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あるこのつれづれ野球日記
あるこ
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2003年09月11日(木)
野球談義


 ものすごく人寂しかった。昼過ぎに「今日も神宮へ行く」という相方と電車の中で別れ、2時に待ち合わせしている某虎党さん(掲示板時代の常連さん)と会うために、東京駅に出てきた。あと1時間もすればひとりぼっちではなくなるのに、その1時間が耐えきれず、手相占いをしてもらった。ちょっと厚化粧のおばさんは、人寂しさに隠れたどんよりした気持ちを、「今は何してもダメな時期だから仕方ないよ。10月まで我慢しなさい」とあっさり片づけてしまった。(あと、「あなたは東へ行くと疲れるから、北か西へ行きなさい」と言われた)

 2時から4時くらいは某虎党さんとお茶をしていたので、寂しさは紛れたが、帰りの新幹線でまた人寂しくなった。3時間近くもどうしようと思っていたら、いい感じで眠気が襲ってきた。よっしゃ、こんな感じで京都まで寝てしまえ!ところが、おなかがすいて、完全睡眠モードが妨げられる。そうや、おやつは食べたけど、昼ご飯食べてへんかったなあ。思い出したように売店で買ったバームクーヘン(これもおやつやんけ)を袋から取り出して、ほおばった。すると、目が覚めてしまった。あ〜あ。窓の向こうは薄暗い。もう少しで景色見て気を紛らわせることも出来なくなる。

 「雨雲が出てますねえ。雨、降るのかな」
 いつの間にか隣の席に人がいた。おそらく私に話しかけているのだろう。私は、「そうですね」とだけ答えて、黙ってしまった。こういうのしんどい。中途半端に話してしまって、そのあとずっと沈黙で…。何も話さなかった方が気楽だったのに、みたいな。でも、話は終わらなかった。

 「帰りですか?」「はい」「どこに帰るの?」「京都です」「東京へは観光で?」「はあ、まあ」。そんな会話が続いた。隣の人は会話の糸口を探しているよに思った。私と同じで、人寂しいのかもしれない。「神宮行ってたんですよ。負けましたけど」。初めて自分から話した。すると、「えっ、阪神?!僕も好き。大阪の人間だから」。声のハリが今までのとは違った。私は初めて、隣の人と目線を合わせた。細身でスーツ姿に身を固めた年輩の男性。めがねをかけていて、優しい顔つきをしていた。ほっとして、言葉がせきをきったかのように出てきた。

 タイガースの話から、高校野球の話になった。大阪はどこが甲子園優勝経験があるのかにかなりの時間を割いた。おじさんは、高校生のとき、藤井寺球場でPL学園が甲子園初出場を決めた試合を見て以来のPLファンだ。私なんかはPLが初出場したときのことなんて考えたことなかった。PLは100年前から常連で、強豪校だと思っていた。年齢は56。高校野球ファン歴は50年。私が見たことのない選手もその目に焼き付けている。いい機会だから、池永投手と湯口投手のことを聞いた。「いいピッチャーだったよぉ。ボールが速くて」。たいしたコメントじゃなかったけど、リアルタイムで見ている人の言葉はやっぱり響く。印象的だったのは、選手の話をするときに、ピッチャーならボールを投げるときの仕草、バッターなら打つときの仕草をしながら話してくれたこと。以前、「スポーツマスコミの究極は、読者が体を動かしたいなと思う、もしくは思わず動かしてしまうこと」と聞いた。ふとそのことを思い出した。私はそんなおじさんの話に、本で得た知識で何とかついていった。おじさんは、「よく知ってるね」ってほめてくれたけど、知識は所詮知識でしかないなと思った。

 新幹線は、そんな私たちを運んで「まもなく、京都、京都です」。時間はあっという間にすぎた。おじさんは、「あっちに取引先の人がいるから、早めに行くわ。今日はありがとね。楽しかった」そう言って、指定席のある隣車両に消えた。おじさんは現実に戻った。私は、あと少しここにいて、現実に戻るのは明日にしよう。