「硝子の月」
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2004年11月03日(水) <災いの種> 朔也

 災い、災い、わざわい。
 ニンゲンとはおかしなものだ。そんなに災いが怖いのだろうか。
「……本当、笑える話じゃないか」
 目をほそめながら彼はふと、少女の赤い目に思いを馳せる。
 あの凛とした美しさが気に入っている。たぶん、一番に。
 運命を見る赤い双眸。それすらも人は災いと恐れるのだ。
 まったく、ニンゲンというのはおかしくてたまらない。
「さあニンゲンたち」
 誰も気付かないだけだ。この世は災いにうずめられている。
 息もできないほど過密に、骨まで染みるほど濃密に。
 名前をつけて呼ぶ必要もないほど、それらは近いのだ。
 それは誰も知らないだけで。
「この災いの子たちから、精々逃げ回ってごらん……?」 
 どうして逃れられよう。
 ヒトの両足をつかんで放さない、この世界という災いの種から。


紗月 護 |MAILHomePage

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