のづ随想録 〜風をあつめて〜
 【お知らせ】いよいよ『のづ随想録』がブログ化! 

【のづ写日記 ADVANCE】

2005年05月21日(土) 高速一週間

 この一週間はびっくりするくらいにあっという間に過ぎていった。
 先週くらいから“パンフレット作成”の業務が本格化してきており、打ち合わせと社内調整で駆けずり回る日々だった。まあ、平たく言えば「企業案内」の冊子を作るような仕事、と言えばいいだろうか。A4カラー全28ページ、わが社と付き合いの深いC社という制作会社とチームを組んで作業を進めていくが、ひとり後輩社員が俺のサポートに入るものの実質的にわが社側は俺ひとり。制作会社の会議室で行った月曜日の打ち合わせも5対1で行われた。“1”は俺。気心の知れたC社の面々ではあるが、どうみても圧倒される構成である。相手のペースで打ち合わせが進んでしまってはならない。
「5対1だろーが10対1だろーが、俺は負けないからね」
 いつもの冗談のように俺が冒頭に言うと、一気に場は和んだが、俺は本気だった。
 3時間みっちりの打ち合わせの後、軽く呑み会。C社は東銀座方面にあるので、先方で行われる打ち合わせの後は銀座で呑むこととなり、コレはこれで楽しみなのだ。だって“銀座”だもん。だからこのパンフレットの仕事を片付ける6月末までには、ちょいちょい先方での打ち合わせの時間を作ろうと思っている。
 火曜日は別件で珍しく渋谷で呑む。あの鬱陶しい雑踏はなんだ。
 木曜日は月イチの大きな会議があって、うちの部署がその事務局となるため一日大忙し。午後5時近くにようやく会議関連の業務から開放され、やっと自分の仕事に戻れる。
「さてと――」
 PCを立ち上げると、一足早く終業時間を迎えて帰宅していた派遣社員からメールが届いている。それは俺だけではなく、部内の数人の男性社員に送られているようだった。
『今日はSさんの誕生日です。何かあげてください』
 Sとは隣の部署にいる2年目の女性社員。数少ない20代、仕事もしっかりできる真面目なコでみんなからとても可愛がられていた。そんなわけで急遽彼女のバースデイ飲み会が企画され、気がついてみればワイン6本を空ける痛飲を11時過ぎまで。

 忙しい、忙しいとホザいている割にはよく呑んだ一週間だった。



2005年05月15日(日) 真夜中の会話

 本当は『ガキの使いやあらへんで!』を見終わったら、ちゃんと更新しようと思っていたのだが、友人たちとチャットが始まってしまった。いつものくだらない会話に終始したわけで、どこをどう展開したのか、“キティちゃん”の話が始まっていく。日曜深夜、37歳のおっさん3人が語るキティちゃんトークのすべてをココに公開したい。


W の発言 :
 日光でご当地キティといえば、やはり“戦場ケ原落ち武者キティ”だろうか。
noz の発言 :
 ないよな。無いって言ってくれよ。
S の発言 :
 背中に矢がささってんのか、そのキティ
W の発言 :
 そいつがシャープペンの先でぶらぶらしてるのを想像して欲しい。
noz の発言 :
 その企画を出したサンリオの担当者と、ゆっくり話がしてみたい
W の発言 :
 ていうか、おまえが提案してみたまい。
noz の発言 :
 実はさ、
W の発言 :
 ほうほう
S の発言 :
 どれどれ
noz の発言 :
 昨日までの東北出張のお土産に、同じ部署の派遣社員の女の子に“三陸カキキティ”を買ってきてくれ、って言われてて――
noz の発言 :
 明日、渡すことになってるんだ。その子、ご当地キティを集めてるらしくて。
W の発言 :
 茨城には“あんこうキティ”があるぞ。
S の発言 :
 なんか、もうなんでもありだな
noz の発言 :
 彼女に聞いてみるよ。“戦場ケ原落ち武者キティ”の存在の有無を。
W の発言 :
 伊豆には“干物キティ”があった、気がする。
noz の発言 :
 “干物”ってのも、こう、かなりアバウトというか……
noz の発言 :
 アキバキティってのもあるらしいな
S の発言 :
 紙袋でもぶらさげてんのか
noz の発言 :
 ラムちゃんのな
S の発言 :
 いまどきラムちゃんかよ
W の発言 :
 そいつは欲しくないな。ニキビまでありそうだ。
noz の発言 :
 なんか、手にドライバーとかを持っているらしい(これはホントに聞いた話)
S の発言 :
 怪しい日本語で安いソフトあるよ、とかしゃべったりしねーだろうな
W の発言 :
 それはもう既にキティではないだろう。
W の発言 :
 鎌倉には当然のように“大仏キティ”がございました。
noz の発言 :
 いつぞやのづ写日記にも出した“野口英世キティ”。
S の発言 :
 新撰組キティとかもなかったか
W の発言 :
 今となってはどんなネタを聞かされたとしても、一概に「嘘だろ」と断言できないところがもう…
noz の発言 :
 ディズニーランドでは“ミッキーマウスキティ”が人気
W の発言 :
 ううむ、微妙に「あるかも…」と思ってしまうところがもう…
noz の発言 :
 国会議事堂とかでも売ってないのかな
noz の発言 :
 “強行採決キティ”とか“牛歩キティ”
W の発言 :
 コンサート会場にいくと“あゆキティ”とかありそうでもう…
W の発言 :
 NGKには“桑原和男キティ”とかもう…
noz の発言 :
 おばあちゃんの格好をしてる……
S の発言 :
 キティである必要性がわからない
W の発言 :
 現実に、その必要性は既にありません。
noz の発言 :
 最高裁判所では“無罪キティ”(もう説明は不要ですね)
W の発言 :
 できれば“一部勝訴キティ”であってほしいが。
S の発言 :
 めったに見つからない「控訴棄却キティ」とかな
noz の発言 :
 ――もっとあるはずなんだ。俺たちが気づかない何かが……!
S の発言 :
 何を深夜に力説している

  *   *   *

――ええと、ばかですね。ほんとに、ばか。



2005年05月10日(火) 午前さま

 帰宅、午前3時。

 取引先との打ち合わせに俺も出席することになり、夕方5時、青山にある先方の本社へ。打ち合わせそのものは俺がどーする、というものでもなく、とりあえず今後のためにも顔を出しておけ、という程度だった。
 青山なんて俺にはかなり馴染みの薄い街だ。神宮球場にヤクルト−巨人戦を観に行くか、『ロイズ』というハワイアンレストランへツマの誕生日か結婚記念日に行くぐらいだろうか。神宮球場と『ロイズ』なら俺一人でも行けるが、それ以外の場所ならちょっと間違えばすぐ道に迷い、数日後には白骨死体で発見されかねない。まあ、折角の外出なので打ち合わせが終わったら渋谷にでも行って、小さな居酒屋で文庫本読みつつ冷やしトマト&焼き鳥と生ビールのゴールデンコース――と企んでいたが、そうはいかなかった。
 打ち合わせが終わると、
「じゃあ、今日は“懇親会”ってことで、一席設けてますんで――」
 と先方の若手社員のM(実は大学の同窓生)が腰を屈めながら言った。くそう、ゆっくりと呑めると思ったのに。
 会社から5分ほど歩いた路地にある小さなレストラン風居酒屋へ。総勢10名くらいの呑み会は静かに始まったが、こうして外部の人と呑む機会というのも実は大切で、それなりに楽しいひとときであった。
 10時過ぎ、店を出る。連休明けの月曜日ではあることだし、フェードアウトするようにそれぞれが三々五々消えていったが、俺はMと共に2軒目の店に突入した。ええい、もう行くぞお。お互いの仕事やこれからの在り方といったかなり熱の入った激論を交わしつつ赤ワインをお互いに4、5杯。俺はたまたま体調が良かったのかあまり酔いを感じることはなかったが、Mはその口調もネムタゲな目つきも、かなりアルコールが回っている様子だった。
「次、行きましょう、のづさん」
「おいおい、帰れなくなっちゃうよ、もう12時だぞ(実はこの時点でもう西武池袋線の終電はかなりアヤウい)」
「何言ってンすか。道玄坂のほうに、いい店知ってるんですよ」
 Mはそう言ってケータイを取り出した。電話の向こうの相手と、空いてるの? すぐ入れる? などとやや甘ったるい口調で言葉を交わしていたから、おそらくMが目指す店は“女の子のいる店”だということが分かった。
 どうやらMはもう限界だったようだ。店に入り、出されたオシボリで乱暴に顔を拭き、水割りに少しだけ口をつけると、目当てだった馴染み(らしい)女の子と親しげに話し始めた。まもなく、カラオケで誰の歌だかわからない曲をうなり、ソファに戻った。次の瞬間にはもうソファに全身で横たわり、静かにイビキをかいているのだ。
「おいこら! 寝るんだったらこんな店来るんじゃねーよ!」

 果たして、帰宅したのが午前3時。就寝、午前4時。
 起床、午前6時。

 睡眠時間2時間なんて久しぶりだったが、今日はさほど体調的にキツい、とは思わなかったなあ。



2005年05月08日(日) なんということのない日曜

 8時半起床。ツマの「朝ごはんの用意ができましたよぉ」の声でベッドから抜け出て、目玉焼き&ソーセージ定食を朝食にいただく。10時過ぎに散歩に出掛ける。ブックオフと駅にある書店をひやかしてPRONTO(コーヒーショップ)へふらり。アメリカンコーヒーLサイズと共に、読みかけだった『人質カノン(宮部みゆき)』を一気に読み終える。ミステリー短編集の本作だが、後半の作品になるにつれぐいぐいと引き込まれる感じだった。あの有名な『模倣犯』は文庫化されていないのかなあ。
 帰り際にふたたびブックオフに立ち寄る。朝はぶらりと文庫本を眺めただけだったが、こんどはちょっと腰を据えて。仕事がらみの本も含めて、これから手をつけなければならない本が数冊あるのでイカンイカンと思いながら105円の金額に負けて『海ちゃん、おはよう(椎名誠)』をハードカバーで購入。ずっと文庫で探していたのだがこれがなかなか見つからない。ええい、もう105円だから買っちゃえ、というわけだ。
 帰宅するとツマはスポーツクラブへ出掛けているようで不在。俺は日曜日には欠かさないラジオ番組『伊集院光の日曜日の秘密基地』を聞きながら、立ち上げたばかりの『blog the noz』の設定をアレコレいじってみる。夕方5時過ぎに風呂を沸かし、湯船でゆっくり雑誌を読みふける。
 風呂から出ると、ツマはもう帰宅していて夕食の準備があらかた終わっているようだった。セ・パ交流戦の楽天−巨人戦を眺めながら夕食。いつぞやのホタルイカツアーで土産に買ってきた“ホタルイカの沖漬け”と“ホタルイカの塩辛”の食べ比べをしてみたが、俺には“塩辛”のほうが口に合う。
 来週も忙しくなるなあ、とインスタントコーヒーをすすりながら、俺はなんだか分からないけれどナニか調子の悪いパソコンの電源を入れた。



2005年05月07日(土) その名は 『blog the noz』

 もう世の中では“ブログ”という言葉はある程度浸透したと思っていいのだろう。初心者向けのパソコン雑誌でもちょいちょいその特集が組まれているし、テレビでも“ブログ”を意識したようなタイトルだったか内容だったかの番組を見かけたことがある。
 個人運営で日々更新される日記的なWebサイトの総称、とでも言おうか。
 で、ココ『のづ随想録』にもブログの波が押し寄せている。

 悔しいから言っておくけれど、ここまで“ブログ”がメジャーになる前から、『のづ随想録』のブログ化は検討されてきた。インターネット上で提供される『無料ブログ作成』なんてサービスを使って、『のづ随想録』をどうブログに移行していくか、そのメリットデメリットは何かなどを模索していたのである。
 ブログのコメント機能はご存知ですね。
 ひとつの投稿に対するコメントを簡単に登録できる機能。これは『のづ随想録』でいえば、ページ右下の『Mail』ボタンを押して、作者(つまり俺)に感想などのメールが送れるようになっていることに似ている。
 トラックバックなんて機能もあるけど、まあ、日常のくだらないことしか更新されない日記サイトにトラックバックなんぞ必要なかろう。実際、トラックバックそのものもイマイチよく理解していないんだ、俺。
 いくつかの無料ブログを経て、とりあえず暫くはココで『ブログ版のづ随想録』を展開していこう、というところが暫定的に決まった。

 その名も 『blog the noz』。URLは http://blog.livedoor.jp/ynoz/ です。

 「暫定的」というのには理由があります。
 この『blog the noz』も無料サービスを利用して作成しているのですが、その提供元があのライブドア。このページを作った当初は今ほどメジャーでもなかったライブドアも、いまではいろんな意味で注目を集めてしまっている。ぶっちゃけたところでは、俺はあの社長が生理的に好きになれないので、本当はライブドアが提供する無料ブログなんか使えるか!――という気分なのだけれど。
「はい、今日からココは閉鎖して、ブログのほうを見てね」ということではなく、様子見も含めて、『のづ随想録』と『blog the noz』を平行して運用していきます。あ、勘違いするなよ、内容はどっちも同じだからな(それぞれ違う内容で書けるわけねーだろ)。
 一部、ケータイで『のづ随想録』を楽しんでくれている御方もおられるが、『blog the noz』もケータイで見られるはずなのでご心配なく。

 ブログ化された『のづ随想録』に、どうぞ忌憚なくご意見をお寄せいただきたい。間違いなく言えることは、ブログになったからと言って、その内容が格段に面白くなったり、更新が頻繁になったりすることはない、ということだ。



2005年05月04日(水) 連休中につき

 奇跡の三日連続更新。特にこれといったネタがあるわけではないのだが、なんかこう、“書きたい”という気分である。
 ゴールデンウィーク中もまったく通常通りの勤務状態だが、特に朝の電車がびっくりするぐらいに空いていて気持ちがいい。最近、俺は夜更かしが続いていて、起床時間が少し遅れてしまっているので家を出る時間が7時過ぎくらい。普段であれば7時15分くらいに乗る電車は徐々に混雑してこようか、という感じだが、昨日も今日も西武池袋線はあれま、というくらいの空き具合。のんびり読書をしながらの通勤となるのがありがたい。
 連休中のせいか、この“のんびり感”が微妙に職場にも漂っているようにも感じる。俺はといえば、実際のところ今日はかなりヒマだったので、時間が過ぎるのが遅くて困った。いま俺が抱えている一番優先順位の高い仕事は、取引先が動いていないとどーにもならない仕事なので、とりあえず『連休明けに打ち合わせを再開しましょー』なんていうメールを相手先の担当者に流したりしている。そのメールだって、おそらく連休明けにならないと開かれることもないだろう。
 昼休みに会議室で同僚たちと昼食をとっていたら、窓から見える高速道路が大渋滞でビクともしていない。ちょうどウチの会社のすぐ近くに高速道路の出入口があって、そこはサンシャインシティの入り口にも近い。車で遊びに来た人たちがそっくりこの渋滞にはまっているようだった。
 鬱陶しいのが帰宅時間だ。あまりヤル気も出ないので、今日は19時前に会社を後にしたが、職場である池袋はナウなヤングが集う街なので、そのくらいの時間はまだまだ青春たちがうふふあははと笑いながら街に溢れているのだ。中には当然カップルや家族連れで休日を謳歌している人たちもある。なんか悔しいので、俺は西武百貨店の地下食品売り場に駆け込み、シュークリームとマンゴーロールケーキとチーズケーキを素早く購入して帰った。



2005年05月03日(火) アタシ悩んでます

 驚愕の二日連続更新。
 今年はどういう訳か、ずっと本を読み続けている。
 俺の人生の中にも過去に何度か突如として読書に目覚める時期、というのがあったけれど、どれもそれは一過性のものでしかなく、“読書が趣味です”なんて言うことはまず出来なかった。
 それが今年はどうだろう。ま、年の初めに、イロイロと思うところもあって、「今年は本を50冊読もう。そのうち20冊は仕事のための本を読むぞお」なんて意味もなく目標をおっ立てたことが、今のところしっかり守られている、ということだろう。
 今年、特に傾倒しているのが重松清。自分と同年代の世界が静かに描かれていてココロが動かされる作品が多い。これはいずれまとめて紹介したい。
 昔から読み続けている椎名誠は、これまでまだ読んでいなかった作品を最近やっつけている。今日は『本の雑誌血風録(椎名誠)』を一気に読み終え、仕事帰りにまた地元のブックオフに立ち寄り、いかんいかんと思いつつ椎名関連の本を2冊購入。ナニがいかんいかんなのかというと、家では数冊の文庫本やビジネス書が俺に読まれる順番をひたすら待っている状態なのだ。ここに更に本日購入の2冊が加わってしまった。
 いよいよ新境地に足を踏み入れるべく、『人質カノン(宮部みゆき)』。
 エッセイ集を見つけたので思わず購入した新刊『明日があるさ(重松清)』。
 図書館勤めの大学時代の後輩オススメの中公新書『ひとり旅は楽し(池内紀)』。

 ああ、次はナニを読もう。
(あなたが最近読んだ面白かった本、随時受付中)



2005年05月02日(月) 冷やしトマトの真実

 ゴールデンウィーク? はあ? 俺にはまったく縁がないっつーの。
 というわけで、世の中が大型連休に浮かれまくっているときに黙って仕事をしているのも悔しいので、今日はちょっとした呑み会に顔を出した。顔を出した、といってもメンツは俺を含めて3人。
 一人は会社の上司で(正確には隣のチームのマネージャーなので直接の上司ではない)、最近受診した人間ドックの結果、糖尿病を患っていることが判明し、かなり厳しい食事制限を余儀なくされている御方。もう一人は取引先の女子社員。わが社がアメリカ進出するにあたって、その関連業務で渡米した才女だ。彼女は帰国子女で、俺とツマがよく訪れる青山のレストランで学生時代にアルバイトをしていたとかで、「アタシ、絶対のづさんに接客しているはずですよー」と嬉しそうに話してくれた。
 糖尿病患者と帰国子女と俺、という奇妙な呑み会であったが、さすがに年長者が食事制限の中では呑み会そのものも盛り上がらず、まあまあ今日はこの辺で……という具合に、さっさとその呑み会は幕を閉じた。
 そこで帰国子女の彼女を、
「じゃあ、そのあたりで軽く呑み直そうか――」
 とかなんとか誘えばよかったのだが、そのことに気づいたときはもう彼女はJRの改札の向こう側から「今日はごちそうさまでした」と愛くるしい笑顔でこちらに会釈をしていた。まったくもう。

 ちょいと呑み足りず、腹の具合も中途半端だった俺は、ガード下の焼き鳥屋の暖簾をくぐった。
 久々の“一人呑み”である。
 狭い店内はそれなりに客で埋まっていたが、カウンター席は俺と同じような独り客が3人。サラリーマン風の男はジョッキを傾けながら、なにやら文庫本をひらすら読み進めていた。そうか、呑みながら文庫本を読む、というのはなかなかオツだな。先週末に『カカシの夏休み(重松清)』を一気に読み終えて、今、『本の雑誌血風録(椎名誠)』に突入したばかりで、これは状況的にもぴったりではないか、と思った。
 とりあえず、ナマ。焼き鳥は、ええと、皮とネギマね。あとハツももらおうか――え、ハツは4本なの? そんなに食べられないからやめときます。あと、ううん、冷やしトマト――、いいねえ、これください。
 素早く以上の発注を行い、まずは真っ先に出てきたナマで独り乾杯。
 次に現れたのが冷やしトマト。油断をしていたせいか、これが意表をついて抜群に旨かった。レギュラーサイズの真っ赤に熟したトマトをまず半分に切って、更にそれぞれをざくざくと4つずつに切ってある。ほどよく冷やされていて、はらりと食卓塩をかければ、厚切り一口サイズの冷やしトマトは冷たく甘く口の中に広がるのであった。薄切りではなく、あくまでも“厚切り”を良しとしたい。
 そうか、夏のビールのお供には熟した冷やしトマトが正解なのだな、冷奴も野菜スティックも悪くはないが、実は冷やしトマトが王道だったのだな、と俺は認識を新たにしたのだった。


 < 過去の生き恥  もくじ  


のづ [MAIL]

My追加