『稼がない者は生まれてくる価値の無かった屑』だと
『何かの役に立たないのは失敗作』だと、まだ幼かった私に
優しく繰り返し教えて聞かせてくれたのはあの人。
膝の上、自分はまるで宝物のような扱いを受けながら、遠くに
『ほら、アレが欠陥品だよ』と指し示された対象を
ずっと私は注意深く観察していた。反面教師として。
絶対に自分は堕落しないように。
ああなってはいけない。
ああなってはいけない。
ああなってはいけない。
そうやってあの人の教えに従って生きてきた私は
結局『屑』になり『失敗作』になり、あの人にとって
裏切って貶めて利用するだけの存在に成り下がった。
そういう事なんですね?
『お母さん』。
でも私は貴女を恨みはしない。
だって貴女が『アレは育て間違えた品だ』と私に言い聞かせて、
思い通りにならない使い物にならないと蔑んできた姉たちは
あんなに元気でちょっとばかりルーズで感情的で、幸せそうだ。
彼らがもしあなたの言うとおりの『欠陥品』で
今、不幸の真っ只中に居たとしたら。
私は今頃、罪悪感に押しつぶされて死んでいたかもしれない。
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