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2005年10月20日(木) 前髪を切り揃えて


日々気になって
なかなか行動出来ないことのひとつに
「前髪を切ること」がありまして、
コーヒーの上面を渦巻くかのような
クリームのように広がっていくのです。

少し前を切り揃えれば、
多少世の世界が明るく感じて
前向きになれるのに
どうしても「さあ、やりますか」に
腰が上がりません。

家族が寝静まった夜、
やっと気を起こして
出来上がりの前髪を
何度も何度も想像しながら
伸びきった前髪に鋏を入れていく時間。
秋の夜長に鋏の摩擦の音だけ
部屋と私の弱気心の内側に
響いていく気がしました。

小さなため息がひとつ。
なんとか出来上がった前髪に
何度も櫛を入れ苦笑いしては、
昨日までの前髪に
やっとサヨナラ告げたのです。


2005年10月17日(月) 明日は晴れますように


今朝も秋雨が一日中降って、私を困らせた。
外の木々たちの葉先から
冷たい天の雫が地面へこぼれては
落ちていった様をしばし見続けていた。

秋雨が降る毎に
誰かと私の距離を測ってしまうくせは
なかなか辞められず
生涯続いていくのだろう。

そして
縁の糸を自分へ手繰りよせることもなく
何も出来ずに
外の雨を眺め続けている。


明日こそ
私の上の空も
そして誰かの上の空も
明日は晴れますように。


2005年10月13日(木) 秋のぬくもり


木々の狭間から差し込んできた
光を辿りながら歩くこと数時間。

夏のような日差しには
もう暫く逢えないなぁ

そんな風に感じる季節に
私は今辿りついたようだ。












2005年10月03日(月) 思い出してはくれない存在


ふと見上げたら
顔なじみの人がそこに立っていた。
彼はスーツに身を固め
同じ会社の人らしき人達と
談笑して私の数メートル先で立っていた。

何度か彼の顔を見上げるように眺めたが
名前が出てこなかった。
あの場所であったひとなのに
出てこなかった。

私の会社の最寄り駅に降り立った時に
彼のその時の服装が蘇った。
そうあの時の記憶。
名前も話し方も一気に思い出したのだ。

学生時代のバイト先での先輩で
大手の銀行に就職が決まったとだけしか聞かずに
そのまま私もそこのバイト先を辞めた。

そのせいかな、
私のことを思い出す様子もなく
彼は視線を合わせず
発車した電車とともに
ホームから消えて行ってしまった。


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