浅間日記

2007年11月28日(水) 現代フォークロアの火

柳田國男の「遠野物語」を題材にした、昭和53年のNHKスペシャル。

漫然としか知らなかったこの人物について、
これまでよりももう少し詳細を知る。



特別に悪いこともせず、かといって良いこともせず、
世間に名を成さず、隣人と同じような人生を送り、一生を終わる。
この国のほとんどは、そうした人間であると氏は語る。

氏が生涯をかけて追求したテーマは、
そうした日本人にとっての幸福だったのだそうである。

遠野物語に出てくる異形のものや不思議な話。
「山の中で遭遇した山ノ神をからかったために3日後死んだ」というような話。
そういう風に人々は理解した、という事実こそに意味と価値がある。

東北に分布するツバキの群落に関する考察。
北方の椿に関する伝承をたどり、これは自然の植生ではなく、
人間が種子をもって北方へ移住し栽培したものであると分析、
日本人のルーツの一つが南方にあるという推論にまで組み立てた。

氏はまた、時代とともに変化することをよしとした。
象徴される大切なものさえ損なわれなければ、
それ以外のものが変わっていくことは成長であると肯定的であった。
自然がそうであるように、人間が新たに何かを生み出す力を信じていた。



「新しい美しさは何か、失われてしまった大切なものは何か、
常にそのことを考え続けなければ日本人の未来に幸福はない」

番組の最後にもってきた柳田のメッセージ。
忘れてしまわないように、頭の中で何度も繰り返した。



象徴される大切なものは、残念ながら失われつつある。
遠野物語は、私達にはもう理解も共感もできない。
しかし、市井の人たちの願いや祈りは、消えてしまったわけではない。

都市化や情報化が、人間の等身大の姿をかき消してしまっても、
山村集落が「限界集落」とよばれ消滅の危機にあっても、

必ず、絶対に、人間がそのはかなさを知り、だからこそ幸福を願う、
小さなフォークロアの火は存在する。
そういうものをこそ、私は見失わずにいたいと強く思う。

2006年11月28日(火) 
2004年11月28日(日) 化学変化


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