| moonshine エミ |
| 2004年03月27日(土) 風土と血脈(前) | ||||
| 今月、九州に、南へ向かう新幹線が誕生した。「つばめ」である。 博多〜鹿児島間を結ぶ全線の開通にはまだ暫らくの年月を要するため、 今のところは博多から熊本・八代までは特急「リレーつばめ」でゆく。 リレーつばめ。何だか、いじらしい名前だと思う。 鹿児島に行ってきた。父の地元なのである。 しかし、家族四人しての里帰りは、実に18年ぶり。いったいどういう家庭だ。 しん氏いわく 「末っ子はなかなか帰らんものやけんね〜。うちの父ちゃんとこもそうだよ。」 とのこと。やさしい反応だ。 うちの父は、8人兄弟(!)の末っ子。ちなみに、母親は6人兄弟の末っ子。 「まったく、末っ子同士の夫婦やけん、お互いあんなに我侭なんよ」 とは、我が姉の昔からの持論である。 一日目の土曜日は久しぶりの家族水入らずを、ということで、旅館を取った。 が、鹿児島中央駅に着くと、父の長姉にあたる人とその旦那さんが来ている。 大正生まれの夫婦、80歳になろうかというお年ごろ! お元気なものだ。 ぴんとした背筋で、車だってばんばん乗り回している。一緒に軽食を摂る。 おじちゃんもおばちゃんも、生粋の鹿児島弁で意思の疎通が難しい〜。 しかし、互いに笑顔。 「何かさ、鹿児島に着いたら、やっぱり心なしか、人々の顔が濃くない?」 こっそり囁く姉の台詞にふきだしつつ、 私たち家族は在来の特急に乗り込み、薩摩路をゆく。 ほどなく、海に浮かぶ桜島の雄姿が、ものすごい大きさであらわれる。 ただそこにある姿だけで感動を与える、これが自然の凄さだ。 うわー、すごーい、大きーい、と、出てくる言葉に修辞のつけ入る隙もない。 もうもうと噴煙が上がる噴煙に、小学1年生だった前回の里帰りを思い出す。 地中深く穴が伸びた旧式のトイレにどきどきしながら入ったそのとき、 どーん!と重い地響きに襲われた。桜島が噴火したのだ。怖かった。 あの大きな山を朝な夕なに仰ぎ見、噴火を体で感じ、灰をかぶるこの地の人々、 日常として受け止める環境が育てる部分って、確かにあるだろうな、 とぼんやり考える。 思わずシャッターを切りまくった母親は、翌日フイルム切れの憂き目を見ることになる。 下車後、さらにタクシーへと乗り換えて、山深い温泉地の旅館へ到着。 そこで働く人々に若い人はいない。みんな親切。 男の人はおっとり穏やかで朴訥、女の人はちゃきちゃきしている印象だ。 これが鹿児島人の特性か? いま、ネットで調べてみた。 薩摩おごじょ。気丈夫で夫を立てる、とある。なるほどな。 旅館には4つの浴場がある。大浴場、岩風呂、露天、けやき風呂。 時間で男女が入れ替わる。 着いてひとまず、大浴場へ。ここの温泉は、湯が茶色っぽい。 それにしてもショックだったのは、久しぶりに乗った体重計だった。 半年たらずの間に、3キロも増えているじゃありませんか! うすうす自覚はあったものの、信じたくない思いで、何度も乗る。 当然、針は無情の数字を差したまま。 「確かに太ったよ」 「顔も丸くなったし、体つきもぷりぷりしている」 母と姉からも太鼓判。こんな体重、18,9の頃以来だよ。がっくりうなだれる。 うなだれつつも、大量の夕食はきれいにたいらげる。 黒豚といい刺身といい野菜といい、新鮮でおいしすぎる。 所詮、きれいになりたい欲は、その場のおいしい幸せに遥かに凌駕されるのだ。 酒も飲む。酒といえば焼酎、焼酎といえば芋が当たり前の鹿児島である。 泥酔事件も(両親の)記憶に新しい時期だけに、量は控えめ。悲しい。 かえすがえすも、悔やまれるあの夜だなあ。 長さんの追悼でやっていたドリフのコントを夢中で見たあとは、やはり温泉へ。 今度は岩風呂だ。大浴場よりも風情がある。 小さな露天風呂も併設されていた。南国といえど、夜の外気はまだ冷たく、湯もぬるめ。 熱い風呂でだらだら汗を流してガマン大会みたいになるのも、 ぬるい湯、いくらでも浸かっていられそうな心地よさで時間をゆっくり感じるのも、 どちらもいい。やっぱり女って温泉が好きなのね。 体じゅうが赤くなるほど過ごしたあと、浴衣を着て姉と二人、売店でアイスを買う。 何だか子どもの頃に戻ったような、楽しい気分。 部屋に戻って、ひたすらテレビを見て過ごす。 「珍しいね、あんたがそんなにテレビ見るなんて」 親も言う。 そうとも、こういうときは、特別なことをしなければ。 これが私にとっての非日常だ。 父親は隣室。女三人とひとつ部屋で寝るのは気がすすまなかったらしい。 この年になってなお、あくせく働く父にノーネクタイデーは殆どない。 この旅では、とにかくのんびりしたい、と以前から言っていたそうだ。 しかし、一日をともに過ごしてひしひしと感じるのは、 「うちのお父さんは、とにかく、自営業気質。」 目的を果たせば過程は誰からも指図されることがない、しかし、誰の指導もない。 零細だから、企画や営業はおろか、総務も経理も、何だって自分でやってきた。 仕事が細かい。何もかもが目についてしまう習性。それじゃのんびりは難しい。 途中でバッサリ計画を変更しても、誰にも咎められない。大胆不敵。 責任は全て自分で取る。 旅って、性格が出るものだ。 そうしみじみ思うと、自然、頭に浮かぶのはしんちゃんのこと。 彼との旅はとても快適で、豊かな彩りにみちている。これぞ性格の一致だろうか。 旅なんてそうそう行ってられませんよ、という勢いで学生時代は貧しかったが、 付き合いが長いだけあって、気づけばいろいろ行っている。 海ノ中道には私たちの別荘があったし、しん氏の故郷の長崎には何度も、 そのほか、日田、京都、長府、そして名古屋。 どれも楽しい旅ばかりだったな。 桜島、一緒に見たかった。 |
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