立派な人になりたい。子供の頃から思ってた。 本当は今だって思ってる。いまさらながらでも、思ってる。 立派な人。社会的地位の高い職業についてる人はとても立派。 お金持ちだって人から見たら立派な家に住み羨ましいもんだ。 生活水準の高い人はやっぱり立派に見える。 それでも思い出すのは大きくて力強くて凛とした背中。 いつだって家族を守るため自分を犠牲にして頑張る。 自分の仕事に誇りを持って自分の信念を最後まで貫き通す。 年を重ねる度苦労も増えるのに心はさらに強靭になっていく。 いくつになったって向上心は忘れず勉強に励む。 たとえ無駄と分かっても人のために涙を流す。 たとえ報われなくても不器用なまま生きて行く。 たくさんたくさん背負い込んでそれでも飽き足らず、 またゼロからスタートだと笑って言える。 その笑顔を見るとその背中を思い出すと涙が止まらない。 もしなれるなら。もし淀んだ世界を難無く受け入れてしまった 自身でも。暗く沈んだ水の底を写してしまったこの瞳でも。 洗っても落ちない泥をそれでも掻き毟るようなこの両手でも。 そんな自分でも許されるなら…。 もしなれるならそんな人になりたい。そんな立派な人になりたい。 それはよく知ってる父の背中にも似て。 だからやっぱり涙が止まらなくて。一生懸命その姿を ずっとずっと追い求めて生きて行くんだ。 そのあまりにも立派なその姿を嬉しそうに思い出しながら。
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