浅間日記

2007年11月21日(水)

急な冷え込みは、どうやら当分収まらないらしい。
遠くの山は既に白く、分厚い雪雲に隠れて今日はその峰さえも見えない。

まあ家族みんな元気を出そうと、バレエの鑑賞に出かける。
Hさえもが、このイベントを盛り上げようとしている。

Aは、恥ずかしいぐらいにおめかしをして、
N先生に頂戴した舶来のコートを着て、
コサックダンサーみたいな毛の帽子を被る。

うっとりと鏡に見入る一方で、本当はこんなきまりすぎた格好で外へ出ることは、自分には恥ずかしいのだと言う。

私も、防寒と装いの折り合いがつくぎりぎりのところで、いささかの衣装を纏う。
Hも数少ない登山服以外の服を着る。Aがそれを見て、驚いて笑う。



AもHも、バレエはもちろん、生のオーケストラ演奏も初めてである。
序曲が始まった瞬間に、Aがわあ!と小さく歓声を上げていた。
ピットをのぞいて、この音は誰が鳴らしているのかと、探している。

マーシャが出てきて、ドロッセルマイヤーさんが登場し、
いよいよ小さくピンと背筋を伸ばしては、舞台に魅入っている。
ねずみの怖い場面は、帽子を握り締めて一生懸命恐ろしいのをがまんした。



休憩時間。Hはプログラムを読みふける。

数年前までのHならば、絶対にこうした場所へ同席しなかった。
クライミング以外のことに時間を割くことについて、
彼は自分の中に極端な罪悪感をかかえていた。

そういう男が、こういう世界も見てみたいと思い、
プログラムに書かれているダンサーの経歴から、
この人はどうやってこうして一流になったのか、
毎日どんなトレーニングをしているのか想像している。

よくわからないが、道を究めている人の何かを、
分野を問わず、自分の中の糧にしようとしている。

ずいぶん変わったなあと感心した。
そしてもちろん、3人みんな、バレエも心から楽しんだ。

2006年11月21日(火) 
2004年11月21日(日) 善意の総量


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