「硝子の月」
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2002年04月18日(木) <蠢動>瀬生 曲、立氏 楓

 どこまでも突き抜けるような青い空。
 漆黒の鳥の翼は、その色を映して微かに青くきらめいた。

 
 「…しかしお嬢ちゃんはひとつ勘違いをしておるぞ」
 「え?」 
 真剣な表情で呟く老婆の顔をルウファは怪訝な表情で見返す。
 「確かに儂は『叡智の殿堂』出身じゃ。それは認めよう。だがの、彼の地の住人が全てあらゆる知識に長けていると思うのは誤りじゃ。彼等は己が専門分野に突出しておるだけじゃ。故に儂がお嬢ちゃんの望み通りの知識を持っているとは限らん」
 「…そんな…」
 当てが外れたルウファはがっくりと肩を落とす。やっぱりあいつは只の厄介者だと毒づきつつ、それならばと決められた額の金額を口に出そうとした、瞬間。
 「ま、儂の専門は薬草学じゃがな」
 にんまりと老婆が呟いた。
  


紗月 護 |MAILHomePage

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