背後からギュッと抱きしめられる 私の髪に顔をうずめる彼
「唇が荒れて切れちゃったんだ だから今日はキスなし」 逢うなりそう言われた
「じゃあ抱きしめて」 帰途に着こうとする彼にそう言った 今夜はそこで終わりと思ってた
彼の鼓動が背中伝いに聞こえる 私の前で組まれている彼の手を握る 「逢えてよかった」 すでにもう胸がいっぱい それだけで充分だった
彼は私の手を握り 向きを返させた きつくきつく抱きしめられる そう、この感触 この息苦しさ
ホントに逢えたんだと実感する瞬間
身体を離し私を見つめる 「あ・・・ダメだ」 彼はそう言ってまた抱きしめる
えっ?何がダメ?
再び離されて目が合った瞬間 唇が重なった 何度も
何度も
「唇痛い?」
「ちょっとね」
「あと何回キス出来る?」
「うーん・・・あと1回」
どこかへドライブすることにはなっていたけど まさか富士山五合目だとはね それも軽く 「今から行ってみる?」 往復で150キロくらいかな
五合目は今夜で3回目 星も月も見えなかったけど 雪をかぶった富士山は見ることが出来たから それだけでもうれしかった
これでしばらくがんばれるよ
|
|