野生の森
高瀬志穂



 忘れな草。35 にょ

「・・・っ。」

 アスランは手渡された指輪を強く握りしめた。

「全てを手に入れることは出来ないのですよ、アスラン。」

 そう少女は言う。たくさんのことを諦めたことのあるかのような言葉を。それは死神というより、無力な人間の様な言葉であった。

「何で今これを?」

 けれどアスランはそのことよりも、これを渡された事の方が気になった。そして今聞くべき事はそれだった。

「確かに助かる方法なんてありません。神にすら出来なかったことをするのが人間です。だから・・・悪あがきくらいさせてあげますわ。私の気が向いたので。」
「ころころ意見が変わりますね。」

 少女はアスランをみて、ふっと笑った。まるで春の穏やかな日のような笑顔で。

「普段はこんなことしないんですよ。あなただからですかね。」
「・・・一応もらっておきます。使う使わないは別として。」
「えぇ。あなたなら一番いい答えを見付けられるでしょう。」

 そうしてアスランは屋上を後にした。


 誰もいない廊下を歩く。看護婦に見付からないように。

「・・・っ。」

 彼女は選択権を与えてくれた。ただ死を待つだけではなく。

「だからって・・・。」

 誰かを抱け、という。愛などない、吸血鬼が血を求めるように生命力を求めろという。

「だが誰に・・・。」

 たった一夜を過ごす。力を使えば簡単に女の子をこちらに向かせることが出来る。そしてその夜の記憶は残らないという。アスランが決意すれば簡単なのだ。そうすればもしかしたら二人とも生きていられるかも知れない。

「だけど、なぁ。キラうんぬんの前にキラ以外を触って・・・つかセックスなんて出来るものかなぁ。」

 男は身体と心が別物だというけれど実際キラ以外の子を見てもなにも思わない。教室で回されるエロ雑誌にも興味はない。



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 直している暇があまりないので、勢いだけで打ったものをだいたいそのまま。

2005年03月09日(水)



 忘れな草。34 にょ

「ハッキリとは分かりませんけどね。何か決定的なものは。」

 多分、似ているから引かれたのであろう。アスランが彼女に興味を持つように。
 逆にキラは違うから好きなのかもしれない。自分に持っていないものを持っているから。

「・・・早くお帰りになった方がよろしいですよ。今を大切にするために。」
「思い出も記憶も存在もなくなるのに?」

 このままアスランが死んだら、アスランという存在そのものが消える。誰からの心からも消え、もともと存在しないということになってしまう。
 それが消滅。アスランを待ち受けているもの。

「そういうものではないでしょう。あなたには今という時間があるのですから。・・・彼女が大切なら彼女を悲しめるようなことだけはしないことです。そして・・・。」
「?」

 少女は何か含みのある言葉を良い、ポケットから何かを取り出した。そして、その手をアスランへと差し出す。

「もし彼女を抱きたいならこれを付けてください。」
「これは?」

 それは指輪。誰のものか分からないおもちゃの。どこにでもある、小さい子なら持っていそうなものだ。

「奇跡、なんてものを信じてはいけませんけどあなたなら。」
「だから何ですかこれは。」

 はっきりとしない言葉に、アスランは眉を寄せた。彼女が一体今何を思って何を言っているのかよく分からない。

「力の制御装置です。普通に彼女を抱けば一度で死んでしまうでしょう。あなたはからからに乾いたスポンジ。そこに生命力という水が加わったらどうなるか分かりますね。」
「それを抑えるものだと。」

 少女は首を縦に振った。

「えぇ、けどそれはその逆流。あなたの中にある生命力が彼女へと流れます。ほんの少しですけどそれでも今のあなたにすれば死に値するでしょう。」
「・・・。」
「あなたが他の方から生命力をもらって彼女に分け与える。そうすれば彼女は流れに逆らって助かります。二人分の生命力が溜れば二人とも助かるかも知れません。」
「・・・。」
「けれどそれはあくまで推測です。それを使った人間はいません。抵抗したのもあなたが初めてですからね。」

 鮮やかなピンク色の髪の毛が月明かりに照らされ、風によってゆらゆらとなびく。




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サイトをあまりにも更新してないのでこっちくらい更新しておきます。




2005年03月08日(火)



 忘れな草。33 にょ

「どんな、ですか。生命を生む神がいればそれを無に返す神もいるということです。」

 白があれば黒がある。影があれば光があるというということ。

「それはあなた一人だと?」
「いえ一人じゃありませんわ。」

 少女は首を横に振った。自分は大勢の中の一人なんだというように。
 そんな死神の話を聞いて、アスランは少しだけ悲しそうに笑った。

「けれど産み出すのはとにかく消し去るなんて大変な仕事ですね。」
「そうですね。けど私はそれが仕事です。気付いた時はもう死神。自分が生まれてきた意味もその自分の仕事にも疑問を持ったことはありません。」
「本当に?」

 アスランは思わず聞き返した。自分が自分であることに疑問を持った事がないという言葉に。自由などないという存在に。

「そうですね。あなたに会ってちょっと色々と思うようになったかも知れません。今まで誰にも聞かれたこともそしてこんなに長く話をしたこともありませんし。私が話をするのは人の死の直前ですから。」

 それが死神なのだ。誰かに知られてはいけない。だから会うのは死の直前。いや、死にそうな人間にしか見る事すら出来ないのだ。
 だから見たら死ぬ。

「・・・やめたくないですか?」

 人の命を奪うという事。人殺しではない。死神が人を殺すのではないのだから。死んでしまった人の魂を導くのが仕事なのだから。
 それでも何度も何度も人の死を見て、自由など与えられず、ただ与えられた仕事だけをこなしていく。

「やめても何もすることがありません。私はこれだけの存在。役目が出来なくなれば消滅するだけです。」

 ただそれだけの為に生まれてきた。それだけの為に作られた。誰かがしなくてはいけない。その誰かが自分なのだ。

「随分な話だな。」
「それが決まりです。神は生まれた時から神でありつづけなくてはいけない。」

 絶対的で公平な存在。それが神。誰からも崇められるかわりに、自由などない。あるのは永遠だけ。

「じゃあ人間のがいいのか?」

 色々と考えて、自由が与えられて。死というものがつきまとうけれど、神ほど縛られているわけではない。

「まぁ色々なことを思い考えることが出来ると考えればそうでしょうね。神には辛いこと悲しいことも無ければ楽しいこともありませんし。」
「だからあなたはそんな風に悲しそうに微笑むんですか?」

 少女はずっと笑っている。けれど楽しそうでは無い。ずっと悲しそうな目をしている。それは涙を流しそうというわけではない。ただ悲しみを帯びた目の色をしているのだ。

「それはあなたも同じなのではなくて?」

 まるで似た者同士というかのように、少女はアスランを見た。

「・・・何で俺があなたのきまぐれに選ばれたのか分かった気がします。」
「そうですか?」



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まぁ、そろそろキラに出会えるかな、アスランが。
そろそろキラを抱きしめたいんですけど、あたしが。

2005年03月07日(月)



 忘れな草。32 にょ

「こんなに俺をいじめてるのですから。」

 けれど絶対に彼女はアスランをからかっている。意地悪だけれども、それだけじゃない。ただそれだなのだ。そういう気持ちがあるかないかと聞かれたら、絶対あると答えるだろう。

「あら、いじめてますか?生きるチャンスを与えて差し上げてるのに。」

 少女は首を傾げた。まるでそんな気持ちは全くないというかのように。

「チャンスかも知れませんけど最悪の選択しかないじゃないですか。どちらを選んでも後悔しか残らない。」

 どう考えても最善の選択なんて思いつかない。誰かが犠牲になる選択しか彼女は与えてはくれていない。

「それはその人の考え方によってですわ。あなたが他の女の方を抱けば話は済みますわ。」
「それでキラがショック死したらどうするつもりですか。」
「あら随分自信があるのですわね、愛されてるって。」

 くすくすと少女は笑い、アスランは苦笑いをした。

「そう思いこんでいるだけかもしれませんよ。そう思わないとやっていられませんから。」

 愛している、愛されている。思っている分、思われている。そう思い込んでいるだけかもしれない。
 だって、相手の気持ちなんて分からないのだから。

「あらじゃあちゃんと告白すればいいじゃありませんか。」
「しましたよ、ちゃんと。」

 することには、した。だから今、恋人同士ということになっているのだ。それは子供じみた愛かもしれないけれど。

「けれど彼女はあなたに心を許しているのでしょ?」
「まぁ、少しの隠し事はあるみたいですけど。」
「じゃあ閉ざしているのはあなたの方かも知れませんわね。」
「え?」

 少女の言葉に、アスランはほんの少しだけ驚いた声を上げ、少女を見た。

「人に踏み入れられたくない場所はあります。けれどあなたは誰にも踏み入れて欲しくない、誰にも心を許してない感じがします。棘で覆われた檻の中にいるようで、いつでも回りから一歩引いているかのようで。」

 その言葉はアスランに重くのしかかった。けれど肯定したくない。心の隅で思っていたけれど、ずっとそうではないと否定し続けてきた思い。
 自分でそれを理解はしていた。だから努力しようとした。けれど人に弱い部分をさらすなんて簡単になんて出来なかった。
 だから隠し続けた。そんなことはないという感じに。そんな風に自分を作っていた。
 けれど見破られた。それは彼女が人間ではなく死神だからだろうか。

「・・・そうですか?俺としてはあなたの方がそんな感じですよ。」
「私は死神ですから。」
「そうではなくて。そういうことを除いてもあなたは一歩引いていませんか?そもそも死神ってのはどんな存在なんだ?」



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 携帯買い換えということで、新しい携帯に全て移そうと思ったんだけど、残念ながら数が多すぎて移らなかったので。
ということでパソに送りまくった一つです。

つか、インパクト前日から止まって・・・!!すいません。
パソに送った分くらいはちょこちょこ更新します。
誰が見てる見てないどころか、誰も見てなそうですけどね。


早くラクアスから抜け出したいんですけど。とか思ってたりはするんですよ。



2005年03月06日(日)
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