初日 最新 目次 HOME


しもさんの「新聞・書籍掲載文」
しもさん
HOME

My追加

2007年01月18日(木)
「懐かしい」は未来に生きず (48歳)

静岡新聞 朝刊(ひろば)

沼津の西武百貨店で「近くて懐かしい昭和展」を開催していたが、
最終日の日曜日、やっと見に行くことができた。
約五十年の沼津市と西武の歴史が、当時の街並みの再現や暮らしの道具や写真で
私たちにも手に取るように分かる楽しい企画だった。
しかし、気になったことが一つあった。
見に来ていたお客さんが異口同音に「懐かしい〜」を連発していたこと。
誰からも当時の苦労話が聞こえてこなかったのである。
「昔は良かったよ」「あのころに戻りたいね」のせりふばかり耳にすると、
本当にそうだろうか、とへそまがりの私は思ってしまう。
五十年と言う時間が、つらいことも悲しいことも、
みんな楽しい思い出に変えてしまうけれど、本当の意味で懐かしむのであれば、
もっともっとリアルに、皆が貧しかったころの話を聞きたいと思った。
この企画をきっかけに、これからの十年、これからの二十年をどう生きようか、
ということにまで話が進むといいのにな、と感じながら会場を後にした。
大切なことは、あのころの自分や父・母に出会って、
これからどう行動するかである気がしてならない。
懐かしいものを見た、だけでは終わらせてはいけないと思う。