の市蔵を包む「せきりょう」も、我が身の事のように思う。
この短編集、全編に渡り「人が人のしあわせを願っている」。願うのほうの人は決してしあわせではないというのに。
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