月と散歩   )   
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2002年05月19日(日) 見えない敵


ひさしぶりに、仕事の話でも…。

―――

先週、夜勤でした。
夜は好きなんだけれど。

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いま、やってるのは
来年に打ち上がる予定の、H−�僑船蹈吋奪箸裡叡別椶稜確船織鵐�。
その、『清掃』です。

ロケットのメインエンジンは
液体水素(LH2)と液体酸素(LOX)を反応させて推進力を得る。

燃料タンクに それらの液体が充填されるわけだけど
タンクの中が汚れていると、あとあと大変なことになる。

…『液体窒素』ってのは映画とかでも出てくるから有名。
液体窒素に漬けたバナナで釘が打てちゃったり、
T−1000がバラバラに砕けちゃったり(笑)。
あの、液体窒素で −196℃。

液体酸素は−183℃。
液体水素に至っては、−253℃と、とってもクール。

そんな中に髪の毛1本でもあろうものなら
たちまち凍って『針』と化し、燃料の流れに乗ってバルブなんかを破壊してしまう。
また、液体酸素ってのが厄介で
油分と反応して、爆発性の強いゲル状物質になる。
そうなると、ちょっとの振動でも ボン!…と。

…なるらしいのです(幸い、まだそうなったトコを見たことないので)。


だから、タンクの中では チリひとつ、手の脂ひとつもあってはならないんです。

…で、『清掃』と。

―――

これがまた、大変で。

まず。
『ブラックライト』を使って、油分を探します。
最近、やんちゃな若者(年寄的表現…)のクルマなんかでよく見る
紫の妖しい光を放つ、アレです。
特殊なフィルターを通して、紫外線だけが照射されるんですが。

ただし、こっちは業務用。
そんじょそこらの坊っちゃんが付けてるのとは パワーが違います。
光源は水銀灯。
Tシャツ1枚くらいなら透かしちゃうくらいの光を放ちます。
美肌とか、言ってられないです(笑)。
一応、日焼けしない程度の波長の紫外線ですが。


…なぜそれで 油分が見つかるか は、訊かないでください(苦笑)。

とにかく。

それで照らすと、たちどころに手の跡やら、ひざをついた跡やらが浮かび上がってくるのです!
チリや埃も光ります。
なぜか。
気分は、鑑識。
やー。悪いコト出来ませんねー(誰に?)。

んで、それを見つけては拭き取っていくのですが
これが結構キツイ。
微かなその光を見逃さないよう、タンク内は真っ暗。
そんな中でのブラックライトの光は 目に来ます。
だんだん疲れて来るとモノが二重に見えてきます。

精神的にもよろしくない。
かがんでやってるので、腰も痛くなる。

この作業、丸2日間。

―――

それが終わったら、また、拭き取り。

今度は明るい中で。

タンクはアルミ合金です。
イメージとしては『巨大なアルミ缶』といった感じ。
厚さは、5mm程度。
でも、ただの板っ切れじゃあ、ない。
強度を増すために補強がされてます。
…ビリヤードの、球を並べるヤツ。三角形の。
アレが、直径4メートルのアルミ缶の中に、数千個、くっついてる。
そんな感じです。

その『三角形』。
アルミの削り出しです。外板と一体モノ。
アルミってのは、削り粉が とっても細かくなるらしいんです。
目に見えないくらいまで。

(注:知ったかぶり、80%)

その、目に見えない削り粉。
…と、酸化物、等々。
それが僕らの当面の敵です。

数千ある三角形。
それを一個一個、拭き取っていきます。

見た目、キレイなのに、拭けば付いてくるアルミの粉(その他諸々)。

一箇所を 二度三度拭かなきゃならないから、いっこうに進まない。
1日かけて、せいぜい2,3メートル四方。


…ふう。

―――

清掃期限、月曜の昼まで…。

昼・夜、2交代で4日間やって全体の4分の3…。
残り4分の1を、半日で…

…できるか〜〜ッ!!?

現場を知らない『上』のひとたちは、成せば成る と励まします。

―――

戦うべき相手は、『眼下』か、『頭上』か。


…自分自身か?


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