ランディと共に買い物に出かけた。 商店街の店頭で、品物を見て、買おうかどうしようか考えている間に、ランディは、ふらふらとドラッグストアの方へ。 買うかやめるか、まだ決めてなかったので、買わないことにして、ランディのいる方に歩こうとしたら、ランディは、わたしに気づかなかったらしく、わたしがいた店に。 そのときである。 老人、と言っていい年齢に見える男性に、ランディが呼び止められた。 最初は、「君。君」と呼ばれまさか自分のことではあるまいと思いながら振り向くと、
「君だよ」
ぽかんとするランディに、オッサンは右手を差し出して、
「握手しよう」
勿論、ランディは、芸能人でも有名人でもない。 ランディは呆気に取られている。
「握手しよう!」
オッサンに手を取られ、何故か握手に応じるランディ。
「しっかり握れ!俺は真面目なんだ!」
な、なにが? っていうか、ランディ。なんで逃げないんだ。 がっちり握手し、手を放すと、オッサンは、
「頑張ってくれ」
と言った。 わたしは、ランディの腕を引っ張って足早にその場を離れた。 ランディは、後ろを振り返りながら、
「なんだったんだ」
と悩んでいる。 なんだったのかは判らない。謎のオッサンには間違いないが、そのオッサンの握手に応じるのもどうかと思う。 人違いなのか、或いはまた別の理由があるのか判らないが、この御時世である。 通り魔だったらどうするんだ。 まあ、刺激しないというのもひとつの対処かもしれないが、ああいうときには逃げるものだろう、と言ったら、ランディは、うーん、と唸った。
「いや、前に遭ったのに比べたら、まだ全然普通だから、つい……」
以前にもあったのか。 あったらしい。
ランディ曰く……
横浜西口にて
飲み会の帰り、駅のトイレ(無論男性用)に入ったら、オカマさんの集団がいた。 違和感を感じつつ、用を足して、手を洗っていると、 「ねぇねぇ、いい男知らない?紹介してよー」 と声をかけられる。 酔った勢いもあって、暫し歓談。 「また今度ねー」 と、言って別れる。 勿論、互いに連絡先など教え合ってはいないので、それっきり。
以前住んでいた家の近所にて
これも飲み会で気持ちよく酔っ払った帰り道、歩道に、若い女の子が座り込んでいた。 「ねぇ、地下鉄で帰りたいの。50円貸して」 既に、地下鉄は終電が出た後だと言っても、泥酔している彼女は聞いてるのか、聞いていないのか、 「なんでもするから」 などと、危険なことを言っていたらしいが、寒い時期でもなかったので、そのまま放置。
同じく、以前住んでいた家の近所にて。
またしても飲み会の帰り、コンビニで夜食を買って、帰ろうとしているとき、自転車の男性に声をかけられる。 「ねぇねぇ、三千円で○○○○○○らせてよ」 「はぁ!?」 聞き違いかと思って問い返すと、 「三千円で○○○しゃぶるよ」 思わず、
「間に合ってます!」
と叫んで逃げるも、相手は自転車で追ってくる。 「ねぇ、断る人いないんだけどー」 全速力で撒いて帰ってきた。 その後暫く、外出が怖かった。
……ランディ。 慣れるなよ。そういうことに。
|