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あるこのつれづれ野球日記
あるこ
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2002年04月07日(日)
1日岐阜中京高校野球部ファン体験記


おはようございます。あるこです。ただいま、大垣を出発する電車に揺られています。

 練習試合のため、相手校のグランドにむかっていたわけですが、さきほど留守電に「中止です」とのメッセージが入っていました。多少は予想していましたが、「あちゃー、やられたぁ」って感じです。

 ま、昨日の一件で高校野球に凹んでる私にとっては、いい休養となるでしょう。ここで引き返すのは癪なので、とりあえず現地まで行ってしまいます。雨のグランドも悪くないでしょう。


 ↑というわけで、グランドまで行ったのですが、えらい展開になりまして、とても有意義な一日が過ごせました。

 今日訪れた中京高校は、のっけから好印象だった。多くの有名校と同様、ここも学校とグランドの場所が別だったので、勇気を振り絞って、職員の人にグランドの場所を聞くと、地図を書いてくださる等非常に丁寧な対応をしてくださいました。

 グランドは小高い山の上にあり、ホーホケキョ♪と鶯の鳴くのどかな場所だった。当日は小雨のため、グランドコンディションが良くなく、バケツとぞうきんを持った部員がいたるところで、グランド整備にあたっていた。

 同校野球部は、「社会に通じる挨拶」を念頭に置いているためか、部員の挨拶もしっかり聞き取れるものだった。その場で、動きをしっかり止めて、きちっと頭を下げて、「こんっちわ」。動作の一つとして流さないその態度が良かった。こっちも、思わず、「あ、どうもお邪魔してます」。好印象を持った。日常生活からかけ離れた挨拶をする野球部って、案外少なくないのだ。

 何気なく並べてある野球帽や桜の木の下にあった甲子園出場記念の石碑等、目に付いたものをデジカメに収めると、いよいよすることがなくなった。

 ぼちぼち帰ろうか。しかし、一つに気になることがあった。試合は中止のはずなのに、何故か別の学校の父兄さんがお見えになっているのだ。

 「なんでもいいから他校の父兄さんに話をしてみる」。以前ここで紹介させてもらった練習試合観戦術に乗っ取って、そこの父兄さんに、練習試合の有無を聞いてみることにした。別にそれを聞いたからどうってことないし、ましてや試合があったとしても、観戦することは頭になかった。

 小柄で話かけやすような男性の方を選んで、声を掛けた。
「あの〜、すみません。今日、試合、あるんですか?」

 これがすべての始まりだった。
 
 その方は快く私の質問に答えてくださった。私がどういういきさつでここにいるのかを話すのはちょっと億劫だったけど、「ほぉ、すごいな。ここまで見に来るなんて。野球、好きなの?」と聞かれたので、悪い気はしなかった。

 この学校は、東京の高校で、80年代には全国制覇を果たしている強豪校だ。東京の高校野球のこと、そのチームのことを色々聞いているうちに、話はちょっとした野球談義に発展した。

 「男の子だったら、野球、してみたかったでしょう?」
 そう聞かれたとき、返事をちょっと躊躇してしまった。私には無理だな。

 ちなみに、このちょっと前に、ここの部員に「すみません、今、何時ですか?」と訊かれた。そのはっきりとした口調に、感心した。

 高校生時分って、案外目上の人に対してきちんとした言葉で話せないものだ。実際、私もそうだったし、高校野球の現場でもそういう選手を少なからず見てきた。だから、すごく感心してしまった。日本の高校野球の未来は、明るいぞ!!
(おいおい、昨日はあれだけ凹んでたのに…)

 そんなこんなしているうちに、「この後、中京高校さんが取ってくださっている球場(実際は総合グランドでした)に移動して、試合をすることになっているんですよ。よかったら、見て行きませんか?」ということになった。

 た、大変な展開だ。

 「ちょっと待ってて、場所を訊いてきるから」。その方は、小走りでどこかに行ってしまった。

 その方が戻って来られたとき、別の男性に「こんにちわ」と声を掛けられた。私はあっけに取られながらも挨拶を返した。

 実はこの方、中京高校の父兄さん。試合のある球場まで、車に乗せて連れて行ってくださるというのだ。こんな機会は、めったとない!私は遠慮せずに、お言葉に甘えることにした。

 車は、前述の父兄さんと別の選手の父兄さん、そして、その選手の弟らしき子供、そして私という異様な取り合わせを載せて、一時間ほど走った。

 同校の父兄さんにとって、私の存在は珍しかったらしく、色々質問をされた。「いつから応援しているの?」「誰か弟さんとかいるの?」「今日は、どうやってきたの?」。

 そして、同校に京都から来ている選手がいるという話になって、県内の高校野球の話へと発展した。いろんな話が新鮮だった。(後になって、雑誌等で同校の話題や注目選手を知った。こうなると分かっていれば、もっと調べておくべきだったなあ)

 道中、道路標識に「長野県」とあった。えっ、私、これからどこに連れていかれるの?!と一瞬焦ったけど。

 そんなこんなで到着したのは、山間部の村にある小さなグランド。山の上から雲が立ち上っていることから、かなりの高地だと感じた。天上で野球をしているような、幻想的なソワソワした気分になった。もし、私がピッチャーなら、落ち着いて放れない。しかし、あくまで一観客なので、眺め抜群の光景に思わずカメラをパチリ。

 実は、このグランド、地元の少年野球チームが使う予定にしていたのを、急遽揺すり受けたものらしい。そのため、すでに少年野球の子供たちがスタンドにいた、グランド整備や準備・後かたづけを手伝っていた。

 試合中は、体育座りをして、じっと高校生のお兄さんたちのプレーを見つめていた。なんだかすがすがしい気分になった。選手には、お礼代わりにいいプレーを見せてあげて欲しいなあと思った。みんな、素敵な野球選手になってね。

 試合は、ホームチーム・中京高校の大勝となった。両方の父兄さんにお世話になった身をしては何とも複雑な気分だったけど。

 中京高校では、先発した小柄なピッチャーと、ショートの選手(どうやら京都出身のようだ)、そして、3番を打っていた選手(のちに某野球雑誌に未来のドラフト候補として名前が掲載されていました)、そして、この日対外試合初のホームランを打ったキャッチャーが印象的だった。

 ピッチャーの子は、あどけない顔をしていて、活躍したら人気が出るだろうなあと漠然と思った。また、球のそこそこ早く、丁寧にコーナーをつけるタイプと見た。

 ショートの子は、とにかく「上手い」!
 今日は、再三難しい打球が襲ったけど、エラーなし。安心してみてられた。

 3番の子は、センスを感じた。まだ2年生とは驚いた。ボールをしっかりミート出来ていた。

 ホームランを打ったキャッチャーは、叱られているときも不平な顔をせず、しっかり話を聞いていた。また、試合後、駐車場で本人を間近で見たのだが、照れ笑いのかわいい子だった。(実は、彼のおかあさんにもお世話になっていたので、そういう意味でもHRはうれしかったです)

 相手校で印象に残ったのは、ピッチャー。
 かなりの失点をくらったのですが、ずっと投げていた。ときおり威力のあるボールが来ていただけに、不用意にも見えた四死球がもったいなくてならない。また、この選手、打撃もよかった。

 同校の父兄さんには本当によくしていただいた。また、気軽に話かけてくださったり、どなたからどう伝わったのか分からないが、私のことをきちんと名前で呼んでくださった。

 帰りは、別の父兄さんに駅まで送っていただいた。とても陽気なおかあさん方で、車内では終止笑いが絶えなかった。

 同校のファンならいさ知らず、他校ファンの私をきちんと受け入れてくださったのは本当にうれしかった。私の応援している学校にしろ、同校にしろ、同じ高校野球というカテゴリーの中にある。寛大なお気持ちでそこをくみ取ってくださったのかもしれない。今日1日、貴重な経験と新たな感動がまた私の心のポケットに収まった。

 また、相手校の父兄さんも「よかったら一緒に見ませんか?」などと話しかけてくださったりした。今回は、中京高校のことを中心に書いたが、感謝の気持ちは同校に勝るとも劣らないくらい持っている。

 今日の素敵な一日と、貴重な経験と、出会った多くの方々に、感謝の気持ちを込めて、この日記を捧げます。

「また、どこかで会えたらいいね」
「そうですね。できれば、兵庫県のあの球場で」