「硝子の月」
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2002年05月07日(火) <伝説> 瀬生曲

「ルウファ」
 自らを『運命さだめを知る者』と言う少女の名を口にする。
「もう戻ったのか」
「そうよ。あなたがいなくて探したんだからね」
 冗談めかしくそう言って、彼女は片目を閉じて見せた。
 ティオは『余計なお世話だ』とは言わない。ただ居心地悪そうに視線をらした。
「それで」
 少女は構わずに問い重ねる。
「どうなの?」
「…………」
 ティオは改めて彼女を見詰めた。赤いその瞳を自分から見詰めたのは初めてのことだ。
 ――そこに運命は映っているのか――
 そうして、吸い込まれそうだと思う。
 彼女のほうでも同じ感覚を覚えたことを少年は知らない。
「探す」
 短く、だがはっきりと彼はそう答えた。
運命さだめとかそういうんじゃなくて、俺が探したいから、探す」
 何故か彼女にはそれを告げねばならない気がした。
「それでいいのよ」
 満足気にルウファが笑う。
「運命なんて、気に食わなかったら蹴飛ばしてでも変えてやればいいんだから」


紗月 護 |MAILHomePage

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