2003年10月21日(火)
酒蔵への道〜その11

いよいよ学内プレビューまであと二日。実質の稽古は今日で最後。明日のゲネプロで調整して、本番だ。

全体の質感が上がるにつれて、ところどころにある穴ぼこやほつれが目立ってきた。小さい部分には違いないが、こういうところをきちんと仕上げておかないと観客が爽快な幕切れを迎えられない。酒造りに似ている。折しも劇場が酒蔵だ。

衣裳合わせに思わぬ時間を取られ、稽古ができない。久しぶりに稽古終了が午前様となった。団員はみなぐったりしている。

TMIの時を思い出す。「鳥になるための十の方法」「のぞきからくり水無月絵草紙」「相聞歌」……。直前稽古では終わるのが日に日に遅くなり、1時を過ぎたこともしばしばだった。学生時代、シェイクスピア研究会の公演の時もそうだった。なんだかとてつもなく重い荷物を背負い、必死になって歩いていた。

こういうせっぱ詰まった時こそ気力が試される。舞台芸術とはこういう戦いの連続なのだ。今も世界中の様々な国で、初日を前にした何万という劇団員が、同じように重い荷物を背負って、脚を踏ん張りながら歩いている。





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