★ 夏海の日記 ★

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2002年01月14日(月) 新聞から 〜 気分障害 〜 その1 躁病

久しぶりに 新聞からです。
思いっきり転写です。 これは、毎週日曜日に連載されていたのですが、連載が終わってしまいました。こういう特集をもっとしてくれたら良いのになぁって思うんだけど...。


☆☆☆☆☆ ヨーコ先生の 精神科入門 (精神科医、エッセイスト 斉藤 陽子)☆☆☆☆☆

今回の大きなテーマは、『気分障害』です。

1.躁うつ病は、『双極性障害』
 気分障害の中には、躁(そう)うつ病と うつ病があり、似ているけれどまったく別の病気と考えられています。
 躁うつ病は、気分や活動性が盛り上がる状態(躁)と、落ち込む状態の両方を併せ持つことから「双極性(感情)障害」と言います。
 これに対して、うつ病は「短極性障害」ですね。まずは気分障害の約30%を締める躁うつ病からみていきましょう。
 診察時、躁あるいはうつ、いずれかの症状を認めても、それだけで双極性障害と診断することはできないのです。過去に躁やうつがなかったか、しっかり確認する必要があります。もしなければ、その後の経過を注意深く観察することが重要です。当初、うつ病としてみていたら、実は双極性障害だったということが実際あるんですね。
 問題は、治療や治療目標が根本から違ってくる点です。双極性障害のうつに抗うつ剤を投与すればどうなるか。躁状態になり(躁転)、ひいては病相出現のサイクルを早め、悪化させてしまうかもしれないのです。双極性障害の治療は、あくまで気分の安定を図ること。そのため気分障害の診断には警戒が必要なのです。
 双極性障害は、遺伝的要因が大きく、20代という若い頃に発病する例が多いのも、そのためと思われます。遺伝子研究にさらなる成果が待たれます。また、うつ病と違って発病率に男女差がほとんどないのも特徴です。そして何より、再発しやすい疾患だということ。躁やうつから回復しても油断はできません。次に来るであろう病相をいかにして予防できるか、治療が続くのです。
 次週は、この病気と性格の関連について話を進めていきましょう。

2.『執着性格』から発病
 双極性障害(躁うつ病)は、遺伝的要因が大きいことを先週お話ししました。そしてもう一つ、心理的要因として特徴的な性格(病前性格)を挙げることができます。現在、通院している患者さん達を通して見ていきましょう。
 50代のAさんは夫と2人暮らし。既に独立した2人の娘さんがいます。双極性障害と診断されて8年。入院は3回です。明るくて社交的で、絵を描くサークル、卓球教室などに通う活発な人です。一見申し分のないようですが、そうではありません。彼女の言い分はこうでなんです。「この年で何もできないと思われるのは嫌だからサークルに通う」「太ったから自転車で30分走った後、2時間歩いた」。細かいことや人目を過剰に意識するために、なかなか満足できぬ上、落ち込むことも多いのです。
40代のBさんは妻と高校3年生の子供と3人暮らし。この春初めて、双極性障害と診断されて入院。3ヶ月前に退院しました。昇進して困難な仕事を複数抱え込んでしまい、うつ状態になって受診に至りました。仕事熱心でとても几帳面、正義感の強い人です。
 現在は「お手伝い程度の仕事」と本人は笑っていますが、会社の協力もあって経過は順調です。子供の進学問題も解決しました。Bさんのように、適当に力を抜いたり、ちょっと休んだりすることがうまくできずに発病してしまうのは「執着性格」と言えます。
 薬物療法もさることながら、Aさんに「他人と比較せぬように腹八分目に」、Bさんに「少しいいかげんにやるぐらいで」だのアドバイスする精神療法も重要です。
 ところで、Aさん、Bさんは、なぜ入院する必要があったのか。次週見ていくことにしまよう。

3.躁の自覚のない人の入院
 先週紹介したAさんは、躁(そう)状態。クリニックからの紹介で、夫に伴われて来院しました。子供達はすでに独立しています。躁うつ病(双極性障害)と診断されたのは8年前。3回の入院歴があります。
 診察室に入ってきたAさんは、さも愉快そうに大声で喋り始めました。(爽快気分)。立ったり座ったりと落ち着かず(多動)、私の肩をたたいて大笑いし(過度のなれなれしさ)、なおも話し続ける(多弁)のですが、話題は次々に変化します。(観念奔逸)。夫によれば、高価な絵を数枚買ったり(浪費)、時間に関係なく外出したり。
 Aさんに振り回され、睡眠もままならなぬ夫は疲れ切っています。一方のAさんは万能感に満ちていますから、入院なんてとんでもないと怒り始めます(易刺激性)。結局、医師の診断と夫の承諾による医療保護入院となりました。
 精神科の入院形態は、病気の性質上、法律で規定された独特のものです。大まかに説明しましょう。
 まず『措置入院』。これは、自傷他害の恐れのある人を、2人の精神保健指定医の一致した診断・意見がある場合、都道府県知事か政令指定都市の市長の権限により強制入院させるというもの。『医療保護入院』はAさんのように本人に入院の意志がなくても、指定医(1人で可)が入院は必要と判断、配偶者などの保護者の同意があれば良いというもの。『任意入院』は、本人が治療の必要性を理解しており自ら入院を希望する場合で、基本的に退院も自由です。
 Aさんのような躁状態、あるいはうつ状態で休養が取りづらい環境にある時や自殺の可能性が考えられる時 ━ いずれも本人には病気という自覚がないために、医療保護入院となるケースは意外に多く、気分障害の特徴を示していると言えるのでしょう。


☆☆☆☆☆ 長くなったので、明日に続きます ☆☆☆☆☆


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