主人と車で買い物に出掛けた。
河川の工事をしていた。 護岸をして、堤防を作り直すのだとか。 この町は昔大水の被害に遭ったとかで、大層川にご執心である。 しかし川上にダムも作られたし、ここまでやるほどの事か?と余所者は思うのだ。 桜並木まで切り倒す事は無かろうに。 それより、作りかけの橋を早く完成させた方がいいのでは……。 この土地の人間の考える事は、よく判らん。 「工事、まだ終わらないね。早く終わらせないと、雪解けで水嵩が増して、大変な事になりそうだな」 と主人が、橋から川を見下ろして言った。 「そうよね。それに、何もこんな寒い時にやらなくても……もっと早く始めれば良かったのに。秋頃からだったでしょ、確か着手したの」 「ああほら、それは稲刈りの終わった農民の手を当てにしてるからさ」 「あ。なるほど〜!」 と私が感心したところで、
「なーんてね」
えっ……。 私、また
騙されたかー!!
くそー、くそー! 悔しいー!! 「どうして! どうして貴方はそうやって、人が油断した頃にひょろっと私を騙すの!! どうして!!」 と車内で絶叫すると、主人が笑い出した。 「どうして! どうしてそんなに騒ぐの、シオン!」 「真似するなー!!」 運転中じゃなかったら、飛び掛っていたよ。 くそー、家庭内なのに心を許せないのか。 こうして私はまた猜疑心の塊になるのだった。
|