のづ随想録 〜風をあつめて〜
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2005年05月02日(月) 冷やしトマトの真実

 ゴールデンウィーク? はあ? 俺にはまったく縁がないっつーの。
 というわけで、世の中が大型連休に浮かれまくっているときに黙って仕事をしているのも悔しいので、今日はちょっとした呑み会に顔を出した。顔を出した、といってもメンツは俺を含めて3人。
 一人は会社の上司で(正確には隣のチームのマネージャーなので直接の上司ではない)、最近受診した人間ドックの結果、糖尿病を患っていることが判明し、かなり厳しい食事制限を余儀なくされている御方。もう一人は取引先の女子社員。わが社がアメリカ進出するにあたって、その関連業務で渡米した才女だ。彼女は帰国子女で、俺とツマがよく訪れる青山のレストランで学生時代にアルバイトをしていたとかで、「アタシ、絶対のづさんに接客しているはずですよー」と嬉しそうに話してくれた。
 糖尿病患者と帰国子女と俺、という奇妙な呑み会であったが、さすがに年長者が食事制限の中では呑み会そのものも盛り上がらず、まあまあ今日はこの辺で……という具合に、さっさとその呑み会は幕を閉じた。
 そこで帰国子女の彼女を、
「じゃあ、そのあたりで軽く呑み直そうか――」
 とかなんとか誘えばよかったのだが、そのことに気づいたときはもう彼女はJRの改札の向こう側から「今日はごちそうさまでした」と愛くるしい笑顔でこちらに会釈をしていた。まったくもう。

 ちょいと呑み足りず、腹の具合も中途半端だった俺は、ガード下の焼き鳥屋の暖簾をくぐった。
 久々の“一人呑み”である。
 狭い店内はそれなりに客で埋まっていたが、カウンター席は俺と同じような独り客が3人。サラリーマン風の男はジョッキを傾けながら、なにやら文庫本をひらすら読み進めていた。そうか、呑みながら文庫本を読む、というのはなかなかオツだな。先週末に『カカシの夏休み(重松清)』を一気に読み終えて、今、『本の雑誌血風録(椎名誠)』に突入したばかりで、これは状況的にもぴったりではないか、と思った。
 とりあえず、ナマ。焼き鳥は、ええと、皮とネギマね。あとハツももらおうか――え、ハツは4本なの? そんなに食べられないからやめときます。あと、ううん、冷やしトマト――、いいねえ、これください。
 素早く以上の発注を行い、まずは真っ先に出てきたナマで独り乾杯。
 次に現れたのが冷やしトマト。油断をしていたせいか、これが意表をついて抜群に旨かった。レギュラーサイズの真っ赤に熟したトマトをまず半分に切って、更にそれぞれをざくざくと4つずつに切ってある。ほどよく冷やされていて、はらりと食卓塩をかければ、厚切り一口サイズの冷やしトマトは冷たく甘く口の中に広がるのであった。薄切りではなく、あくまでも“厚切り”を良しとしたい。
 そうか、夏のビールのお供には熟した冷やしトマトが正解なのだな、冷奴も野菜スティックも悪くはないが、実は冷やしトマトが王道だったのだな、と俺は認識を新たにしたのだった。


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