:::排出系列:::




俺が明日死んだって、地球は回っているんだから。





2003年12月31日(水)  大晦日のポルカ

時計を止めないで 此の侭早く進ませて
あたしの未来に約束等を置かないで
不安定なものに取り付けられた約束等
破る事は 何度あっても 守る事は 有り得ないくらいの確率なのよ
 
「もう、いいよ」と除夜の鐘が鳴り始めたと同時に漏れた呟き
どちらとも取れる答えに 困惑の表情が廻る
あたしの内臓を壁に投げつけたら きっときれいな花が咲く
 
こんな夜は 見通しがつかないままいつもそっと閉じてしまう
狙い通り消えるような幕が降りていく
 
新しい扉を開く勇気も持てないのに 新しい扉に跳びついて
撥ね返されては泣き笑いを浮かべて 不安定要素をまた増やす
「どうしよう」悩んでいるのか 相談なのか
判らないような呟きがあたしの耳にこぼれてく
もう 捕まえられない時間の尻尾は何処へ行くのだろう
 
望んだり 望まれたり 休んだり 捕まえたり
忘れたのは良いことだったのだろう
 
鐘が鳴り終わればほら 音楽が流れ出すから


2003年12月30日(火)  the best way

欲しいの
囁き声に似た血色が誘う夢の世界
意志から免れて固まった深紅を貴方は嫌う
さらさらしていた流れは
どろどろと嗜好を変えた
私と意志は頑強に結ばれはしなかった
刻んだ傷跡があの日に似通う
 
つまさきが綺麗なまま
愛撫のような柔らかさを私がもう感じられない
それもひとつの事実
逃げたくて逃げ場のない道を引き返す
月が遠くに輝きを落とした
 
義務感に似た正義は悪と大した差異も示さず
ただ美しく見えていたような
ただ美しく消えていくような
…真実はどうでもよく
優しさは掴めずに
不可解な不快な低俗さは認知する
 
触れたいと願った身体が離れていく
それだけはただの事実だった
認めることを拒んだ強い事実だった
 
許しを乞い
忘却を願い
いつかは忘れる
大概は似通い
感触になり
いつかはつながる
だから事実は符合する
曖昧な現実に投じられた小石となり
私をどこまでも貶める
まるでそれだけが
私を救う最良の道であるかのように


2003年12月27日(土)  渡り廊下

白墨 が ぱらぱら白く 汚く あたしの空へ
黒板 に 長く 並んだ 四角い文字が 意識を 追いやる
ねえ 大切なのは 白墨の文字だったのですか?
 
やっと 気付いたら 窓の 外は変わり 小さく萎む
悲しみの量と小さい沸点が 汚されていく
 
四角い黒板を 丸く消した
短期記憶の 鮮明さは 何処にも なかった
あたしが カラカラに乾くのを 誰も気にかけることは ないのだから
もう 遠いのは黒板消しの中の記憶
何かに似た 理由なき記憶
 
一つ一つ指がなぞる
金属が摩擦する音
黒板を爪がなぞる音
…うるさいな
 
もう 忘れて良いなら 海に捨てます
あたしの時間は 白墨の粉にまみれて 霞んでいます
眼を 凝らしても 届かないのは
果たして 誰のせいでもなく
いつか 忘れて良いのなら この話はもう致しませぬ
 
校庭のはしゃぎ声
第二校舎の渡り廊下
血を蒔いて 消えた
芽のでない 種を落として
血を蒔いて 消えた


2003年12月23日(火)  追い風 視界 笑い顔

一時的感情過多が引き起こしたのは
果たして無力でしたか?
それとも気力ですか?
君の奥にある答えはさらけ出す必要等無いのです
君に必要な幾つかの事実を歪曲させる前に
さあ 早く御出でなさい
 
枯れ果てた鳴き声のような呻き声
突き放された事実に返したりしないで
認めなくても良い
あたしは所詮無力だと
総てをさらけ出して笑おう
 
差し苅テかった行き止まりの標識
其れをあたしの墓標に変えて
其の儘ずっと君を抱いて眠ろう
 
神秘に値した悪夢
潰された感触を此の掌一杯に広げて…
月明かりに抑制された微笑みを潰して
時の流れは決して優しくはないのだけど
君の髪に触れた指先が此れ以上無い時めきをくゆらせる
 
引き裂かれた感情を表に出しても構わないから
優しい手で声で仕草で君のものになりたい
こんなあたしでも良いのなら何処までも連れていって下さい
幸せの定義等いつからか変わりはじめてしまったのだから


2003年12月21日(日)  口腔の秘め事

あたしの口腔に残る苦みに再び現実を眼の前で晒される
指切りをした子供の頃の記憶が嘘のように流れた
あたしを抱いた腕に縋ることは簡単だった
そしてあたしたちは結んだ小指を離してしまった
まるで弾けたガラス玉の様に
 
あたし意外の他の誰もが聞こえないと首を降った
優しい微かな高音の正確な音楽が流れているのに
 
独りより多数が強いといつか誰かに云われた事を
忘れて良いなら喜んで忘れましょう
あたしを支える強い支柱はもう折れだしてしまいそう
首を傾げて好奇の眼であたしを見上げた子供に救いを
…違う
救われたいのは 誰でもなくあたしだ
 
あたしの耳朶を熱くさせる吐息に似た色彩を纏う
舌先に絡まった蔦は願いを無視して朽ち果てる
判らなかったことが知りたかったことではなかったなんて
在り来たりな結末にあたしは堕ちてみせましょう
救いを求めた手のひらを振り払わずに
誰か受け止めてくれるなら


2003年12月17日(水)  コワレモノ

冬色 色濃くけぶって くしゃみをひとつ落とした
読みかけの本のカヴァーが破れかけてて
あたしみたいなカヴァーに同情して
何度も 何度も泣きそうだった
感触 冬の色のような肌 眼が乾いて痛い
読みかけの本の内容に 心臓をひとつき
ぐらりと揺れて 倒れられるのなら楽なのに
 
暴れまわる 保護される あたしの責任者はあたし
誰の感情を 彼の優しさを あたしの口で現せない
洗い立ての髪 バスルゥムのシャンプーの匂い
けしむらさきのブックカヴァーが汚れてた
背中に乗ってゆぅらゆら 目的地は定めない
 
人の言葉に圧倒される ごうごうごうと音がして
振り向いたら あたしがいた
途切れ途切れでも良いなら 伝えて
 
あたしを明渡して あなたにあげるよ
この不用品に改良の余地なしとはっきり云ってくれれば
それですごく楽なのに


2003年12月16日(火)  父性愛

あたしは貪る 上等のカプチーノに浮かぶ上等の泡のような
消そうと思っても消せやしないのに 口に含むと
ふわりと溶けてしまう カプチーノのような悦楽を
 
バニラの香りに溶けた御菓子のような男の声
添い寝していても 存在の有無さえ見えなくなるほど
何処か危い 男の身体 それだけずっと欲しかった
パパの匂いが広々と部屋中を充満してる
あたしの組み立てた理論なんて役には立たない
ママの匂いで只管吐いて
凶々しい顔をしていたあたしを誰か想像していたのかしら?
 
壊す様に抱くのをやめて しつこい愛撫を続けないで
あたしのささえになる棒はもう強くはないのだから
揺さぶらないで 吐き気を堪えているのを知って
望んできた景色に取り残されたあたしには もう何も無い
 
エディプスコンプレックスの男の子と最近偶然出会ったの
あたしを「ママ」と呼ばないで あたしに「ママ」をさせないで
 
憎々しい微笑みを称えて 「温かな家庭」をスローガンの様に抱いて
パパからあたしを疎外した 腐った笑顔と金切り声
嘘の為の本当を創るのはもうやめて
 
望まなかったらよいのでしょう
望まなかったら…


2003年12月15日(月)  既知と未知

理屈で固めた理論とは裏腹の表情は恐怖の仮面を被ってる
あたしはゆっくり手摺りに沿って螺旋階段を下る
ふと頭を過る残像は 未だ見たことのない走馬灯の様
どんな力とどんな罵声があたしを追い詰めているのかは判らない
 
躓いて降りかえると友達が小さく手を振っていた
あたしは見えない振り・気付かない振りを決めこんで
螺旋の階段をトントントンと駆け降りていく
 
もう少しの平行と均等さえあれば
屁理屈だって理屈になると思うのに あたしにはいつも
「もう少し」が不足しているんだ
カルシウムのバランスが壊れて脆くなってしまった骨みたいに
脆弱にあたしの身体は壊れて均等を保てなくなった
 
悴んだ指先には見えないくらいの光が宿り続いてる
あたしの背中はもう今上手に伸びずにクラクラと下へ
ふと見上げた夜空には 見覚えの在る星座があるけど
覚えていた筈の記憶はあやふやで最早象を結ぶ事無く消えて散る
 
声を上げて時計を見ると時間の進む速度に驚愕する
知らない振りを決めこんであたしの時間で行く事が出来たら
螺旋の階段なんてもう駆け下りる必要は何処にもないのに
 
あと幾つかの優しさがあれば
冷たさだって暖かさと代替する事が可能になると思うのに
危いバランスが保てないくらい あたしの身体は憔悴しゆく
この冷たさの本物とあの冷たさの偽者の
見分け方が知りたいのに あたしは其れだけを知りたいのに


2003年12月14日(日)  朝日

ぱちんぱちん 弾ける音で爪を切る
綺麗に形を整えます 爪はあたしの顔なのです
爪の先が輝いていれば 新鮮な安堵をたぶん貴方は感じるから
爪の先で まあるい頬を突付きます
優しさと 柔らかさに溢れた真っ赤な頬
どうか 変わらずに居て下さい
 
夢見心地で触るキーボードとあたしの手の温度差が丁度良く
躍起に願った欲望の対象も やがては冷めてくれるでしょう
絵空事を描いたり 時に苦痛に沈みながら
あたしの綺麗な指先は 貴方を癒す為に在るのです
境界線を越えたら はだしで翔けても良いですか
どんな願いも雲に溶け 明日の雪と成り得るのなら
其れはどんなに幸福と不幸に塗れた事実なのでしょう
あたしの夢は 遠く遠く空に描かれるのです
 
キーンキーン 響く不快な耳鳴りと
汚れてしまった夢の断片 時々取り出し眺めます
耳の中に這う虫はどんなに何かを願っても離れていくとは思えずに
貴方の空を感じて居たいと願うのです
痛みを伴なう耳鳴りで 突飛な嘘を創りましょう
 
小さな温度に悶えるあたしの答えは今も変わりません
あのとき選択した結論が今も続いて居るという事象
時々不安を覚えては すうっといつか消えてしまう
何かを望んだ あの明け方の空をあたしはきっと忘れません
あなたと眺めた 朝焼けをあたしはきっと忘れません


2003年12月13日(土)  某月、回想の二日間

診察室 白いベッドと点滅する安蛍光灯
目の下の隈はコンシーラーも隠せない
鳴り渡るサイレン 褐色の肌にくちづけを
金属音のような耳鳴り 自ずから引き隠った内側は
何も映さず何も通さぬ居心地の良い空間です
 
呼ぶ声と引き返す足音 止まらないアイドリングを密かに待つ
疲れを表面化せず 隠す言葉も特にはない
散り果てた枝 白い小道
忘れ難い温もりも瞬時に消える粉雪の轍
 
引き留めても良いの
今ならまだ間に会うのなら
磁石みたいに引かれ合うのは
憂鬱みたいにうんざりしない
どんな手法でどんな魔法で
あなたを騙せば良いのだろう
蜘蛛のように自由を手玉に
蝙蝠のように夜に潜む
悲しい空は もう要らない
 
残された選択肢と使われなかった言葉がほら
もうそこ迄溢れています
誰かの手引きも得られないままになるなら
此処であたしは息絶えよう
足手纏いになるのなら何も知らぬまま消えた方が楽
除外する手をはねつけて
どうにか独りで逝くのだから
もう誰一人泣いたりしないで
あたしを空に返して下さい


2003年12月12日(金)  凍傷

滑稽なのは「願い」でしたか?
滴る血液は綺麗に拭き取られ 最早記憶の片隅に押し込まれようとしています
 
脳内で活動写真が廻ります
映写機はカタカタと鳴り あたしの記憶を映すのです
 
産まれ落ち、授けられた名前に固執し
失った物は数知れず 床一面に散らばります
あたしの抱く空想は居なくなってしまった人達への追悼なのです
知って下さいませんか?
あたしは一時も従順な動物ではなかったことを
忘れて下さいませんか?
あたしが下した決断の幾つかを
 
砦を求め 海を越え
声にはならず崩れる崖
帷に包み 隠れた部屋
煙草の匂い 冬の風物詩
サンダルウッドの優しい薫り
思い出しては閉ざした眼
誰かの中に住むことが あたしの為になるのなら
あたしは何にも捕らわれず 其れを実行したでしょう
露見すべき真実の在処と
あたしを巣くう苦痛の源泉を盗み出して下さい
 
今夜もまたあの丘で待って居ます


2003年12月09日(火)  小さな息吹

シャワーの音に掻き消されて 何を云っているのか聞き取れない
果たして望んだものは其の『声』だったのか
『電話のベル』だったのかさえも もう定かじゃない
 
突き詰めて考える必要性のない事柄に傾倒した侭起き上がれない
つぶさに取り違えた事実は『故意』だったのか
『寓意』だったのかさえも もう忘れてしまいたい
 
特にあたしに意味はない
生きている意味を考えても そこに見えるのは闇しかない
あたしは存在理由を放棄する
生きてる意味に固執してもそうでなくても あたしはイキヲシテイル
 
駅前でおじさんが叫んでる『■■■■に屈するな!』
甚だしいのは其のことば『所詮負け犬』違うの?おじさん
あなたが屈してしまった所以は叫んでしまったからなのに
 
取り止めもなく思いついた事だけをふとノートに認めた
暗がりに留まって待っていたものは『希望』だったのか
『期待』だったのか『虚像』だったのか『実像』だったのか
今となってはもう関係ないか
 
特にあたしに意味はない
明日を望むほどの理由もなければ 明日を拒むほどの力もない
あたしは『未来』を反故にする
努めて忘れた『過去』があっても其れは決してキエナイノダカラ


2003年12月08日(月)  空耳

空耳が飛んでる
蝿の羽音みたいに煩くて 頭に響くの
嫌いな物も好きな物も 何時の間にか分別が付かなくなって
途方に暮れてる こんな夜は何度目だろう
 
幾つも何かを乗り越えて此処まで歩いてきた事が
障壁を増やしていたなんて 当たり前の事なのに
足掻いたり もがいたり 悪足掻きのままで終わるつもりはないよ
自信の過剰と自意識の過剰も時にはあたしの味方になるかな?
どんなに焦ってしまっても いつかは別れが来るのだし
小さな別れに泣く事も 必要な事だと思えたよ
浮遊している意識の束を 屑篭に捨てたらもう多分 大丈夫
 
方角が歪んだ
時々感じる幸福感は背中に不幸を背負っていると
本当も嘘も混ざってしまって見分けが付かない今日だから
こんな夜に身を任せたまま 空耳を聞いて眠りましょう
 
肌寒い夜 冬の夜 小さな雪よ きらきらひかり
あたしの眠りを助けて下さい
眠れぬ夜 暖かいベッド 空耳の声よ もう消えて
あたしに眠りをあたえてください


2003年12月07日(日)  バランス

擦り切れそうな声 振り絞るから届いて下さい
願いは計り知れない重みに 潰れてしまう夢だとしても
 
足掻いて 足掻いて開拓された道を振り切る
剃刀の刃の上を危ういバランスで歩め
傷ついて 疲れ果て遠い空気は絹糸のように
あの夜空気は生温く 空想した
 
一枚の薄い膜に挟まれたあちら側とこちら側を
毎日近くて遠い空で
毎日誰かが結んでいるのだろう
 
あの時苦悶の一週間の間
あちら側にわたしが運ばれたら
世界のバランスは崩れたかな
「バランスのとれた共存の仕組み」は
あちら側とこちら側のバランスのことだったのだろうか
 
どんな声でもいい 受け止めるから
あたしに向かって叫んで下さい
願いはあなたの存在を認めて居られる術になるから
 
無理をしないで 抱き止めたら離れていって下さい
生温い空気の夜 降り出す雨を感じていた
空気の重さが変わった夜
 
忘却と云うひとつの「死」は
容易なものでは決してないけど
毎日繰り返される 誰かや何かのあちら側への移動が
バランスのとれた仕組みを築いて居るのでせう
 
擦り切れそうな声 振り絞るから
どうかあなたに届いて下さい
風の夜 小さなため息


2003年12月06日(土)  償い

ありがとう
厳しくてとても強く
それなのに優しすぎるほどの言葉に
 
甘えるべきものとそうでないものの区別を
裏切りとつながりを教えてくれたことに
 
言葉をいくら尽くしても足りないくらい
あなたの強さと厳しさと優しさに涙が出そう
 
あなたを傷つける事象を起こしたのは
あたしのあなたへの裏切りだったのに
それをゆっくりと絡め取り
優しく紐解いてくれた
 
笑っていてほしいという言葉が深く刺さり
あなたへの裏切りにひどく後悔の念を抱いた
 
ごめんなさい
そしてありがとう
ずっと言えなかったけれど
癒やされた傷はあなたへのあたしの優しさに代われるよ
だから待っていて
償いの意図を償いの手紙を


2003年12月04日(木)  冬の夜

難しい言葉を覚え 陥れた相手は数知れず
笑っても構わないわ あたしの失策はきっとあなたには見えていた筈
だって陥れられてしまったのはいつしかあたしとなったのだから
 
突き当たりに注意 横目で見て通りすぎた街並が
何時の間にか変わってしまった事に気付かなかった
時間の軸とあたしの軸は何時の間にかずれていて
変わってしまったあなたの風貌を 茫然として見ていたの
なのに 自信過剰だったの
「あなたの気持は変わらない」信じていたのはあたしだけ
 
如何して優しすぎる嘘であたしを見透かすの?
捨て去った筈だと確認しあって其れだけでもう よかったのに
あなたの腕が身体を包むから あたしは泣いてしまうのに
この雨が あの別れた蒸し暑い夏の雨ならよかった
冷たい空気に晒された この冬の夜の雨は冷たくて
 
悴む指先温め 忘れ去った事は遥か遠く
届かないなら其れで良いの あなたの横顔にあの頃を見出す事が出来たから
ずっと忘れていた筈の記憶がこんなに近過ぎるところで甦る
 
回りくどい仕草や 気障な気がする言葉まで
全部思い出してしまった そういうと笑うかしら?
時計の針は逆に廻ってくれないから 微かな気配を指で謎って
 
何時まで優しすぎた嘘はあなたを想うの?
別れたあの日の肌寒さまで忘れられずに 居るわけでないけど
あなたの腕に縋りついて 何かを乞えば願いましたか?
この季節が あの出会った桜の舞う春ならよかったのに
雪が舞い落ちてしまう 冬の季節は寒すぎる
 
どんなに足掻いても届かないと知っていた
信じて居たかったのは「変わらないあなた」だった


2003年12月03日(水)  「言葉」

言葉が嫌いだった
巧く伝わらない・上手に喋れない・何かが足りない
そんな感情を呼び起こすのは 決まって口から滑り出す言葉達
当惑する私を横目に
微笑みを返す・忌々しそうな罵声・取り違えられた意味
それらの結果を齎すのも 決まって口から溢れ出た言葉達
 
苛立ちながらもそれ以外に伝達手段を知らない私は
今日もこうして 文章に翻して言葉を繋ぎます
 
ありがとうもごめんなさいもこんにちはもさようならも
文章にすれば簡単に伝えられるのに
口から滑り出すと 私の表情・感情
それらまでもが無駄に付き纏い 上手に何も伝えられずに立ち消える
 
言葉は嫌いだった
「だいすきだよ」が嘘に聞こえたあの日
私は言葉を放棄した すべての欲求は 自分を傷付ける事に成り代わり
私はもう何を伝える事も 何かを聴きとってしまうことも放棄した
 
けれど私は聾唖ではなく 結局すべては情報へ換算される
「死ねよ」「産まれてこなきゃよかったのに」「愛してる」
都合の悪いものだけを真実だと受け取るようになってしまった脳は
前に進む事無く 後退し続け 最期には腐敗した
 
私の中にある軸は歪み「言葉」を疎んだ
どんなに疎んでも付いてきた言葉は どんなに憎んでも着いて来た言葉は
今でも私の傍にあり 時に私に傷をつけては
解体されゆき 何処かで何かの情報に いつもどうにか換算される
伝達手段に言葉を選び此処まで進んでしまった私は
もう 言葉を放棄する事は出来ないのだと思う
死ぬまで 何かを内包した言葉と向き合いながら
それでも私は言葉を発し 時に誰かを傷付けては
それでも歩んでいけると思う
 
どんな言葉もいつかは解体されて 空に帰る
きっとそれは ずっと遠い未来の話
続いていく 歪みながら私の中に在る軸
 
言葉が嫌いだった
だけど言葉が存在していてよかった


2003年12月02日(火)  夜間飛行

あらゆる熱やあらゆる激情までもが
すべて偽物だったとしても
屈する事無く歩んでいきなさい
 
あなたの選んできた道は 強ち間違いなどではない
あなたが感じたすべての物はすべてあなたの糧となり
いつかなにかを生み出せる筈
 
傷付けられ 泣き出しそうな其の顔も深く私に刻むから
あなたがいつかいなくなっても 私はあなたを忘れない
喜びや すべての感動を胸に刻みたいといつかあなたが話したように
私には あなたの一挙一動を何処かに深く刻んで居たい
あなたがいつかいなくなっても 私は泣いたりしないから
 
偽りの罪や 犯した幸せをも
受け容れられ無いものだというのなら
それらの証拠を見せなさい
 
あなたの進んできた道は 決して道標などはなかった
切り開かれた幾つものみちの開拓者となったあなたの背中に
棘はもう見えないのだから
 
嘆き続け 遠ざけた筈の出来事でさえも私は忘れず生きられる?
あなたが犯した真実を 私は決して忘れないから
いつか私がいなくなっても 私を決して忘れないで
だけど 私の一挙一動に思い出を見出して泣かないで
あなたの涙を 遠くの場所で聞くのなら
忘れられてしまう事が どんなに楽かあなたにも そう 判るでしょう?


2003年12月01日(月)  鳴り止まぬ、鐘

独りなのだと思うと急に寂しくなった
夜に残して来た筈の憂鬱を未だ引き摺って居る
束の間の安息と 大切な薬が足らなくて
頭が ほら 騒いでる
 
疲れを跳ね退けてみたら知らない景色が広がった
眼の中に在る筈の希みは疲れ果て傷を負う
強ばった頬は笑いを引き出せず引きつって
可能性を 今 観測する
 
どんな風な言葉をどんな時に使おうか
判る筈のない事も判ったつもりで居たいのに
独りなのだと思うから下を向いて
眼を閉ざし 強い力で手を握りしめる
 
結局僕らは独りになるから
他人は他人と決め込んで 自分の為を生きるんだ
いつまでも鐘の音だけ
鳴り止むことなく 冬の空に響いた


kei ☆メール ☆少女カタルシス



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