| 2005年08月01日(月) |
メモリアルデー。(トトカルチョ編) |
「YA−HA−! 8月1日恒例のサバイバルゲーム始めるぞぉぉぉ!」 「なんの恒例だぁぁあ!」
夏。 間違う事なき夏。 光が当たった場所がチリチリと痛むぐらいに強い日差し。 生温い風。むせ返るような湿度。現実世界ではありえない生態系の木々が鬱蒼と茂る森の中。
8月1日 選ばれし子供達は、この特別な日に当然の如くDWに集まっていた。 今年からイギリスの方に留学していた太一も当然DWで合流し、迷彩柄のタンクトップに鉢巻を占めて、マシンガンのようなものを担いでどこか一本切れたように笑っている。
「誰だよっ!あいつにアイシールド21読ませた奴!」
太一の姿を指差しながら喚くヤマトに、タケルがニッコリと答えた。 「あ、それ僕。太一さんに頼まれて、ジャンプとサンデーを留学先に毎週届けてるの」 「あああああ」 「因みにアイシールド21を勧めたのも僕だよー。太一さんなら絶対にヒル魔さんに嵌ると思って☆」 「何て事を…タケル。あいつが嵌ってただで済むわけがないじゃないか…」 「あはは。楽しくていいんじゃない?」 「あの、高石君達の会話が全然わからないんですけど」 どこまでも朗らかなタケルと疲れたように崩れ落ちたヤマトの会話を聞いていた伊織が首を傾げる。彼は週刊誌どころかコミックやアニメも見る方ではないので、たまにこうした話題の時に取り残されてしまう事がある。 「アイシールド21ってジャンプで連載中のアメフトマンガの話よ。結構ハチャメチャで面白いんだ。あれは私も好きよ」 家がコンビニの京も、ジャンプなどの週刊誌の愛読者である。そんな彼女がいつもは伊織に大まかな概要を説明するのだが、 「アメフトってスポーツですよね? どうしてサバイバルなんて言葉が出てくるんですか?」 「それはヒル魔さんっていう人がいつもマシンガンをぶっぱなしているから」 「……だから、どうしてマシンガンが?」 「そういう人なのよ。ヒル魔さんって人(キャラ)が」 「……ヒル魔さんってどんな人なんですか?」 「「「悪魔」」」 いつから京と伊織の会話を聞いていたのか、タケルとヤマトまでが京と口をそろえてきっぱりと、言い切ったその言葉に、更に伊織が首を傾げる。余計に混乱したのは確かなようだ。 顔中をクエスチョンマークでいっぱいにしてしまった伊織に、やっぱりマンガやアニメとは縁遠い賢が苦笑しながらなんとか宥める。 「んで、太一せんぱーい。サバイバルゲームって何するんスかー?」 マシンガンのようなモノを担いで、どこか視線がイッちゃっている太一に恐れを知らない大輔がのほほんと声をかけた。 「まさか本当の銃撃戦するわけじゃないでしょー?」 「それは当然です。使用するのはこのペイント弾ですよ」 「光子郎?!」 てっきり太一がその場のノリと気分と思いつきで言い始めた事だと思っていたヤマトは、後から説明口調で会話に混ざってきた光子郎にかなりびっくりした。 「実は7月の頭頃に太一さんにメールで相談を受けましてね。オモシロそうだからちょっとお手伝いしてみました」 「光子郎…俺はお前を信じていたのに…!」 「何そんなに悲観ぶってんのお兄ちゃん。いいじゃないサバイバルゲーム。楽しそうで」 「あのなぁ! 太一が言い出した事は大概ろくなことには…」 「どーいう意味じゃぁぁぁぁぁ!!!」 「うわっ?! つめてっ?!」 いつの間にか背後に忍び寄っていた太一が、手にしたモデルガンをヤマトに向かってぶっ放す。(良い子はマネをしてはいけません)それがBB弾を篭めるタイプのモデルガンであろうと予想していたヤマトは、襲ってくるであろうと予想した痛みが来ない代わりに、まるでキンカンを塗った後のようにスーっとした冷たさを肌に感じて違和感に眉を顰めた。 「なんだ? こりゃ」 撃たれたはずの腕を見れば白いキラキラとした膜のようなモノが張り付いている。そっと指でなぞればそれはすぅっと溶けて消えてしまった。 「氷…?」 「それが僕とゲンナイさんとで作り上げた特製のフリーズ弾ですよ」 「ぶりーふ?」 「それは下着ですから」 光子郎に速攻で切り捨てられて、ついでにレディの前で言う言葉じゃないわと空にゲンコツをもらってヤマトが地面に撃沈したが、それを哀れに思う人は誰も居なかった。 「こほん。つまりですね、この弾で撃たれたら凍っちゃうわけです」 「凍るの?」 ミミが不思議そうな表情で首を傾げる。 隣にいた京と顔を見合わせるが二人共『凍る弾』と『サバイバル』がイマイチ繋がらないらしい。 「それでどうやってサバイバルをするの? そんな氷、この陽気じゃ直ぐに溶けちゃうんじゃない?」 「あ、なら溶けないぐらいにいっぱい凍らせちゃうとか!」 「ちょっとタンマ! 光子郎、聞きたい事が…」 「丈さん、質問は最後にまとめて答えますので今は最後まで説明を聞いてください」 慌ててタンマを出した丈もあっさりといなして、光子郎が言葉を続ける。 「凍るペイント弾の一つ一つの威力はそれほど強くありませんから、せいぜい直径2,3センチ範囲が凍るだけです。ただし、それぞれにヒットポイントを設定し、凍るペイント弾を受ければそれが徐々に減っていきます。ゼロになったら全身が凍り付きます」 「わぁ、涼しそう!」 「オモシロそうだね」 「って、それ死ぬからっ!!」 楽しそうに手を叩いたヒカリとは対照的に、丈が今度こそ声を張り上げる。 「全身が凍りつくなんて、心臓麻痺を起こしたらどうするんだいっ?! それにそうでなくても凍傷になる可能性もあるじゃないか! 小さな凍傷だからといって馬鹿にしてはいけないっ! そこから壊死を起こして……」 「んもう、丈先輩。本当に死ぬようなゲームを太一や光子郎君が考えるわけないでしょ?」 慌てふためく丈に、空が溜息を付きながら口を塞ぐ。でしょう? とばかりに空に視線を向けられた光子郎は、そんな慌てふためいた丈の姿を楽しんでいたのか、ちょっとばかり残念そうに肩を竦めた。 「勿論、命に危険が及ぶ可能性はまったくありません。感覚的には水鉄砲と同じノリで結構だと思いますよ」 「水鉄砲?」 「えぇ。ただ水鉄砲だと勝敗がわかりにくいですからね。かといって普通のペイント弾だと服が汚れるから嫌でしょう?」 「いやー! ぜーったい嫌だからねっ!」 「はいはい。判りましたから頭上で喚かないでくださいねミミさん」 光子郎の頭に圧し掛かるようにして騒ぐミミを軽くいなして、光子郎が愛用のノートパソコンを機動させる。 「このフリーズ弾の氷は、本来の氷とは違います。凍傷を起こす程温度は低くないんです」 「そうなのかい?」 「あぁ、キンカン塗った時に感じるヒヤっとした感じぐらいだったぜ」 実際に撃たれたヤマトに尋ねた丈が、その言葉に少しだけ首を傾げる。 「でも全身凍っちゃうんだろう?」 「それはまぁ動きを封じるっていう程度のオプションですから。見た目は派手ですが、別に窒息する訳でもありませんし。DWだからこそ出来る遊びですね」 「でもなんだって氷なんだよ。普通の水鉄砲でいいじゃないか」 一人慌てて騒いだ事が少し悔しいのか、口を尖らせた丈に光子郎が悪戯っ子のような笑みを浮かべた。 「太一さんのご注文なんですよ。普通のBB弾だったら怪我する可能性があるし、水鉄砲は先ほど言った理由と、あとどうしても温くなって爽快感はありませんからね。どうせなら凍っちゃうぐらいの方が涼しいだろうからって」 「はー…太一らしいっていうか何て言うか…相変わらず豪快だねぇ」 とうとう苦笑を浮かべた丈に釣られるように、光子郎も笑みを浮かべた。 「ゲームの勝敗は、全身凍りついちゃったら負け。最後に生き残った人が優勝になります」 「まさにサバイバルだろ?」 ガチャリと音をたてて、モデルガンを担いだ太一が話の輪に加わる。 「サバイバルだから、もちろん武器弾薬も自分で探すんだぜ。初期装備として、最初にハンドガン、M92Fと、弾が支給されるけれど、その後は自分で探して補給しなきゃ駄目」 「探して補給って言われても、どうやって??」 首を傾げた大輔に、太一は、いつの間にか着用していたゴーグルをコツコツと指先で叩く。 透明なそれは、SFに出てきそうな前衛的なデザインで顔半分をすっぽりと覆うぐらいに大きかった。 「このゴーグルにMAPが表示される。これに、自分のHPと地形とアイテムの表示がされるから」 「相手の位置は?」 「それが判ったら面白くないだろ」 そう言って太一がにっと人の悪い笑みを浮かべる。 「武器は威力の強いものや、遠くから狙えるものも多くそろえてある。使い方は手に入れた時にゴーグルに表示されるから大丈夫だと思うぜ。それと、HP回復のアイテムなんかもあるから」 「但し、マップに表示されるアイテムのマークは、その中身までは表示してないから気をつけてくださいね」 光子郎と太一がそれぞれ話を進めていくに連れて、子供達の目が好奇心で輝いてくる。 「本格的ね〜!」 「メタルギアっていうゲームを参考にしたんだ」 「俺こういうの大好き! 燃えるぜっ!」 京が感嘆の声をあげ、大輔が拳をパチンと鳴らして気合を入れる。 そんな大輔に満足そうな笑みを浮かべた太一は視線をぐるりと全員に向けたが、誰もが興味深そうに聞いてはいても、乗り気であるかどうかという意味では微妙そうだった。 特に、女性陣などは、面白そうとは思うものの、苦手という表情を浮かべている。 それを読み取った太一は笑いながら言葉を続けた。 「でもこれは得手不得手があるだろうから参加は自由でいいぜ。光子郎は実況中継するんだろ?」 「えぇ、そのつもりです。僕にはとてもとても」 光子郎も苦笑しながら頷いて、説明を追加した。 「でも、参加される方にはそれぞれハンデをつけますから、安心してください」 「ハンデってどんな?」 ヤマトの問いに、光子郎が答える。 「まず、女子は耐久性が強くなります。つまり、HPが減り難いという事ですね」 「それだけ?」 「他には個々の能力に応じて…といったところでしょうか。この辺は僕がジャッジとして公平にさせて頂きます。よろしいですか?」 「はーい!」 みんなが口々に賛同の声をあげ、光子郎がにこやかに笑う。 その横で、ミミが唇に手を当てて考えこんだ。 「うーん、興味はあるけど……あたしは景品次第かな」 「そうねぇ……楽しそうではあるもんね」 「ね、太一さん。勝者には何かあるの?」 「ん?」 現金な京とミミが身を乗り出すが、太一はちょっとだけ目を瞬いてニヤリととっても人の悪そうな笑みを浮かべた。 「ミミちゃん、京ちゃん。勘違いしちゃダメだ。これはサバイバルゲームなんだぜ?」 「え?」 キュウっと太一が口の端を大きく吊り上げる。そう、それこそ知る人ぞ知る、『悪魔』の笑み。 「生死を賭けたバトルっ! 負けた奴は勝った奴の 奴 隷 決 っ 定 っ!」 「えええええー!?」 「あー…あぁ。やっぱりなぁ…」 大輔達をズビシィと指指し、高笑いを上げている太一を少し離れてみていたヤマトがでっかい溜息を吐いたのを、隣にいた伊織だけが気がついた。 「ヤマトさん? どうされました?」 「ん? いや、あいつがアイシールド21のヒル魔に嵌ったって知った時点でこーなりそうな予感はあったんだよ」 「こうなりそうって?」 伊織が首を傾げれば、ヤマトも丈に似た苦笑を浮かべた。 「派手になりそうって事」 「それは…その『ヒルマ』さんとやらが派手という事ですか?」 「ま、それも含むって感じかな」 なんともいえない表情を浮かべたヤマトに、伊織はどこか労わるような笑みを浮かべた。 しかし、心の中で、 (それでも、ヤマトさんは参加されるんですよね) と冷静に考え、結局似たもの同士なのだという結論に達した。 そして。 参加する事になったのは、 太一・ヤマト・タケル・大輔・賢・空・ミミ・京の7名。 それぞれがゴーグルとハンドガンを受け取ってそれを装備する。 「えー。それではハンデの方ですが。太一さんとヤマトさんは、急所である頭に当たったら一発でゲームオーバーです。タケル君、大輔君、賢君は3発分、女子達は5回分の耐久力ですので」 「うへー。光子郎それちょっときつくないか?」 「一回でエンドってのはきついよなぁ」 流石に太一とヤマトが二人して意義を口にしたが、光子郎は取り合わなかった。 「普通の場所への被弾なら十数回分は持ちますから十分でしょう。そのぐらいのハンデ、最年長の意地でなんとかしてくださいね」 「うわー…光子郎の鬼畜っぷりも磨きがかかってるよ……」 「選ばれし子供達最強は絶対光子郎だよなぁ……」 「んだんだ」 こそこそと太一とヤマトが声を潜めてぶつぶつ文句をたれる。 内容はともかく、不平不満はわかっているだろう光子郎はそれでもまったく意に介した様子はなかった。 「それと、最初に支給される弾ですが、女子は60発、タケル君たちは40発、太一さんとヤマトさんは20発ですので」 「ぎゃー! 鬼ぃー!!!」 「条件きびしすぎー!!」 「はいはいはい。皆さん、スタート地点に向かってくださーい」 今度こそぎゃーぎゃーと騒ぐ太一とヤマトを素で無視して、光子郎がパンパンと手を叩く。 「タイムアップは3時間後ですからね。タイムの表示もゴーグルに現れますから。それでは、10分後から始めます。各自散らばってください」
そう言って追い立てられて、サバイバルゲーム参加の子供達は個々に散らばっていった。 その後姿を見送って、光子郎は参加しなかった子供達の方をくるんと向き直る。 「で。僕達はこの様子を見学するわけなんですが、ただ見学するのもつまらないと思いますので、トトカルチョでもしましょうか」 そう言ってニッコリと笑った光子郎に、その場に居た、丈、ヒカリ、伊織はキョトンとした顔を見合わせて、それからそれぞれがニヤっと笑った。 「私はタケル君かなぁ……お兄ちゃんはハンデが大きいから難しいと思う」 そう、ヒカリが言えば、丈が笑いながら手を上げる。 「僕はやっぱり、ヤマトかなぁ。太一は結構突っ走る所があるけれど、その点ヤマトは慎重だし。ハンデがあっても平気なような気がするから」 「僕は、女性陣が残ると思います。ハンデが緩いというのもあるし、空さんとか運動神経もいいですからね」 「じゃぁ、伊織くんは空くんに?」 「あ……いえ、京さんにしておきます。確か、京さんはゲームが好きでしたから……」 「女子の中では慣れてるという事ですね」 光子郎が笑いながら頷いて、彼等の意見をメモしていく。 「光子郎さんは誰にかけますか?」 「僕ですか?」 ヒカリに尋ねられて、光子郎はニッコリと笑った。 「そうですね……僕は…………」
というわけでトトカルチョー。 このサバイバルを優勝するのは誰でしょうっ!! 正解した方は、ちょっといい夏になるかもならないかも!(こらまて)
って、ごめん。ほんとは一気に上げるつもりだったんだけど、文字数オーバーって言われておこられてん。えんぴつさんに。 というわけで、続きはあした〜!!
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