夕暮塔...夕暮

 

 

淡き火を - 2004年01月28日(水)

穏やかで淡き灯を抱いて進んでく いつか来るそのいつかの日まで




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「静かな子なのよ、勿論必要な時にはちゃんと泣くんだけど…」 ちいちゃんと呼ばれるその子は、彼女が言うとおりちっともむずからない温和な赤ちゃんで、会ったばかりの私に抱かれてすぐにふわふわと笑いながら小さな手を揺らす。あまりに落ち着いた様子なので、「これは真剣にすごい。一体どんな大人になるのか」と皆が感嘆する。お母さん似なら、きっと聡明で優しい人になるのよね、と心の内で話しかけながら背中を撫ぜる。赤ちゃんはあたたかくていいにおい。私はあなたのママの横顔がとても好きだった、白い肌と額から唇までのラインが見た事もないくらいなめらかで凛として、彌勒っぽい美しさとでも言ったらいいのか、知性的で優しげな雰囲気のある人だ。彼女が博士号を授与された時の晴々と誇らしげな姿をよく憶えている、旧い講堂に差し込んだ懐かしい春の光、窓の外では大木の枝垂れ桜がこぼれんばかりに咲いて、小柄な背に満ちた誇りと喜びを映しているみたいだった。謙遜も傲慢も介さないのびやかさが、本当にきれいで、素敵だと思った。

理不尽に残虐な目に遭う子ども達がいる中で、優しく穏やかな(おまけに賢い)母親の下に生まれたこの子は、どれほどの幸運かと思う。童話に出てくる魔法使いのように、私も腕の中の赤ちゃんに何がしかのギフトを授けられたらいいのにと思うけれど、そんな特殊技能はないから、どうか暖かな人生をと重ねて祈るばかり。




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