「硝子の月」
DiaryINDEXpastwill


2004年12月12日(日) <揺らぎ> 瀬生曲

 オリーブの肌の女は人混みを縫ってすいすいと進んでいく。
「おい」
 それを追うグレンは遅れがちである。
「待てって、おい!」
 かつてスリを働いたこともあるだけに、身のこなしには多少の自信がある青年でも、『第一王国』建国祭のこの人波を自由に泳ぐことはままならないというのに。
(なんて女だよ)
 自然と眉間に皺が寄る。ちらと振り返った彼女の口元に笑みが浮かぶ。
「『うふふ捕まえてごらんなさい』ってことか?」
 呟いてから某懲りない青年を思い浮かべてしまい、疲れが増す。
(影響受けてるのか、俺)
 それはかなり嬉しくない。


紗月 護 |MAILHomePage

My追加