ものものしい厳重警戒のもと、その街は目を覚ました。 未だ消える事のない怒りや悲しみや狼狽…。 そんなものを抱え込んだまま月日が経ち、 またその日を迎えた。 今年は大丈夫。まさか同じ日に同じ事はないはず。 でも問題はそれだけではない。 同じ悲劇を繰り返す事だけが罪ではない。 その日になると必ず思い出す怒りの行き場に人々はきっと 悶え苦しむんだ。そして癒される術はきっと 同じような報復でしかない事に、正しい良心は痛むんだ。 過去の過ちもあるだろう。しがらみもあるだろう。 痕にならない傷もあるだろう。もしかしたら分かり合える日は 来ないかもしれない。 それでも今はただ同じ悲しみが繰り返されないように…。 遠いこの地から、この日に静かに祈りを捧げる。
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