500文字のスポーツコラム(平日更新)
密かにスポーツライターを目指す「でんちゅ」の500字コラムです。

2002年09月19日(木) 伸びしろ

 9日、かつて箱根駅伝を沸かせた元早大(現エスビー食品)のエースランナー、渡辺康幸が引退を発表した。まだ29歳。左アキレス腱痛が完治せず、手術をしてもアテネ五輪選考会に間に合わないため決断したという。
 私の瞼には今も、全国高校駅伝で水色の市立船橋のユニフォーム姿の渡辺が他校選手をゴボウ抜きしていた姿が焼き付いている。甲子園に清原和博が現れた時の様な、戦慄にも似た末恐ろしさを覚えたものだ。ゆくゆくは世界を獲る。誰もが思ったろう。だが・・・。「走る意欲、向上心をなくした」という本人の引退コメント。そこには、このまま現役を続けてももはや「伸びしろ」はなく、過去の貯金を食い潰すだけだという虚しさも透けて見える。
 自分はまだ伸びる・・・そう思える時は楽しい。私が38才の今も草野球に熱中するのは、この年になっても、練習すれば少しは上手くなれるかもと思うからだ。だがそれは逆に「下手だから」でもある。もし頂点を知っていたら、年々衰える自分が許せず、さぞフラストレーションが溜まる事だろう。「下手の横好き」は、自分にはまだ伸びしろがあると思える分、トップアスリートより幸せなのかもしれない。


感動したっ!(9/19)

 貴乃花が右膝を痛めながらも武蔵丸との優勝決定戦に勝ち、小泉総理が「痛みに耐えてよく頑張った。感動したっ!」と絶叫したのは1年以上前。しかし、それと引きかえに深手を負い、横綱としての勤めを土俵で果たせなくなった事を、かつてこのコラムで批判した。相手に無用の気遣いをさせてしまった事も相撲の本質をゆがめるもので、「感動」とは程遠いとも感じていた。
 一方で、現実に故障した以上、今度は横綱としての責務を全うできる体になってから復帰すべきで、今場所では時期尚早だと私は思っていた。ところがどうだ、この快進撃は。序盤こそ足をかばう様な動きで2敗を喫し、不吉な予感さえ抱かせたが、昨日の朝青龍戦、今日の武双山戦と万全の相撲だ。
 だが、故障は依然重篤だ。常人なら歩けないと兄の元若乃花が言う位に。そんな中で見せる堂々たる相撲っぷりは、「あの時」より真に「感動」の名に値する。あとは故障を再発させない事を願うのみ。


 < 過去  INDEX  未来 >


でんちゅ [MAIL]

My追加