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■ StrawberryCandy2
キラがヴェサリウスに来て、数ヶ月。戦争も、話し合いという形で終結を迎えようとしている今日この頃。戦う必要もなくなり、戦艦にいる必要もなくなったアスランとキラは、ヴェサリウスからプラントの軍施設へと戻り、そこの一室で新婚生活を楽しんでいた。
「アスラン、起きて。」 「まだいいじゃないか…。」 今日は久しぶりの休み。アスランは新婚旅行で長期休暇を取った代わりに、大量な仕事の数をこなしていた。キラも手伝ったのだが、アスランにしか分からない書類も数多くあり、結局一割ほどしか手伝うことは出来なかった。やっとその仕事も終わり、ゆっくりと過ごすことの出来る今日。キラはベッドで丸くなっているアスランを揺らして起こそうとした。 「疲れてるのは分かるけど、だらだらするのは身体に良くないよ。」 ここ最近、ほとんど寝てない生活をしているのは、キラが一番よく知っていた。いつもいつも隣で見ていたから。 「………分かってるけど…寝させて…………。」 布団を抱え込み、また丸くなったアスランを揺らそうと手を伸ばした瞬間、アスランはキラの手を自分へと引っ張り抱き締めた。 「ちょっ、アスラン!!!」 キラをおとなしくさせようと、抱き枕にひっつくかのようにアスランはキラを抱き締めた。キラは抵抗したが、アスランはまた寝てしまった。 「〜〜いいけどさ。」 アスランの腕に抱かれ身動きが取れなくなり、これ以上は無駄と思い、キラはおとなしくした。アスランが疲れているのは分かっている。しかし自業自得のところもあるのだ。 「こっちだってまだ身体だるいんだからね。」 ここ最近、あまりの忙しさに肌を重ねるどころか一緒に寝ることも、食事をすることもままならなかった。 だからだろう。昨日、アスランは部屋に帰るとキラを抱き締めた。 ドアを閉めることなく抱きついたアスランを叱咤し、なんとかドアは閉めることは出来た。が、アスランが疲れているから、との抗議もむなしく、久しぶりのアスランの温もりにそのまま流されてしまった。 そしてその結果がコレ。少しでも温もりを逃がさないというかのように、アスランはキラを抱き締めていた。気持ちよさそうにぐっすりと。キラもその温もりと昨日の疲れから寝てしまいそうになったのだが、何とかそれを抑えた。 「駄目、寝ちゃっ。ここで寝たらまた奥さん出来なくなっちゃう。」 キラはゆっくりとアスランの腕から抜けると。ベッドから降りた。 「よし!」 キラは手始めに部屋に散らかっている服を集め、洗濯をした。 結婚してから一ヶ月。ようやく洗濯にも慣れてきた。というか、軍の中には戦う兵士ばかりでなく、コックや掃除人もいる。もちろんクリーニング専門の人もいるので、別に洗濯などは自分でしなくてもよいのだが、キラは自分ですることを申し出た。自分達の分くらいは、ということで小さな洗濯機を借り、毎日洗濯をしていた。後は掃除なのだが、アスランが寝ているためこれは出来ない。 「どうしよう…。」 料理はつくる場所がない。厨房はあるのだが、ちゃんとコックさんがいて栄養バランスを考えたものを作ってくれる。そうなると別段やることがない。というか、キラは料理をすると、血が混じったり、食べられるものを作れなかったりする。アスランと一緒に料理を作ったこともあったりして、段々は上手くなっているのだが、それでも顔をしかめてしまうような料理しか出来上がらなかった。 何もすることがなくなり、何かすることをと思案したのだったが、結局何も思い浮かぶことはなかった。 「部屋にでも帰ろうかな。アスランとゆっくりする暇もなかったし。」 キラはまだ朝食をとっていないことを思い出し、食堂で二人分の食事を貰うと、部屋へと帰ってきた。 そして、部屋に入るとがっくりと肩を落とした。少し時間が経っているというのにも関わらず、アスランはそのままの格好だったからだ。テーブルに食事を置き、アスランに近づき、その肩を大きく揺らした。 「アスラン…ご飯にしようよ。もうさすがに起きようよ〜。」 「あぁ…。」 どうやら意識は起きていたらしく、キラの呼び掛けに答えてゆっくり起き上がった。けだるそうに髪をかきあげるその仕草は色っぽいなと思いつつ、何だか違うことも思いつき、キラはぽつりと呟いた。 「アスランって外では完璧を演じる割に、部屋だと子供って言うかおっさんって言うか…。」 アスランはなんだか外面がいい。父親の仕事の影響や、クルーゼ隊というエリート隊にいるせいか。いや、月の幼年学校でもそうだったような気がする。キラ以外には優しくて、すごく人当たりも良くて。だから女の子にもすごくもてた。それはただ単に、アスランはあまり深い付き合いをしない人には差し障りなく接するようにしているせいなのだが。 だから、キラに対してだけは他の人とは違い、普通の友人としての接し方をされた。よくよく考えると、キラ以外の人と一緒にいて、アスランが怒った顔やそれ以外の顔をあまり見たことがない。キラの中には、いつも穏やかに笑っていた記憶しかなかった。 アスランのどちらの一面も見ることの出来るキラは、どうしてもその二つの顔を比べてしまう。 しかしアスランはキラに言われたことが不服だ、といった感じでキラを見る。 「キラに子供って言われたくないけどなぁ。それに今日はやけに眠くて……。昨日キラが寝かせてくれなかったせいかな…うわっ。」 伸びをしながら話していた瞬間、キラはアスランの服を投げつけていた。気を抜いていたせいか、それはアスランの顔面に直撃し、前が見えなくなった。 「アスランが寝かせてくれなかったんだろ!!」 「だってキラの中って気持ちよくて…。」 アスランは自分の顔にかかった服を手で取り、それを着込む。 「ばかばかばか!!!!!」 頬も耳も赤くしてキラは抗議した。いつまでたってもこんな初々しい反応が可愛すぎて、アスランはついからかってしまうのだが、キラはそれに気づいているのかいないのか、相も変わらずといった状況だった。 「素直に言うのは駄目なのか?それとも良くないって言うべきなのか?」 にやりと笑うアスランは変な色気を含んでいて、それを見てキラは、さらに心臓が早く動くのを感じた。 「そうじゃなくて!!そもそもそんな台詞言わないでよ。」 ぷいっと頬を膨らまして怒るキラを見て、くすくすと笑いながらアスランは答えた。 「わがままだなぁ。」 「アスランが変態なんだよ!」 いつもいつもキラは思う。どうしてアスランはそんな台詞を恥ずかしげもなく言えるのか。聞いている方は恥ずかしくて仕方ないと言うのに。
軍に残るのは大変だけど、ずっとそばにいられるそんな生活をキラは嬉しく思った。 それなのに。変化のないごく当たり前のほんの少しの幸せしか望んでいないのに、どうしてそれすら許されないのか。
2004年01月30日(金)
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