サッカー観戦日記

2018年02月25日(日) 雑文:京都開幕戦の戦術・起用法批判

J2開幕戦町田戦の京都について。布部監督不支持は昨年から一貫して唱えてきたことではあるが、改めて。


京都
−−−岩崎−−大野−−− −−−−−−−−−−−−
湯澤−−−−−−−小屋松 −−−−−−−−−−−−
−−−望月−−仙頭−−− −−−−−−−−−−−−
本多−闘莉王−染谷−石櫃 −−−−−−−−−−−−
−−−−−清水−−−−− −−−−−−−−−−−−

サッカーで最もシンプルな得点法は距離のある後方からロングボールを入れてゴール前でヘッドで勝って直接、あるいは落としたボールを決めることだ。しかしシンプルゆえに対処法も確立されており、極端な話、100年前の戦術である。
昨年京都は闘莉王をデカいという理由でFW起用し、ロングボール作戦を行った。無論ユース年代をメインに観ている私は闘莉王が渋谷幕張高校時代、トゥーリオ・タナカとしてアタッカーだったことは知っている。しかしプロレベルでアタッカーとしてやっていく適性や技術はなかった。
昨年仙頭をボランチ起用したのも謎だった。仙頭は京都橘高校時代にFWで高校選手権準優勝(PK負け)に大きく貢献し、小屋松とともにダブル得点王に輝いた。スピード・技術・得点感覚・突破力に優れ、2トップを組んだ小屋松とともに下がって受けてパスを出すこともできる選手だった。東洋大に進みサイドハーフとしての適性も伸ばした。一方で身体がなく(171cm64kg)守備面でガツガツ潰すパワーも守備センスもなく、中盤の底で捌くことはできても、あくまで強靭な守備職人タイプのボランチと組んで初めて活躍できるかどうか?といったところだろう。

さて、今期開幕戦を観た限り、布部監督は戦術上のセオリーをことごとく破っており、このような行為に出る監督はよほどの天才戦術家か、あるいはよほどの(以下略)であろう。「先覚者はつねに理解されぬもの。もはや一時の不和、非協力は論ずるにたらず。永遠なる価値を求めて小官は前進し、未来に知己をもとめん」とでも思っているのであろうか……?

では開幕戦の配置について。深いバックラインを特徴とする京都においてセンターバック陣の高さは不可欠だ。なぜならば先に述べたサッカーにおけるもっとも簡単なゴール、ロングボールを放り込んでゴール前で高さで負けては簡単にゴールを割られるからだ。ここには染谷(184cm78kg)と闘莉王(185cm85kg)を配置した。さらには牟田(187cm83kg)と増川(191cm93kg)をバックアップに揃えたのは布部戦術的には合理的だ。バックラインを押し上げず前線と間延びした状況でのサッカーにはこれしかない。

一方でボランチは阪南大からユニバー代表キャプテンとしてユニバーシアード優勝に大きく貢献した重廣(179cm66kg)、体格データ以上にパワーがある、を加入させ、待望のガツガツ潰せるボランチを手に入れたかと思ったらベンチに座っておる。また期待のウルグアイ人カセラス(168cm63kg)は身体の無さから言ってガツガツ潰せる守備力はあるまい。開幕スタメンは守備に難がある仙頭と望月(167cm61kg)だ。確かに望月は中学時代のセゾン、高校時代の野洲高校から一貫してボランチの選手だ。しかし常に松田惠夢という守備のしっかりしたボランチとコンビを組んでいた。つまりけっして単独で潰せるタイプではなくそういうタイプと組んで中盤の底から組み立てるタイプだ。G大阪の遠藤あたりにタイプとしては似ている。中盤のデュエルでは仙頭共々負けてしまう。こういうタイプにボランチを組ませるのは戦術上のセオリーに反する。更に町田が京都のボランチへのパスコースを意識して寸断。受け方にチームとしての約束事がないために、望月がバックラインまで下がって受けて長いボールを蹴るシーンが目立った。つまり望月の攻撃面での個性も活かせなかったのだ。仙頭も飛び出せないから攻撃面での持ち味を出しようがなかった。

FWに大野(184cm80kg)を置くのも布部監督の戦術においてはマストだが、後方からのロングボールに勝つのは滅多にできることではない。

右サイドバック石櫃はタフにアップダウンできる典型的な「走るサイドバック」だ。運動量で相手を根負けさせ、仕事の質ではなく量で貢献するタイプ。クロスの精度は決して高くない。同サイドの小屋松はパスを出せるタイプなので中に絞って石櫃が上がるスペースを作ってパスを出せれば良かったのだが、前線と後方の間が開く布部戦術においてはボールを受けるためにサイドに開かざるを得ない。そのため石櫃も活かせない。

左サイドバック本多(173cm67kg)も阪南大では身体能力を活かしてセンターバック兼用だったが、基本的に守備的な選手で攻撃面はフォローはできても追い越して大きな仕事はできないタイプだ。そこで右からサイドチェンジを見せ湯澤が仕掛けていたが、すぐに対応されてしまった。このゲームでの策はこれだけだったのか?

そして岩崎は力強くスピードにあふれた突破があるのだが、そもそもボールが来ない。ベンチのFWロペス(191cm83kg)は布部戦術にあった長身FWでウルグアイ時代の前所属で13試合8ゴールという見事な成績を挙げており、ほかのクラブなら「見事な補強だ!」と思っただろうが、長年不明をさらしている京都の強化部だけに「訳アリ物件」をつかんでしまったのか、と思わせる。

そしてコーナーやセットプレー。キック精度に難がある石櫃が担当して守備に難がある望月がカウンターに備えて後方に残る形だが、普通逆だろう。あるいはキッカーが仙頭でもいい。とにかくキッカーは石櫃であるべきではないし、石櫃こそカウンターに備えるにふさわしい人材だ。

そして後半ロペスを投入し、さらに闘莉王をFWに上げた布部戦術特有の布陣交代をおこなったとき、センターバックに入ったのは下畠(178cm73kg)だ。本職はサイドバックであり、高さ・パワー的にギリギリこのポジションが出来る気もするが、おそらくこの体格データは過大だ。そんな高さはない。何より相手のFWがロペスとして下畠で高さで抵抗できるだろうか?ロングボール一発でゴールを狙う布部戦術が逆にロングボール一発で失点しやすい形であることを理解しているのだろうか?

さらに望月に代えて重廣を入れたが、ボランチは重廣が前で仙頭が後ろなのだ。ガツガツ潰せて捌けるが決定的な仕事はできない重廣が前で、決定的な仕事はできるがガツガツ潰せない仙頭が後ろ。こんな布陣があるだろうか?普通逆ではないのか?サイドハーフになった岩崎と小屋松は苦しい体勢から単独突破が光る。しかし単発に過ぎない。

結局、ほぼ全面的に現代サッカーの戦術上のセオリーに反し、しかも全く斬新な戦術を提示できなかった。私は昨年から布部監督を可及的速やかに解任すべし、という立場だが、強化部は何らかの成果が出るまで解任すれば、自らの責任問題になりかねない、と思っているのだろうか?私としては開幕5連敗でも喫したらさすがに決断すると思うが、それでも解任しないかもしれない。なるべく最小のダメージで後任監督に引き継ぎ、来季のJ1昇格はもはや手遅れでも来シーズンに向けたチーム作りをスタートしてほしいのだが……。下手に勝ち点を取り、布部監督の采配が続くとJ3降格が現実的になっている。J1でも資金力のあるクラブが実力が極端に不足している監督を起用して、小倉監督が名古屋を、セホーン監督がG大阪をJ2降格させたように、J2で資金力のある京都もJ3降格はないだろう、なんて油断できる甘いリーグではない。

しかし試合後京都サポーターは選手たちに温かい声援を送った。そういう信念なのだろうが、チーム状況を理解しているのだろうか?私より見ているのだから無論理解しているはずだが。

+++++++++++++++++++++++++++++++

あまり面白みのない対案を出しておく。バックラインにスピードがないので押し上げられないが、それでも押上げを意識するのは絶対だ。左の本多は仙頭のフォロー、石櫃はどんどん追い越す。スペインリーグで富豪のオーナーがライセンスを持った監督と契約して、実際にはオーナーがベンチで采配し、戦術を決め、それに沿って監督は練習メニューを決めていたことがあったが、よく言われる批判として素人でもいくらでも戦術は語れる。実行するのが難しいというものがある。確かにそうだ。しかしそのことを考慮しても私には布部監督の戦術はあまりにひどいと思える。

−−−−−大野−−−−− −−−−−−−−−−−−
−仙頭−−岩崎−−小屋松 −−−−−−−−−−−−
−−−望月−−重廣−−− −−−−−−−−−−−−
本多−闘莉王−染谷−石櫃 −−−−−−−−−−−−
−−−−−清水−−−−− −−−−−−−−−−−−


+++++++++++++++++++++++++++++++++

P.S.スタジアムグルメは今年は充実していました。昨年あたりから少しマシになったのかな?スタジアムに来る人は応援するチームの勝ちを観に来た人3割、ゲームそのものを観に来た人3割、その他を観に来た人4割だそうなので、ぬるいファンを取り込む努力は始めたのだろう。この日の入場者数約6200人。J2では愛媛・讃岐の四国2クラブに次いでワースト3であった。


 < 過去  INDEX  未来 >


T.K. [MAIL]