「硝子の月」
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「ルウファ」 自らを『運命を知る者』と言う少女の名を口にする。 「もう戻ったのか」 「そうよ。あなたがいなくて探したんだからね」 冗談めかしくそう言って、彼女は片目を閉じて見せた。 ティオは『余計なお世話だ』とは言わない。ただ居心地悪そうに視線を逸(らした。 「それで」 少女は構わずに問い重ねる。 「どうなの?」 「…………」 ティオは改めて彼女を見詰めた。赤いその瞳を自分から見詰めたのは初めてのことだ。 ――そこに運命は映っているのか―― そうして、吸い込まれそうだと思う。 彼女のほうでも同じ感覚を覚えたことを少年は知らない。 「探す」 短く、だがはっきりと彼はそう答えた。 「運命(とかそういうんじゃなくて、俺が探したいから、探す」 何故か彼女にはそれを告げねばならない気がした。 「それでいいのよ」 満足気にルウファが笑う。 「運命なんて、気に食わなかったら蹴飛ばしてでも変えてやればいいんだから」
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