サッカー観戦日記

2016年05月23日(月) 高校総体奈良大会準々決勝 奈良育英−一条 奈良学園−五條(5月21日)

奈良2強と言えば奈良育英と一条である。近年第2集団も力をつけ、今では必ずしも2強とは言えなくなってきたが、それでも最も注目を集めるカードなのは間違いない。そしてこの両校はかなり似たタイプのサッカーをする。試合運びも上手い。勝つサッカーをよくわかっている。一条はここ数年3トップを採用し攻撃的になってきたが、基本両者4−4−2でよく走り、バックラインを高めにサイドバックは守備的で、コンパクトに保ちサイド攻撃をサイドハーフが担う。ミラーゲームになるので、個々の踏ん張り、執念がカギになる。

高校総体奈良大会準々決勝
奈良育英−一条
5月21日 13時 五條市上野公園 人工芝 晴 

奈良育英         一条      
−−−十六−−十番−−− −−−−−十一−−−−−
−−−−−八番−−−−− 十八−−−十番−−−八番
十一−−−三番−−−九番 −−−六番−−七番−−−
六番−二番−−四番−五番 四番−二番−−五番−三番
−−−−−一番−−−−− −−−−−一番−−−−−

基本両者今年も4−4−2だと思うが、奈良育英は3番がフォアリベロとしてさがってきて、バックラインの援軍になり、8番もトップ下というわけではなく、バックラインに入らないボランチ。一条はドイスボランチがフリーになれるので両サイドが上がっているだけで、本来4−4−2だと思う。10番はFWの位置から下がってくる。

開始早々奈良育英8番の右CKを右足で入れファーでヘッド、キャッチ。立ち上がりから両者猛烈な運動量。70分ゲームとは言え、真夏日の中オーバーペースにも見える。自分のペースに持ち込もうとする綱引きであるが、どちらも緩めない。奈良育英は10番が屈強で身体能力が高い。一条はCBの5番とレフティー2番がキックが正確でロングフィードがあるが、奈良育英2トップが懸命にプレスを掛け続けるのでロングフィードをなかなか繰り出せない。ただし奈良育英2トップの負担は相当なものだろう。Jリーグでも可変システムの広島や浦和は攻撃時に2CBになるが、相手はプレスを掛け続けることは不可能だ。70分ゲームとは言えどれだけ鍛えられているのかという凄みを感じる。13分、奈良育英10番、左70度30mミドルを叩き込む。スーパーゴール。一条は引いた10番を誰が捕まえるか明確でなかったとはいえ、想定外のシュートだった。奈良育英はCBの組み立てはイマイチだが、GKのキックがよく、一条のフォアチェックに対し、GKに戻してサイドに起点を作ろうとする。激しいプレス合戦が続く中、22分、奈良育英9番がゴール前に現れスルーパスを受けるがオフサイド。統率では奈良県随一の一条ならではのバックラインのコントロールだった。26分、奈良育英8番のスルーパス、16番右クロスはラインを割りゴールキック。27分、奈良育英10番ポストプレーからターンシュートはバー。28分、奈良育英4番→17番。ケガでは無い。6番がCBに回り17番は左サイドバックに。奈良育英は猛烈な運動量を維持するために負担をチーム全体で分散させる意図だと思われる。2トップが一条CB陣にプレスを掛け続ける分、バックラインも猛烈な押上げを要求され、負担が激しかった。30分、一条、右CKをヘッドは上に外れる。34分、一条、裏を取った10番シュートは上に外れる。37分、一条11番左クロス、7番潰れて9番詰めるが届かず。決定機。前半は1−0で終了。

前半シュート数3(2)対2(0)、CK数1対2、GK数2対4、オフサイド数2対0、クロス数5対4、ファウル数6対1、FKなし。互角で、しかもスタミナ問題から後半どうなるか全く読めない。両者一向にテンポを緩めず、お互いにこの相手には一瞬の隙も見せられない、という気迫を感じる。テンポを落とす選手もいないし、ハイペースで行けるところまで行って先に力尽きた方が負けるパターンだ。

後半開始。ハーフタイムでペースを一旦落とすチームも多い中、両者は入りが抜群の良く、やはりハイペースで飛ばす。40分、奈良育英9番→13番。そのまま右ハーフ。奈良育英左クロスに8番詰めるが一条クリア。激しい潰し合いが続き、両者形が作れない、47分、奈良育英11番、左クロスも一条、中でカット。一条も速攻から11番、左クロス、カット。48分、奈良育英、左CK、ゴールライン割る。50分、一条2番の左足ロングフィード、18番左を抜けてシュート、外れる。決定機。ワンタッチあり、右CK、7番右足のこぼれを6番ミドル、外れる。決定機。給水タイムを挟み、相変わらず両者プレスを掛け続けるが、精度が落ちてきた。具体的には奈良育英の2トップが落ちていないが、中盤が徐々に一条に押され始める。53分、奈良育英11番→7番。そのまま左ハーフ。奈良育英は3番が戦術上のカギだし、8番はカウンターに不可欠なので、変えるとしたら両サイドしかないだろう。11番は脅威のアップダウンだった。2トップは一条の2CBをチェックしなければならないので、サイドハーフは一条サイドバックにプレスを掛けつつ、プレスをかいくぐられれば、引かなければならないので特に負担が大きいのだ。サイド攻撃の主役でもあるし、奈良育英はあえて運動量を均等に分担させず、サイドを代えるチーム作りに見える。56分、一条、タテに入れて11番好トラップから10番へ、シュートは上に外れる。決定機。57分、一条8番→24番。右サイドバックに入り、3番が右ハーフに。58分、一条4番→14番。奈良育英は全くシュートに行けない。そして60分、一条、中盤で仕掛けて倒され、左70度35mFK、距離があるが5番のFKが右隅に突き刺さる。プレスで5番のロングフィードは消せてもFKばかりは防げなかった。奈良育英の先制点も滅多に決まらないスーパーゴールなのでお互いさまというか。63分、一条攻め込むがオフェンスファウル。奈良育英10番に警告。ラフ。69分、奈良育英13番→25番。交代選手の交代。一条、18番→9番。70分、一条、右CK、7番の右足はファーで合わず。結局後半は1−1で終了。」延長へ。いくら何でも限界に近いと思うが、PK戦は残酷なので、私は延長のほうがいいと思う。

後半シュート数0対4(3)、CK数1対1、GK数6対2、オフサイド数0対1、クロス数5対4、ファウル数7対5、FK数0対1。後半は一条の中盤が生きだした。

10分ハーフの延長。両者めっきり運動量が落ちる。こうなると一条のビルドアップが生き始める。特に2番の正確な左足ロングフィードが脅威になる。4分、カウンター一条14番から9番左クロス、カットで左CKに。逸機。終了間際24番の右クロスを奈良育英左CKに逃げる、しかし7番のキックに2番落とし誰か?ボレーが突き刺さり、1−2。

延長後半、一条カウンター、10番シュートは正面。CKへ。5分、一条7番が上がり切り返し左足シュートは上に外れる。10分、一条、タテパスに11番1対1を流し込み1−3。結局一条が勝ちベスト4に進んだ。70分間では互角だったが、延長では一条により力が残っていた。奈良育英は気合のあまり飛ばし過ぎた印象があった。とは言え、まさに限界での死闘だった。



第4試合は奈良学園がリーグ戦不参加ながらコンスタントの県内のトーナメント上位に勝ち上がる強豪校である。対する五條は奈良県1部リーグ4位につける強豪で、コンスタントに全国を狙える強豪校である。


高校総体奈良大会準々決勝
奈良学園−五條
5月21日 15時 五條市上野公園多目的グラウンド 晴 人工芝

奈良学園         五條
−−−七番−−九番−−− −−−九九−−五八−−−
−−−−−−−−−−−− −−−−−−−−−−−−
十三−八番−−五番−二番 五三−五四−−五五−七五
十二−十番−−三番−十一 十七−五七−−三九−四六
−−−−−三一−−−−− −−−−−七一−−−−−

立ち上がり、五條が激しい当たりで奈良学園を圧倒する。奈良学園は当たりに弱く、局面で踏ん張れない。1対1で抵抗できないチームが勝つのはなかなか至難の業である。しかし序盤で奈良学園は五條の選手を怪物だらけ、として謙虚に引いて守り、逆に五條は激しく身体を張って肉弾戦を挑み奈良学園を削るまでもないと思ったのか、徐々に相手のいないところ、いないところにパスを繋ぐサッカーに変化していく。五條の長所と奈良学園の短所がマッチングしているのにもったいないというか、相手の嫌がるサッカーを避け、自分たちのサッカーで真っ向から勝とうとしているというか。しかも奈良学園7番が捉えどころのないポジショニングでフリーになりがちで、引いたり裏を取ったりと自由なポジショニングを見せる。11分、奈良学園、左クロスを7番合わせるがGKキャッチ。11分奈良学園、7番ミドルは左に外れる。直後にも裏を取った7番だがコースを消された。この展開でも五條は相手を甘く見ている。18分、五條、左CKに53番の左足合わず。23分、五條DF57番ミス、奈良学園9番に奪われループは上に外れる。ワンタッチあり右CKへ。決定機。27分、五條、右CK、53番の左足はGKキャッチ。30分、奈良学園、7番抜け出してパスを9番流し込む。1−0。直後にも奈良学園、放り込みを9番落とし飛び出した8番流し込むがオフサイド。32分、奈良学園7番裏を取り、9番入れるがカット。五條もスルーパス53番が左を抜け出しシュートは右を襲うがキャッチ。決定機。前半1−0で終了。

前半シュート数4(2)対2(1)、CK数1対3、GK数5対4、オフサイド1対1、クロス数3対0、ファウル数6対2。FKなし。正直力量では五條が上回っている。しかし奈良育英や一条と比べると試合運びに甘さが見られ、ずっとペースを握るまで押し続ける気迫も、スローテンポでペースを握る姿勢も見られず、非常に拙いゲーム運びである。

後半開始、ハーフタイムで喝を入れられたか、五條の動きがいい。53番の左CK、54番落とし99番ボレーもブロック。やはり競り合いでは五條に圧倒的に分がある。42分(後半7分)、奈良学園、右FK、13番逸らし左サイドネットに突き刺さる。2−0。43分、奈良学園8番?から裏を取った9番へ、五條DF慌てて飛び込むが切り返し叩き込み3−0。何というか、高校生は難しいという試合展開。前半はともかく後半の入りは五條全く問題なかった。45分、五條、裏に出し99番力強く身体を入れてGKを外して流し込む。3−1。48分、五條、裏狙い、58番の前でGK出て取る。51分、五條75番→56番。51分、奈良学園9番に警告。負傷でピッチを出たのに不許可入場。56分、奈良学園、7番飛び出し、左の13番へ、左シュートはブロック。56分、奈良学園左FK、上に外れる。角度もなかった。57分、奈良学園5番→17番。8番が右ハーフ、2番がボランチへ。2番のほうが守備力は高そうではある。8番は7番とポジションチェンジして五條を混乱させていたが、きっちり守りきろうという策か?17番も守備力高そう。61分、五條、58番→50番。62分、奈良学園8番→14番。64分、奈良学園10番に警告。故意。五條正面18mFKの絶好機。99番(右足)と53番(左足)が構え、53番シュートは壁。決定機。その右CK、53番の左足に39番ヘッド、決まって3−2。68分、五條右FK、53番、左足、右に外れる。70分、五條左CK、53番左足、右に流れる。71分、奈良学園2番→19番。73分、奈良学園3番→15番。けっきょく3−2でタイムアップ。

後半シュート数5(3)対5(3)、CK数1対3、GK数2対1、オフサイド数2対0、クロス数3対3、ファウル数2対2.FK数1対2。

マン・オブ・ザ・マッチは奈良学園7番でしょう。最後までとらえどころがなく。振りイーになることが多かった。9番もきっちり決定機を決めた。力量に優る五條としては3失点後のサッカーを最初から出来ていれば……。インテンシティという最大の強みを生かしきれず、自分たちのサッカーで勝つ、自分たちも疲れるが、相手に消耗させて勝ち切るという意欲に欠けた。多分前半からガツガツ削るサッカーができていれば、案外点差をつけて勝てたかもしれないのに。この試合運びの拙さが奈良育英や一条との差だ。力だけなら十分なのに、イマイチブレイクしないのが伝統の差としか。


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