月と散歩   )   
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2002年01月31日(木) 種子島漂流記 21

『Y-2』

でも、休み♪

昼までゴロゴロして、海へ行く。
よく晴れた、冬の午後。
相変わらず、風は 強い。

釣竿担いで テトラポットの上。
並ぶ、男 4人。

…いざ…!

―――

故郷の幼馴染み。
家業を継いだ彼は、今はもう立派な海の男だ。

僕の母親。
叔母の魚屋をときどき手伝っていた。
魚くさくて荒れた手の平。

小さい頃から、僕の周りには海の匂いがあった。

…で、今の僕の手。
帰ってからよく洗ったけど、海の匂いはまだ残ってる。

石鹸と混じったその匂いは
とても懐かしく、やさしくて あったかい…。

―――

本日の釣果:1匹(苦笑)


2002年01月30日(水) 種子島漂流記 20

『Y-3』

「ワイ・マイナス3」と読みます。
つまり、打ち上げ3日前 という意味で。
暦の上では あと4日あるんだけど、まあ、作業スケジュールの上で ということで(Y-1が2日間設定されてる。なぜか)。

…『Y』の意味は訊いちゃダメ(知らないから)。

けど まあ、今日は特に取り立てて書くこともなく。
作業は、つつがなく進行してます。はい。


……あ。

なんか、また 搭載機器で交換しなきゃならないのが あるとか…ないとか。
担当じゃないんで わかんないや。


…ツツガナク、進行してます(苦笑)。

で、明日は休み♪


2002年01月29日(火) 種子島漂流記 19

『サイ』

明日から、“本当の”カウントダウンに入ります。
いままで何度もやったリハーサルの、集大成。

今日は、手順書の読み合わせで一日が過ぎ。

でもなんかホント、気が引き締まるもんです。
…まあ、ヒマだったんだけど(苦笑)。

―――

前回の極低温試験のときに、個人のタイムスケジュールがあやふやだった件。
アレがちょっと問題になったらしく、今回は見直しがされまして。

打ち上げまでに、休みが二日。
当日も、旅館待機(休み、ではない)。
…イヤ、まあ現場に居てもやる事ないんだけど。
けど…極端過ぎ…?


2002年01月28日(月) TAKE IT EASY !


自分に、正直に生きるってこと。

それって、やっぱりワガママなんだろうか?
一度きりの人生。
やりたいコト やらなきゃ。

自分の好きなコトをする。
その為には、どこかで『誰か』が無理をする。
…じゃ、『誰か』の希望は誰が聞く?

考え過ぎてちゃあ、動けないさ!

結局、世界は『ワガママな人』と『我慢する人』で出来ている。

―――

連休、二日目。
力一杯、休んだ。
久しぶりに、疾走感あふれる夢を みた(どんなんやねん)。

…久しぶりに、あのコから メールが来た。

―――

…僕は、『どっち』だろう。


2002年01月27日(日) 共鳴 (空虚な石)

今日は、なんにも しない日。

湯船に、1時間ほど 浮かんだ日。

なんだかなぁ…と、夕方近く 散歩に出た。

友人が薦めてくれたCDを 一枚、買った。

ギターの弦を 張り換えた。

耳だけでチューニングしたので、なんだか間の抜けた響き。
でも、ちょうどいい気がした。

ヘッドフォンの向こうからやってくる、『声』。
…『それ』に、反論出来ない 自分。

かき消すように、狂ったギターを鳴らし続けた。

『生きて』いるつもりでも、僕の目は『死』をみつめていたのかも知れない。

肯定も否定も出来ない 今の自分が悔しくて。


2002年01月25日(金) 種子島漂流記 18

『再起動』

すべてが、変わりなく そこにあった。

他愛ない会話すら、なぜだか特別な意味を持って感じた。
小さな飛行機。
巨大な雲。
赤ん坊の真っ直ぐな瞳。
断片的な夢。
粉っぽいココア。
ジンジャーエール。

目に付くものみんなが、問掛けてくる。

ないはずの理由を探しても、やっぱり見つからない。

僕はここにいて。

すべては『そこ』にある。

そして、また ここに立っている。

―――

今回はギター持ってきました。ちっちゃいヤツ。
なんだか、ライナスの『安心毛布』みたい。僕にとって。

音痴ですが(苦笑)。


2002年01月24日(木) いんたぁみっしょん 3


今日で名古屋とも しばしのお別れ。

なんとか、今日は休みをいただき。

―――

免許の更新。

せっかくもらった休み。
もっと有効に使わなきゃ、…というのはわかってて昼まで寝て過ごし(苦笑)。

受付時間、ギリギリで運転免許センターへ。

しっかり2時間、講習を受けて めでたく更新。
(残り1点。しかも『大技、一本』ではなく『小技』を重ねた、『合せ技、一本』手前、でした)
今回の写真は血色もよく(前回がヒド過ぎ)、
友人いわく
「前より若くなってんじゃん(笑)」

講習。
僕と同じ、一般(違反者)講習の人がけっこういることに びっくり。
「みんな同じ穴のムジナね」
と なぜだかうれしくなるのと同時に、
「考えてみれば、みんな『軽犯罪者』なんだな…」
と、犯罪者の群れに囲まれてる自分を思って うすら寒くなったり(棚上我事)。

なにはともあれ、これで まっさら。

もう駐禁はしないぞー!(苦笑)

―――

ココロの調子。
しだいに上向き加減。
体調も回復の兆し。
なんて繊細なココロでしょう。

―――

転職活動、本格始動!
とりあえず、ネットで情報収集⇒まめにメール(自己アピール)
と、草の根活動状態。
ガラス職人という、まったく未知の分野。
まあ、千里の道も一歩から の精神で。

…メール、まだどこからも返ってきませんが…。

―――

明日の夜には、また、南の島の 星の下…☆


2002年01月23日(水) いんたぁみっしょん 2


20日に、種子島から名古屋に帰ってきました。一時的に。

いろんな要因はあるのだろうけど、その、帰る前日あたりから急激に体調が悪くなり 下痢や発熱、挙句は嘔吐…と、なんだかヒドイ有り様で(苦笑)。
そんな身体を騙しだまし、這うように決死の覚悟で(大袈裟)帰ってまいりました。

んで…。

帰ってきて、参ってしまいました(苦笑)。
熱でダウン。
21日はお休みをもらって、翌22日、ひさびさの工場出勤。

冒頭、『一時的に』と書いたのは、25日にまた種子島へと戻っていくからで
通例としてこういう場合、
「名古屋でゆっくり休んで、またがんばる(種子島で)」
という、暗黙の了解のようなものがあるのです。

で、今回もそんなことを期待していたのですが…。

「人がいなくて、いそがしいから」
とのことで、夢の三連休も 夢となりました。

…一緒に移動してきた人たちは休んでるのにぃ…。

―――

頼られるのは、そりゃ悪い気はしない。
必要とされるのは、うれしいこと。
「ここにいてもいいんだ」
存在する 意味。
自分の居場所。
認められた、価値。

安心感。


…足枷…?

アメとムチ…。

使う。
使われる。
円滑な組織活動。

『大義』の前の、『小義』。

…『小義』…?

―――

身もココロも休まるヒマなく、
原因不明の体調不良と 鬱(うつ)状態は続くのでした…。

…嗚呼。
悪循環(苦笑)。


2002年01月18日(金) 種子島漂流記 17

『憂鬱の魚』

さまざまな事情で詳しくは言えないけど、試験中の不具合でバルブなどをいくつか交換します。
それにより、スケジュールにも影響が。
打ち上げは、2月3日以降。
僕らの出張期間もズレてきます。

…という話を聞いたのが、今日の19時過ぎ。
ちなみに昨日までの予定では、僕は『今日、10時の便で』名古屋に一旦 帰ることになってました。

…む?

―――

変則勤務の影響。
曜日の感覚に続き、ついに時間の感覚も 壊れました。

なかには2日間 帰ってないひととか。

みんな、澱んだ『魚の目』で ピリピリしてます。


2002年01月17日(木) 種子島漂流記 16

『歩いて帰ろう』

また、トラブルです。

僕らは旅館待機だったんだけど、試験のトラブルで予定が約3時間 ズレているらしく出勤時間がはっきりしません。
連絡が末端まで降りてこない。

仕方ないので、直属ではないけど連絡のつくエライ人の指示で、射場へ。

…向かったんだけど、行ってみれば立入規制がまだ解かれてない。

…?…おかしい。
17:00にはもう入れるはず…。

まあ、試験が押してるんだろう。
(試験終わるまで規制がかかる)

乗ってきたタクシーは帰っちゃった。

山の中。
現在18:30。
薄い月も、寒そうに。


2002年01月16日(水) 種子島漂流記 15

『月も ない』

現在、22:00。
これから 出勤、です。

さあ!仕切り直し。
気合い 入れていきますか!


2002年01月15日(火) 種子島漂流記 14

『夢と現』

極低温試験、延期。

ここにきて、天気が崩れたためで、今日の明け方 機体も一旦 VABに戻しました。
火工品(火薬類)もあちこち付いてるうえに、燃料満載になるんで カミナリが怖いんです。

そんなわけで、予定もズレ始め。
17日に、一度 名古屋に帰れるはずだったけど それも おあずけ。

昨日の22時に出勤して 帰ってきたら昼の10時。

ふー。

―――

食事も採らずに ひたすら泥のように眠り続けた。

久しぶりに、夢をみた。

あのコに、あった。
とても大事なことを話した気がするけど 忘れてしまった。


2002年01月14日(月) 種子島漂流記 13

『音楽』

今日は午前中だけの作業。
試験のため、機体が射点に移動しました。
僕らの仕事は、その前後、移動発射台(ML)の電気系切り離し・接続。

組立棟(VAB)の50m以上ある大扉が開いていく様は、まるでSFだ。
アタマん中で思わず『サンダーバードのテーマ』なんかが流れる。
でも実際に流れるのは『サクラ、サクラ』(警告音の代わり、らしい)。
…雰囲気、台無し(苦笑)。

その後MLは、VABから500m程 離れた射点まで、歩くより少し遅いくらいのスピードで 20分くらいかけて移動する。
まさに 壮観、の一言。
リハーサルとはいえ、いろんな想いが押し寄せる。
前に書いてるように、僕は今回の打ち上げで 自分に区切りをつけようと思ってる。
そんなんもあって、感慨 ひときわ。

―――

MLは、その下にある2台の ムカデのような車輌で移動する。

いまは普通の警告音だけど、実はコイツにも 大扉同様、『テーマ曲』があった。

…『青い山脈』…。

一体、誰が決めるんだ!?(苦笑)

しかもコレ、版権の関係で 「一小節いくら」とかでお金が掛かるらしいんだけど、予算の都合で イントロ分しかない。

…(泣)。

この前の打ち上げ失敗で、
「浮かれ気分で仕事をしてる と思われる」
と、エライ人が言ったらしく、結局『青い山脈』はお蔵入りになった。

「…イヤ、『青い山脈』じゃあ、浮かれようにも…」
と、みんな言いたかったけど、まあ 結果オーライってことで(苦笑)。

―――

そんなわけで、
僕は『普通の警告音』のなか、ゆっくり動いていくロケットを見上げていた。

眩しいやら 何やらで、景色が 歪んだ。


2002年01月13日(日) 種子島漂流記 12

『河』

明日から極低温試験(F-0)に向けた、変則勤務に入る。
…いろいろあって(主にプライベート)、現在 午前3時。
もうすでに、変則(苦笑)。

明日(今日?)は、出勤は普段通り(7:20〜)。

―――

『知ってる』というのと
『わかる』ってのは、ちょっと違う。
それは『わかって』たんだけど…。

夢と、理想。
生活してくことと、生きること。
優しい ってのと、優し過ぎ。
恋と、愛。
好きと、…好き。

似てるけど、ちょっと違う。

…この河は、かなり 深い。

―――

…もう、寝なきゃ。。。


2002年01月12日(土) 種子島漂流記 11

『アルヒハレノヒ』

いま射場は、15日の極低温試験の準備中。
実際にロケットに燃料を入れて 異常がないかな?って確かめたりする試験でして。
その燃料ってのが、-200℃くらいの とってもクールなヤツだもんで『極低温』と。

-200℃とか言われても ピンと来ない。

…例えば
真冬の北海道は-20℃とか平気で いっちゃう。そんな日は空気中の水分が凍る、ダイヤモンドダストが見れたりするんだけど…。
-200℃の世界では、空気そのものが冷えちゃって液状になる。
So Cool...! (笑)


種子島は、桜が咲いちゃうような陽気の中で…。


2002年01月11日(金) いんたぁみっしょん 1


僕らはいま、1月31日の打ち上げに向けて 日々の労働に勤んでる。
けど、それまでに機体がクリアしなきゃならない試験がいくつかある。

よく
「ロケットは一発 上げちゃえば終りだから楽だろ」(飛行機はひとつの機体を整備して何年も使う)
なんて言われるけど、んなこたぁない。
一発限りだからこそ、失敗は出来ないのです!
その為に、試験をいくつも受ける。

…ぶっちゃけた話ロケットは、衛星を軌道に放り投げてやるだけの、ちょっと地味で でっかい打ち上げ花火だ。

僕はその、セツナ的なトコが好きなわけで。

終末美?(苦笑)


2002年01月09日(水) 種子島漂流記 10

『おもい』

日記。ここんとこ 暗く重い空気が充満してる。
性質上仕方ないと思うものの…。

なぜ 今の仕事を辞めたいか、考える。
もっともらしい理由は浮かぶけど、なんかどれも言い訳っぽくて。

…真っ白にして、考える。

あ…そうか。
僕は、北海道が好きなんだ!
支えてくれる人がいる。
一緒にバカやる仲間がいる。
守りたいものがある。
『そこ』は、僕のかえる場所だ。

故郷を離れるには、パワーがいる。
離れてからも、飛び続けるパワーがいる。
僕は、地球を離れられなかったロケットだ。
けど、悔しくはないんだ。


2002年01月08日(火) 種子島漂流記 9

『明日』

ここ2、3日、トラブルが続いてました。
急に徹夜の作業が入ったり、帰って来たら日付が変わってたり…。
でも、そういうの、キライじゃない。
なんか、がんばってるって気がして。自分、大好きなモンで(笑)。

―――

…けど。

なんだか、煮えきらないのです。
イマイチ、覚悟を決められないんです。

「何の為、働くんだろう」
「この先、何があるんだろう」

それは、決して 前向きなものではなく…。

実は、転職計画が 進行中だったりします(密かに)。
身勝手ですよね。

自分、大好きなモンで(苦笑)。


2002年01月04日(金) 種子島漂流記 8



…遥かな大地は 未だ 遠く

まあ、そんな日もあるさ と
現実から目をそらし

足元に続く鎖は、また ひとつ
辿る先の、その向こう…

―――

『曇日』


2002年01月03日(木) 種子島漂流記 7

『しょしん』

仕事初め。
…といっても、普段となにも変わらない。
ただ、正月をホントの寝正月で過ごしてしまった僕にとっては、仕事をしてれば過ぎてく毎日がうれしかったり。
…ササクレてる…?(苦笑)

別に仕事が嫌なわけじゃない。
憧れてた職業。
誇りも持ってる。それなりに。

けど…なんだろ?

未だに ひとに仕事を尋ねられて、胸を張って 答えられない。

歯車はイヤだ。
このままで終りたくない。

どこか、満足してないんだろう。
ひとは、どこまでも高みを目指すのだろう。

…どこまでも、欲張りなんだろう。


2002年01月02日(水) To the Heaven's Door


…こんな夢をみた。

僕は 手をひいている。
夜。誰もいない、古ぼけた街。
そのコは『なにか』に追われていた。
僕はそのコを守るため、わけもわからず 手をひいている。

『なにか』に襲われても、棒きれを振り回して 必死で戦った。

…そして…。
うまく隠れてたつもりだったのに、ついに『なにか』に捕まった。

…闇に吸い込まれる。

深い、ふかい闇の底。
手には、そのコの温もりが残っている。

声も 音にならない、闇の底…。

―――

『そのコ』が誰だったかは、憶えてません。

いや、ホント。


2002年01月01日(火) Last Exit...

(⇒続き)

23:55。
伸び切ったソバをフォークでグルグル巻いて口に運ぶたび、どうしようもなく かなしくなった。

…目覚まし時計を伏せる。

テレビを消して、お気に入りの曲をかける。

―――

ふと。
今日が満月なのを思い出し、非常階段から外に出た。

月明かりで 異様に明るい。

年の変わる瞬間を満月の下で迎えようと思った。

…カップ麺の湯気で、月に小さなカサが掛かる。
どこかの鐘の音が響いてる。


しばらくして、遠くで歓声が聞こえてきた。

―――

流れ星も見たかったけど。


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