ぶつぶつ日記
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香水なんて・・・と長いこと思っていたのだが、 今では、香水を付け忘れたことに気がつくと、 なんだか下着をひとつ、身に付け忘れたような 所在無さげな気分になる。 職場の人が、私のつけている香りがいいから、 名前を教えて、と聞かれた時も、 恋人を横取りされたような感じで、 あまり教えたくなかった。 ものすごく香りにこだわっているわけではないのだけれど、 ないとなんだか寂しい。
香水(というかオードトワレだが)をつけ始めたのは、 多分25歳くらいにことだ。 最初は柑橘系のフレッシュな香りのものをつけていた。 何年もそればかりつけていたけれど、 ヨルダンの空港で出会ったフランス製の香水の どことなくイスラムを思わせるような青いボトルに惹かれて、 それを買った時から今まで、 浮気をしないでその香りを身にまとっている。
私の勝手なイメージだが、 香水は自分自身とは反対の性質のものを選ぶといいような気がする。 「可愛らしい」女性だったら、柑橘系のちょっとボーイッシュな爽やかな香り。 派手さはないけれど、どことなく甘い女っぽさを感じさせる人だったら、 スパイシーな甘くない香り。 クールなスーツには絶対に濃厚なミルとか、ゴージャスな香りが似合うと思う。 私のように、どちらかというと「女性らしさ」とか「色っぽさ」に 縁のないような人間には、古典的なフローラルな香りがいいように思う。
ある時友人が、職場で下を向いて仕事をしていた時、 ふっと私が使っている香水と同じ匂いをかいだ。 その時その人は「あ、カイロの香りがする。」と思ったそうだ。 それはたまたま職場に来た人が私と同じ香水を使っていただけだったのだが、 一瞬、その人はカイロの記憶=私、を思い出した、と言う。
フランスの鼻(ネ)という香りのスペシャリストの称号を持つ人たちの トレーニング風景を見たことがあるが、 彼らは何百もある香りを覚えるために、 一つ一つ、その香りと自分の記憶を結び付けていく。 「この香りは、あの夏の日の午後、〜していた時にかいだ香りに似ている。」 闇雲に香りを記憶しようとしても、人はその香りを記憶できない。 でも、思い出が結びついた時、 一瞬の香りが記憶のふたを大きく開け放つ。
私の香水の香りをかいで、 カイロの記憶=私、を思い出す人がいる限り、 私は自分の香水をかえることはないだろう。 同じ香りが、私にはその人の記憶につながるのだから。
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