江草 乗の言いたい放題
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2007年09月23日(日) わたしもママが迎えに来るんだから・・・        ブログランキング投票ボタンです。いつも投票ありがとうございます。m(_ _)m 携帯用URL by Google Fan

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 浅田次郎の短編集「鉄道員(ぽっぽや)」に「角筈にて」という作品が収録されている。これは父親に捨てられた子どもの物語である。もしかしたらお父さんは自分を捨てたのじゃないかとうすうすは感じつつも、「帰ってくる」と信じることでそれを打ち消そうとして、深夜まで待ち続ける。バス停の前の道路一杯に蝋石で絵を描きながら待つのだ。「鉄道員」もすぐれた作品だが、オレはこの「角筈にて」にもっとも感動し、不覚にも泣いてしまったのである。

 子どもを虐待する親もいれば、放置する親もいる。しかし、捨ててしまう行為に比べればまだマシなのかも知れない。どんなひどい親であってもいないよりは居てくれた方がいい。虐待事件が起きるたびに、こんなひどい親なら居ない方がいいとよく言われる。しかし、そんなひどい親であってもその子にとってはかけがえのない唯一の親なのだ。この世で唯一の血を分けた肉親なのだ。その親から捨てられるということはどれほど悲しいことだろうか。アサヒコムから以下の記事を引用する。

5歳と4歳の姉妹、無認可保育園で2年間生活 北九州2007年09月21日21時19分
北九州市内の無認可保育園に預けられた5歳と4歳の姉妹2人が、両親の育児放棄がきっかけで約2年間にわたり園で生活していたことが21日、明らかになった。匿名の通報を受けた市が18日に園を立ち入り調査し、姉妹を市の施設に一時保護した。園長は「自分の子どものような感じになって手放せなかった」などと話している。市は、園の対応が児童福祉法(要保護児童発見者の通告義務)違反にあたるとみて調べている。
 姉妹が暮らしていたのは同市小倉北区砂津2丁目の砂津保育園。82年に開設され、姉妹を含め13人を24時間保育で預かっていた。
 市などによると、05年春から20代の母親が姉妹を園に預けるようになり、当初は送迎していたが、同年10月ごろに預けたまま連絡が途絶えた。一方、離婚したという20代の父親は園を2度訪ねてきた。同年秋ごろの2度目の訪問の際には、姉妹の寝顔を見て涙を流していたが、その後は連絡がなかった。園は保育料は受け取らないまま姉妹を預かり続けた。2人の健康状態はおおむね良好という。
 21日に記者会見した佐藤良子園長(65)は「施設にはやりたくないという思いと、涙を流す父親を見て、迎えに来てくれるという確信があった」と説明。さらに「うちの子になったような感覚で、養子にしたいという気持ちもあった」と語った。
 市は「虐待が行われているのではないか」という別の通報で8月10日にも園を調査。身体的虐待はなかったが、園は「長期滞在児はいない」と虚偽の回答をしていた。佐藤園長は、それ以前の定期調査の際も同様に回答していたことから、「今さら言い出しにくかった」と釈明している。
 市が姉妹の両親を見つけて事情を聴いたところ、母親は「借金で昼も夜も働いて体を壊し、父親に引き取りを依頼した。子どもたちに申し訳ない」、父親は「働いて迎えに行けるようになればと思っていた」と話したという。
 同園をめぐっては96年にも、当時2歳と5歳の男児2人を2〜4年間滞在させていたことが判明。市が改善を指導したという。児童福祉法や厚生労働省の通知は、長期滞在児がいる場合には行政機関に報告することを保育施設に求めている。市は同園の問題点を調べたうえで指導を検討する。


 親が無認可保育所に置き去りにした姉妹を、佐藤良子園長は2年間預かり続けた。いつか親が迎えに来てくれると信じながらである。もちろん保育料は払われていない。普通ならそんなゼニにもならない子どもなんて放り出して施設に引き渡すだろう。しかし、佐藤良子園長は善意から預かり続けたのである。わが子のような感覚で、養子にしたいという気持ちもあったという。親に捨てられた姉妹を2年間も育て続けたこの行為は果たして責められることなのか。このような善意の人が「児童福祉法違反」という罪に問われるのか。罪に問われないといけないのは養育を放棄して連絡もよこさない親の方ではないのか。むしろ行政はこの佐藤園長の無償の行為に対して感謝すべきではないのか。オレはそのように感じるのである。

 この「虐待云々」の通報を行ったのはおそらく他の園児の親だろう。「うちはゼニを払ってるのに、タダで預かってもらってしかもほったらかしの親が居る。そんなの不公平じゃない!」という気持ちでありもしない虐待話をでっちあげて警察に通報したのだろうか。もしもそうなら何とも情けない親である。なぜそこで親に捨てられた子の不幸な境遇を思わないのか。オレがその保育園に子を通わせる親なら、恵まれない子を助けようとする善意の園長のために寄付するだろう。タダで2年間預かっていることは悪いことなのか。なぜ自分たちの幸福な生活に対して感謝できないのか。なぜ園長の思いを理解できないのか。
 さらに追加で配信されたこの記事はますます涙を誘うのだ。

5歳姉「私にもママがお迎え」 妹の世話も 保育園養育2007年09月22日17時19分
両親が育児放棄した5歳と4歳の姉妹が北九州市小倉北区の無認可の私立砂津保育園に約2年間預けられていた問題で、姉は他の園児に「私も(母親が)迎えに来る」などと話していたことがわかった。21日に記者会見した佐藤良子園長(65)や市によると、2人は他の園児たちと一緒に規則正しい生活を送っていたという。
 姉妹は佐藤園長を「園長先生」と呼んでいた。24時間保育の園では他の子どもたちと同様、毎日午前8時〜8時半に起床。3食とおやつをとり、午後10時には寝ていた。寝る時も他の園児たちと一緒。1日1回は近くの公園に遊びに行っていた。
 周りの子どもが「今日はママが早く迎えに来るよ」と言うと、姉は「私も迎えに来るよ」と言うことがあった。そんな時、佐藤園長は「ここがおうちだよ」と語りかけていたという。
 姉妹は現在、児童相談所にあたる市子ども総合センターに一時保護されている。多少やせているが、外傷や情緒的な不安は特になく、食事も「おいしい」と食べている。姉には虫歯、妹には軽い歩行障害がある。
 姉妹とも元気で人懐っこく、姉は妹の世話をよくしているが、園での生活についてはあまり話したがらないという。 同センターは「姉妹をどうするかは親と話し合う。なるべく育ててほしいが、できない場合は児童養護施設に預けるなど適切な方法をとりたい」としている。


 母親がお迎えに来る他の園児の前で、この姉妹の姉は他の園児に「(わたしも)迎えにくる」と話していたというのだ。自分を捨てたはずの母親が、いつかはきっと迎えに来てくれると信じて2年間も待ってるのだ。なんと切ない思いだろうか。5歳の女の子にとって母親が迎えに来てくれないのがどれほど悲しいことであるか。もはや親が迎えに来ないことをわからせようと佐藤園長は「ここがおうちだよ」と語りかけても、「ママがきっと迎えに来る」ことを信じ、園長がいくらわが子のように愛情を注いでもそれはやはりママではなく「園長先生」だったのだ。どんなひどい親であっても、やはり親なのである。

 2年間自分たち姉妹を見守ってくれた佐藤良子園長から引き離されて、姉妹は市子ども総合センターに一時保護されている。そのまま実の親のところに戻されるのか。もう佐藤園長のところに帰ることはないのか。

 無認可保育園の中には金儲けしか考えてないところもあれば、幼児を虐待するとんでもない所もある。この砂津保育園は13人しか園児が居ない小さな保育園であった。24時間保育で月3万円という保育料は驚くほど安い。なんと良心的な施設だろうか。しかも佐藤園長はゼニを払わずに捨てられた子まで分け隔て無く面倒を見てくれているのだ。こんな人こそ公的で大規模な施設の園長にふさわしいのではないか。ろくに保育のこともわからない天下りの税金泥棒が名前だけの園長に納まってるような保育園もあるらしい。愛情に恵まれない子どもたちにとって、真に必要なのはこの佐藤良子園長のような愛と善意の人ではないのか。オレは少なくともそう考えるのだ。

 子どもは親を選べない。どんなひどい親でも、子から見ればこの世に唯一のかけがえのない親なのだ。自分の思い通りにならないからとその親を殺す子がいる。働け働けとうるさいからと親に熱した油をぶっ掛けるニート野郎が居る。いつから親子というのはかくも哀しい関係になってしまったのか。なぜ親子はお互いを愛せなくなってしまったのか。

追記 この園長先生、どうやら私が思うほどには善意の方ではないのかも。こういう記事を見つけました。

保育園の置き去り姉妹、虫歯や足の関節変形も放置
9月29日14時49分配信 読売新聞
 北九州市小倉北区の無認可保育所「砂津保育園」(佐藤良子園長)で、5歳と4歳の姉妹が2005年春から約2年間預けられたまま園内で生活していた問題で、姉は歯の一部が溶けるまで虫歯が進行し、妹には足の複数の関節が変形した歩行障害があることが、市子ども総合センター(児童相談所)の委託を受けた病院の検査でわかった。
 センターは、園が2人を一度も病院に連れて行かず放置し、症状が悪化したと判断。児童虐待防止法違反も視野に入れ、来週にも児童福祉法に基づき園を立ち入り調査する。
 センターによると、姉には12本の虫歯があり、全く治療を受けていないため、一部の歯が溶けたり変色したりしていた。妹は、両足の股(こ)関節やひざ関節が変形し、足が大きく湾曲していた。病院側からは「早期に治療していれば、これほどひどくはならなかった可能性が高い」と説明があり、センターでは、園が適切な対応を怠り放置した疑いが強いとの判断に至ったという。



浅田次郎の短編集ではこういう本がお勧めです。
霞町物語 (講談社文庫)
姫椿 (文春文庫)
月のしずく (文春文庫)
月島慕情
月下の恋人


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