緩急 - 2003年11月29日(土) 恐ろしく慌しい土曜出勤の後、大学時代の友人3人で待ち合わせて共通の知人が開いている個展を訪れる。先日お会いした、美しくてきりっとしたお嬢さんが迎えてくれた。 「自分が欲しいと思うものが、見つからない世の中になってしまったんだ。…例えば、和室に合うスピーカーなんて本当に見つからないんだ」 なるほどと頷きながら聞いている、しかしそういう風に考えても、普通は自作しようとはなかなか思わないだろう。それを実際に作れてしまうというのが本当にすごいと思う。御影石を土台にしたスピーカーは本当によくできている。勿論、わたしたちには手が出ない値段なのだけれど。 個展はお皿がメイン、飾り気がなくて、素朴なのに重厚で品のある焼き物が並ぶ。この模様はどうやって出るんですか、と尋ねると、「これは、藁を乗せて焼くとこういう影が出るんだよ。でもどういう模様になるかなんて焼きあがるまでわからないんだ、窯の中のちょっとした加減で変わる、偶然の産物だから」。 奇跡みたいなものなんだ、一つ一つが。そんな風に思いながら、灰銀の光がまぶされた小さな満月みたいなお皿をそうっと持ち上げる。ああ、きれいだ、華やかというのではなくて、西洋のお皿のような計算された整調の美でもなくて、不揃いなのにしんしんと沈むように美しい。 渋谷に出て、目的の日本料理屋さんに行ってみると既に予約でいっぱい。先輩が一度訪れたというフレンチのお店に行くことになる。メニューはジビエの季節になっている。駅から近いのに、こじんまりして雰囲気がよくて、お料理もすごくおいしい。きっとまた来ると思いながら、帰り道で周りを見渡す。本当は渋谷は人が多すぎて苦手な街で、特に休前日には滅多に来ないようにしているのだけれど、ここは本当に素敵だった。ゆっくりお話して、午後までの忙しさが全部飛んでしまったと思うくらいのんびり楽しかった。 -
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