| 2016年02月11日(木) |
奈良県一部リーグ第1節 奈良育英ー橿原 一条−奈良北 香芝−奈良 五條−生駒 |
奈良はここ10年以上奈良育英と一条の2強体制が続いていた。共に組織だった前からのプレスからの速い攻めの持ち味があり、比較的似たタイプの為に奈良で育つ様々なタイプの中学生の受け皿としては多様性に欠けるのが奈良の高校サッカーの現実だった。しかし近年は第2集団が2強をしばしば食うようになって、奈良にも多様性が生まれた。全国出場が目的なら2強に入れば可能性が高かったにも関わらず、奈良は中学生の輸出大国だった。しかし今後は自分の好みに合ったチームを選べる環境が整い、いい選手が奈良に残り、急速にレベルアップするのでは?と言う期待感がある。ここ10年全国での地位を確立した滋賀や京都ほど「実は強いけど評価されていないだけ」という段階には達してない。しかし冬の高校選手権では香芝があの藤枝東と引き分け(PK勝ち)、2回戦でも各務原に0−1といい勝負を見せるなど、確実にレベルアップしている。第2集団も「全国的に標準レベル」という段階には達している。あとは県リーグで切磋琢磨して、プリンスリーグにチームを送り、全国上位に特に運に恵まれなくても送り込める体制を作ることだ。そうなれば県内は一気に盛り上がる。既に層は厚い。
奈良県リーグ1部 奈良育英高校−橿原高校 奈良県フットボールセンター 9時 人工芝 晴
奈良育英 橿原 −−−十八−−十番−−− −−−十一−−十番−−− −−−−−−−−−−−− −−−−−−−−−−−− 十六−八番−−六番−九番 九番−十八−−四番−七番 十七−二番−−四番−五番 六番−三番−−五番−二番 −−−−−十二−−−−− −−−−−十二−−−−−
立ち上がりから双方攻撃的でいい勝負。奈良育英はGK12番がよく声を出して統率。2番は高さ十分で17番の左足キックもいい。8番は両足を器用に使う。キックも素晴らしい。5番は力強い守備と攻め上がり、バランス感覚がいい。奈良育英では一番いい選手ではなかろうか?9番は快速サイドアタッカー。10番も力強い突破が光る。対する橿原は2トップが強力。10番が足元に収めて捌きパスを出せ、11番がどんどん仕掛ける。奈良育英のCBコンビがやや地上戦が苦手なこともあってタテに速い攻めから2トップのコンビで崩す。4番は正確なトラップでボールが収まり展開力を見せるが、サイドハーフが活かせず、中央は奈良育英8番と橿原4番の勝負となる。しかし奈良育英はサイドが強力なので、若干8番が押し気味。と言うか総合力で奈良育英が一枚上手か?4分、橿原、左CKに7番の右足、ファーで10番折り返し3番ボレーは上に外れる。決定機。6分、奈良育英、右FKをニアでセーブ、右CKへ。逸機。12分、奈良育英16番、左をタテに突破して左クロス、10番合わせる。1−0。13分、奈良育英8番、右CK15分、橿原7番が落とし4番持ち直し、パスを狙うが中で跳ね返す。15分、奈良育英、16番から8番、10番、16番と高速パスワーク、16番が突っ込むが、左CK。奈良でこれほどの高速パスワークがあるのは奈良育英だけだろう。そして速い攻撃は奈良育英の持ち味だ。17分、奈良育英10番が左突破、タメて17番左クロスをシュートもブロック、左CKへ。23分、奈良育英、CB2番がミス、橿原9番裏へ出すが奈良育英4番のカバーが早い。30分、橿原10番が素晴らしいトラップから11番へ、ダイレクトでリターン、10番シュートブロックもこぼれを11番スライディングシュート、右に外れる。決定機。10番と11番は阿吽の呼吸を見せる。32分、奈良育英、9番が右で切り返し左足クロス、10番力強い落とし、流し込めず。決定機。33分、橿原4番がタメて7番シュート、バー。決定機。33分、奈良育英16番の左クロス中でこぼれるがクリア。決定機。39分、奈良育英、GKがミスして橿原11番カット、奈良育英4番好カバーで未然に防ぐ。45分ハーフの前半1−0。
前半シュート数7(3)対5(0)、CK数7対1、GK数5対6、クロス数9対0、ファウル数5対4、FK数1対1。奈良育英はサイドを活かせていて、人材の豊富さを感じさせる。対する橿原は2トップの能力に頼りすぎるきらいがあって、4番を含め、特定の選手に依存する割合が高い。
後半開始。48分、奈良育英9番の右クロス、8番シュートもブロック、右CK。8番のキックを17番ニアでヘッド、決まって2−0。51分、橿原、裏に出して10番抜け出しループ、決まって2−1。52分、橿原、左放り込み、18番ヘッドは右に外れる。決定機。53分、奈良育英9番タテに仕掛けてスピードで振り切り右クロス、10番シュートはブロック、右CKへ。この試合ブロックが多いが、DFが粘り強い対応が出来ていてフリーで撃たせてもらえない。もっとも奈良育英のテンポが速すぎて、オーバーペースのきらいがあるが。54分、橿原、11番が仕掛けて浮き球を9番ボレー、こぼれを11番シュート、2対2。奈良育英、2番→21番。右サイドバックに入り、6番がCB、5番がボランチに変更。2番は高かったが、橿原の地上戦に振り回されていた。6番のほうが地上戦は強い。5番はボールが納まるし、8番の攻撃力を活かす意味でもよさそう。そして橿原のペースがこの時間帯ペースが落ちる。精神的にもムラを感じる。67分、奈良育英裏を取り9番ループ、セーブ。決定機。9番はよく走る。奈良育英は9番はスピードタイプで16番がパワフル系。奈良育英21番が自陣でミス、橿原4番がカットもCBがいい寄せで橿原2トップに入れさせない。70分、奈良育英9番に警告。ラフ。責任感が生んだファウル。71分、奈良育英左CK8番キックにシュート、上に外れる。73分、奈良育英、右CK、8番からふぁーで4番ヘッド、決まって3−2。いつか入るだろうという展開だった。76分、橿原、ペナ左角のFK、10番の右足が奈良育英GKの上を襲い決まる。3−3。橿原7番→14番。83分、奈良育英16番ミドル、セーブ。決定機。84分、奈良育英8番のシュート、セーブを16番押し込む。4−3。ここで橿原がシュンとするのがするのが伝わる。84分、奈良育英右CK、8番のキック、こぼれが浮き18番ヘッドで押し込み5−3。85分、橿原、11番が豪快に突破、マイナスの右クロスを10番ミドルで叩き込み5−4。橿原はGKのキックフォームがややおかしく、足元に入りすぎる位置で蹴るので安定していない、特にパントキックだと加速から止まって蹴っているように見える。奈良育英18番→14番。終了間際、両者CKがあったが生かせず、奈良育英が5−4で逃げ切る。
後半シュート数10(6)対5(4)、CK数5対1、GK数2対9、オフサイド数1対1、クロス数13対4、ファウル数6対1、FK数0対1。 奈良育英が押していたが、精神力の差だ。クロス数はサイドの差だが、奈良育英はばてながらも頑張って走り、声を掛け合い、集中を切らせなかったのに、橿原はいい時間帯と悪い時間帯を自ら作ってしまっていた。終始ハイペース・ハイテンションの奈良育英に比べてシュンとする時間帯が長かった。奈良育英相手に健闘したと思っているかもしれないが、橿原には奈良育英を破って全国を狙う力のある強豪だという自覚を持とう。そうすれば、落ち込んでいる時間帯がもったいないと考えるはずだ。
奈良県リーグ1部 一条高校−奈良北高校 奈良県フットボールセンター 11時 人工芝 晴
一条 奈良北 八番−−−十番−−−九番 −−−−−二六−−−−− −−−十一−−七番−−− −−−−−三八−−−−− −−−−−十四−−−−− 三三−四十−−二五−五二 四番−二番−−六番−三番 四二−四三−−六十−三一 −−−−−一番−−−−− −−−−−二一−−−−−
一条はすぐに主力が分かった。左利きで長身でロングフィードが武器のCB2番、ボランチで技術が高くシンプルに捌けてキープも出来、決定的パスも出せる14番、そして流れる動きが秀逸でサイドでは突破できる10番である。一方奈良北は自陣から繋ぐチームだが、ミスが多い。ミスを連発して一条が猛攻を仕掛ける。1分、左クロスを10番決めて1−0。5分、8番の左シュートで2−0。15分、14番のスルーパスに左に流れた10番を奈良北が捕まえ切れず、決めて3−0。17分、ペナ内で10番キープから7番が左上に叩き込む。4−0。28分奈良北31番→23番。奈良北の4−4−1−1は一条のCBを捕まえ切れないので2番に自由なフィードを許し、自在に組み立てられるので厳しいと思った。2トップにして2番にプレッシャーを掛けつつ、14番へのパスコースを限定すれば、ここまでやられることはなかったのでは?と。選手交代で落ち着いたが、一条ペースは変わらない。43分、一条、2番から14番、7番、11番、10番とつなぎ、5−0。ここまできれいに繋がれてはどうにもならない。前半5−0。
スタッツは省略。奈良北のシュート数は1本でした。
後半も一条の猛攻。54分、シュートブロックのこぼれを6番ミドル、タイミングを外し左隅へ6−0。58分、11番のスルーパスに7番左隅をミドルで叩き込む。7−0。以降両者大量の選手交代によりテストマッチモードに。一条は14番が右サイドバックで6番がボランチの布陣がちょっと注目か?75分、一条18番が抜け出しループ、決まって8−0。結局8−0で一条が圧勝した。
最近左利きの左CBは誰もがロングフィードが武器な気がするが、2番もそう。上背もあって楽しみだが、肝心の守備力は判らず。力の差がありすぎた。そして奈良北は入り方が悪すぎて力を図れず。ただ個人能力で劣り、戦術的意図も外されたのは確かだ。一条は今年も楽しみ。
第3試合は今冬の高校選手権奈良代表であり、2強を追う第2集団筆頭になった感がある香芝とコンスタントに結果を残している奈良の好カードだ。香芝はガチガチに守る超守備的サッカーで結果を追求し全国切符を手にして以来、急速にパスを繋ぐ理想を求める一方で現実的な感覚とのバランスも良く、実は奈良県勢で全国では一番期待できるのでは?と思っている。県内で勝つなら2強が若干上だろうが。
奈良県リーグ1部 香芝高校−奈良高校 奈良県フットボールセンター 13時 人工芝 晴
香芝 奈良 −−−九番−−十一−−− −−−十番−−二六−−− −−−−−−−−−−−− −−−−−−−−−−−− 八番−十番−−五番−十八 三九−九番−−二六−二七 四番−七番−−三番−二番 四十−五番−−三六−四四 −−−−−一番−−−−− −−−−−十七−−−−−
香芝の新チームは後方からのビルドアップを意識しているようだ。3番はいいロングフィードがある。7番は典型的なCBタイプ。つまり守備がしっかりしている。そして組み立ても3番任せじゃない。奈良はバランスのとれたプレスでボランチへパスを入れさせない。この日観たチームでは一番クレバーなサッカーをやっていて、こちらも魅力的。立ち上がりは香芝が色々と相手の様子をうかがいながら、隙を探すが、奈良も隙を見せない。香芝9番は長身でパワフルなCFタイプ。11番は再三仕掛ける姿勢を見せ、いい突破力がある。8番も力強い。普通なら9番と8番で2トップを組んで11番がサイドハーフだろうが、ここに戦術的意図があるのか?8番はブロックドリブルもあり。10番は正確なキック有。4番は右利きのサイドバックで必ず切り返して右足で左クロスを上げるが、8番がタメを作れるタイプだけに、タテに走って左足クロスを上げる練習をすれば、香芝のサッカーの幅が広がるし、自らのポジション確保にも役立つと思う。18分、香芝、8番いいキープから5番に落とし10番へ、正確なミドルが左上を襲うがナイスセーブ。決定機。奈良のGKもなかなか。直後には9番のタメから11番仕掛けて左クロス、合わず。4番と7番は右利きだが、両足でフィードも狙う。今は精度が低いけど、こういう意識を持てば伸びるものだ。そして香芝はサイドチェンジを多用。奈良もスライドして対応。4−4のゾーンでスペースを埋めるサッカーだ。30分、香芝、前線でタメを作り10番がグラウンダーミドル、左サイドネットに突き刺さる。1−0。しかし以降も奈良は秩序を保ち、反撃をうかがう。この後香芝のチャンスを作らせず、CBからボランチへのパスコースを遮断し、香芝は後方で回すしかなく、ミスをしないから奈良もショートカウンターには行けないが、膠着させ、奈良の精神力を感じさせた。前半1−0。
ハーフタイムで香芝11番→29番。8番はFWに。29番が左ハーフに。やはり9番、8番はFWタイプか。そして上手くいっていない自覚もあったようだ。そして奈良は積極的にフォアチェックを仕掛けて勝負出るが、香芝は相変わらずバックラインでミスをせず、サイドに寄せられてもサイドチェンジで外す。この圧倒的な後方の安定感が奈良のプレッシングサッカーを上回っている。60分(後半15分)、奈良26番→50番。前線の消耗が激しかった。予定通りの交代か?67分、香芝、9番→14番が右ハーフ、18番がFWに。69分、10番のパスに18番突っかけて倒れるがPKならず。正しい判定。しかし直後にまたも18番仕掛け、右上隅に叩き込む。2−0。それでも奈良は秩序を保つ。ホントに大した精神力だ。しかし77分、香芝、右ショートコーナーで10番から5番へ、右クロスを4番ボレー、決まって3−0。これで奈良のバランスが崩れる。以降は79分、香芝18番のカットインシュートが右隅に決まり4−0。83分、香芝、10番が豪快に中央突破、決まって5−0。89分、香芝ペナ正面ギリギリFK、3番が右隅へ。6−0。90分、香芝、10番がまたも豪快に突破からシュート、決まって7−0。このスコアで終了。
香芝は強かったが、奈良も決して悪くない。ただプレッシングはゾーンに突っ込まれたら潰せるだけの個々の守備力を高めたら、この日のような失点は減らせると思う。大敗はバランスが崩れたからで、そこまで力の差はないし、むしろ普通に全国目指す力はあるが、勝負を分けた先制点・2点目は個人能力で潰すべきシーンだったから。組織力も土台には個人能力があるわけだし、この日に関しては能力の問題というより意識の問題だろうから。香芝は現時点で個人能力は全く問題ない。組織力では奈良育英や一条ほどじゃないと思うけど、あえてその道を選んだのだろうから、香芝は香芝のやり方で力をつけてほしい。
奈良県リーグ1部 五條高校−生駒高校 奈良県フットボールセンター 15時 人工芝 晴
五條 生駒 −−−五八−−七五−−− −−−−−三九−−−−− −−−−−−−−−−−− 十四−八番−−六番−三一 五三−五四−−五五−九九 −−−−−七十−−−−− 十七−七八−−三九−五七 二六−六六−−四八−二七 −−−−−七一−−−−− −−−−−一番−−−−−
直ぐに目についたのは五條のGKの声がよく出ていて、的確かつ鼓舞し続けることだ。しかもどうやら1年生。なかなかのキャプテンシーだ。58番はいいトラップがある。53番はレフティーのサイドアタッカー。カウンターに持ち味があるチーム。対する生駒も守備を主眼に置いた4−1−4−1でしびれを切らした方が負けというサッカーだ。サッカーは自分から仕掛けるサッカーが是で、相手の攻撃に対応してカウンターのサッカーが非みたいな風潮があるが、むろんそんなことはない。もちろん状況によるが0−0の段階で無理に自分から仕掛けることはない。常に相手に合わせるサッカーももちろん有りだ。6分、五條、ペナ左角付近FK,53番の左足が危険なボールになりこぼれるが、生駒GKキャッチ。生駒はフリーになり気味な70番がいいスルーパスを狙っている。48番はいいヘッド。60番は左足フィードあり。39番は長身じゃないが鋭いターンで前を向く。五條39番は高速カバーが冴えフィードもある。58番はいいトラップあり。オカリクと呼ばれている。生駒14番はちょっと一癖あるテクニシャン。五條75番は快速でウイング的。生駒は前半半ばの25分に31番→11番。ケガ。32分、五條75番→10番が右ハーフ、99番がFWに。10番は小技がありタテにも仕掛けられる選手。なぜスタメンじゃなかったか分からなかった。31分、五條、右に展開、10番がタテに突破、右クロスを99番合わせる。1−0。しかし39分、生駒、右CKから中にこぼれ6番シュート、緩くて正面だが五條GK胸に当ててファンブル、39番がハイボレーで1−1に。はっきり言ってGKのミスだが、このGKはがっくりするどころか、相変わらず大きな声を出す。フットボーラー、特にGK向きのメンタリティーの強さだと思った。決して大柄ではないから、大学以上では厳しかろうが、高校レベルなら楽しみな選手だと思った。結局前半は1−1で終了。
後半も両者バランスを見ながら隙を伺うシビアな試合で、これぞ「勝負」という雰囲気が伝わる。47分、五條左CKを53番が左足で入れるがクリア。49分、53番高速突破、左シュートは右に外れる。50分、五條10番、右突破からクロスは53番ヘッド、上に外れる。決定機。51分、五條31番→65番。59分、生駒左70度20mFK8番のキックは壁、14番左クロスに65番スライディングシュート、届かず。五條54番→60番がボランチへ。65分五條、左パスに10番抜け出し左足シュート、決まって2−1。70分五條99番→92番。72分、五條53番、左から高速突破、こぼれを55番蹴り込む。3−1。77分、五條78番→59番。78分、五條53番に一発レッド。ラフだが異議もあったか?以降は生駒が攻めるも攻撃のオプションが少ない。86分には五條は10番→48番をCFに入れ、92番を右ハーフに。91分には92番→50番へ時間稼ぎの交代で逃げ切った。
いい勝負だったが、基本的にリードしたほうが絶対的に有利になるチーム同士なので、流れをつかんだ五條が勝った。生駒は守備は良かったが、相手が退場者を出しても攻め切る攻撃力はなかった。五條はサイドの突破力が活きた。とは言え基本的には両者守備力を一層向上させることと、カウンターの鋭さを磨く方向性で全国を目指せばいいんじゃないでしょうか?
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