moonshine  エミ




2003年07月03日(木)  曇った空に

 朝顔を見た。
 フェンスに蔓を絡ませていた。
 濃い濃い青が、いかにも野生という感じだった。わずかに、白のふちどり。一輪だった。
 もちろん朝の話である。
 だから電車を逃さないようにと立ち止まらなかったし、私は近眼でクリアな視界を持っているわけではない、もしかしたらそうあってほしいという無意識も作用してるかもしれないけれど。
 それにしても凛とした咲き方だった。と、思う。
 明日の朝も、見られるかなあ。

 空は雲って、昼には降りだしてしまったけれど、あの青。
 もう、夏だ。

 朝顔。
 ひとり一鉢をもらって育てた小学生一年生の頃、もう、18年も前か。
 ぱあっと咲いてくれたのは覚えているけど、その花びらが何色だったのかどうしても思い出せない。
 夏休みが始まる前に鉢を家に持って帰らなければいけなくて、それが重くて重くて、お友だちと一緒に少し歩いては下ろし、歩いては下ろししながら帰った記憶は鮮明なのに。

 そういえば、『源氏物語』に「朝顔の姫君」という登場人物がいる。
 高貴な宮家のお生まれ、お育ちで、物静かだけれど芯の強いひと。
 あまたの光源氏の恋のお相手の中で、色好みの彼の誘いに乗って夜を共に過ごさなかった女人は、この朝顔の姫君と、あともう一人だけである。
 千年の昔から、その花のイメージはやはり清冽なものだったのだろうか。

 ちなみに、“あともう一人”が誰だったか、少し考えて思い出した。
 そうそう、玉鬘の姫君だ。
 この姫は、夕顔の君の娘、忘れ形見なんだよね。
 夕顔の君というのは光源氏がまだ若い頃の恋人で、風になびくように源氏に身をまかせるのだけれど、ご存知、嫉妬に狂った別の恋人(六条御息所)の物の怪に殺されてしまうのだ。
 朝顔、夕顔、その娘。
 ちょっと面白いな、とひとり考えるわたくしでした。

◇◆◇
 さて、先日、『ふくろう』での演技で、大竹しのぶがモスクワ国際映画祭最優秀女優賞に選ばれた。
 その『ふくろう』、新藤兼人の監督作品であるという。
 がぜん、見たくなった。
 新藤兼人といえば、一昨年のマイベストビデオ『おもちゃ』の監督である。続けて3回見た。小説も買った。
 清らかさとみだらさ、明るさと物悲しさ、そりゃもうステキな映画だった。
 しかし、新藤さんて91才なんだって。監督って・・・できるんだ・・・。すごいなあ・・・。





↑エンピツ投票ボタン 押すとコメント変わりまふ

My追加
Mail Home

BBS blog


<< >>