| 2026年03月20日(金) |
カインコンプレックス。 |
かっくんが電話の向こうで言った。
「あんた、聖書の勉強してただろ。」
電話のこちらで私は眉を顰めた。
もう2年以上前の話だからだ。
「してたね。」
「カインとアベルって、アダムとイヴの息子?」
「うん。」
「カインって人類で最初の…。」
「殺人者。」
「そう、なんでそうなった?」
「カインは農夫でアベルは放牧者だったの。
神に捧げ物をする時にふたりはそれぞれ祭壇を作った。
カインは農作物を捧げて。
アベルは羊の中から傷のない初子を。
神に祝福されたのはアベルの方だった。
嫉妬したカインはアベルを誰も居ない野原に連れ出し
そこでアベルを撲殺した、というのが聖書の話。」
「カインコンプレックスって知ってるか?」
「兄弟姉妹の間で持つ嫉妬心や憎悪の事。」
「知っとるんかーい。」
「心理学用語だもの。」
「あんたの姉ちゃんたちが、あんたに抱いてたのが。」
「カインコンプレックスでしょうね。」
「わかっとったんかーい。」
「そりゃあ『⚪︎⚪︎さえ生まれてこなければ』って
ずっと言われて、憎まれて育ったから。」
「そっか、嫌な事を思い出させたな。」
「本当に。」
「否定せんのかーい。」
「しないよ。」
「そろそろ寝るわ。今日は疲れた。」
「うん、おやすみ。」
かっくんには悪いけれど、正直な話。
姉たちの事なんてどうでもいいのだ。
ママはよく言っていた。
「兄弟姉妹っていうのはね、
同じ電車に乗り合わせた乗客みたいなものよ。」
本当にそうだと思う。
心身の距離を取った今では何ほどの者でもない。
居なかったも同然なのだから。
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