江草 乗の言いたい放題
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2006年03月23日(木) おまえの命が担保なんだぜ!        ブログランキング投票ボタンです。いつも投票ありがとうございます。m(_ _)m 携帯用URL by Google Fan

 消費者団体信用生命保険という商品がある。住宅ローンのように融資期間が長期にわたる場合、返し終わるまでに死亡や高度障害などの不測の事態が起こるかも知れないという不安が、借りる方にも貸す方にもある。それを解消するのが団体信用生命保険である。これは貸す側の金融機関が住宅ローンの借り入れ者を生命保険に加入させ、もしも死亡などの保険事故が発生したときは生命保険金で未返済の債務を回収する仕組みである。この保険では金融機関が保険契約者兼保険金受取人となり、生命保険会社が保険者、借入者が被保険者ということになる。つまりこれは融資残高を保険金額、融資期間を保険期間とする掛捨保険なのである。

 この団体信用生命保険、公庫融資などの公的住宅ローンにおいては任意加入だが、民間住宅ローンでは半ば義務付けられていて、団体信用生命保険への加入資格があることが貸付条件となっていることをどれだけの人が知っていただろうか。この重要事項は契約書の片隅に小さな文字で書かれていて、気づかない人が多いのである。「カネは貸すけど、あんたの命が担保だぜ」という前時代的な残酷な制度が存在していたのだ。

 契約者が死んだ場合、ローンの残債は保険金で支払われるためにその後の負担は免除される。死んだら住宅ローンはチャラになるのだ。オレはそんなことはじめて知ったのである。金融機関の中には保険金を受け取りながらも、制度をよく理解しない家族からしっかりとローンの残債を払わせる悪魔のような連中もいそうである。「ガンになったら払わなくていい」という住宅ローンは、実は借入者が死ねば保険で回収できるから金融機関は損しないわけで、客がガンで死ぬことを前提にしてるわけである。

 この団体信用生命保険に、住宅ローンを貸し出す金融機関だけではなく、武富士やアコム、アイフルといった大手の消費者金融もカネを貸し出すと同時に加入させていたらしい。それを聞いてオレはびっくりした。数千万の住宅ローンならまだ話は分かる。ところがサラ金で借りるゼニなんてせいぜい50万や100万だろう。そんなわずかなゼニのために命を担保にして差し出さないといけないのか。オレはそういうところでゼニを借りたことがないのでわからないのだが、ちょっとそのルールはえげつないような気がするのだ。

 ただ、この残酷な仕組みを廃止してしまい、「死んだら借金は踏み倒せる」となると貸す側は死なない人間にしか貸せないということになって、誰が死んで誰が死なないかと判定するのに健康診断したり細木数子に訊いたりとてんやわんやするのである。TVのCMの「どうする〜 アイフル〜」という節回しも、この事実を知れば「死んだら〜 チャラだよ〜」と聞こえてしまうのだ。

 3月23日、アイフルなどからの借金を苦に自殺した女性の長女が、「母親がアイフルを受取人とする生命保険に加入させられていて精神的苦痛を受けた」として総額330万円分の損害賠償を求める訴えを神戸地裁に起こした。原告側は「命を担保とすることで厳しい取り立てを助長している」と訴えている。多重債務者が自己破産してしまえば債権は回収不能だが、死んでくれればこの保険を使って回収できるのだ。だからサラ金は顧客を精神的に追い込むのである。オレはやっと業界のからくりがわかったのである。年間3万人と言われる自殺者の中には、消費者金融からの借金を苦にして死ぬ人も1/3くらいはあるかも知れない。しかし、自殺してくれば保険金で回収できるわけだから、消費者金融側としては死んでくれた方が回収の手間が省けてラッキーということになる。そんな残酷な仕組みが温存されていたのである。

 アイフル側ではこの命を担保にする仕組みに関して「顧客が同意書に署名し、オペレーターにも質問できるので同意は得ている」と説明しており、アイフル広報部では「遺族の負担を少なくする制度だ」と答えているとか。厳しい取り立てで客を自殺に追い込む闇金融業者が問題視されるが、大手のサラ金もその中身は全く同じだったのである。「死んで保険金で払え」といちいち言わなくても、最初に契約したときにその同意をすでに得ているからOKだったのだ。もっとも真っ当な暮らしをしていればサラ金なんかでゼニを借りなくてもいい。命を担保に借金しないといけない時点でもうそいつはアウトだ。そんなことわかりきったことである。

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