お稽古 - 2003年11月27日(木) ガラス張りのチョコレート屋さんを横目で見ながら、246のゆるい坂道を上る。もう西陽もすっかり朽ちて、六時にもならないのに世界は夜の色合いで冷えかかっている。 炉に据えられたお釜に柄杓を差し入れる、この瞬間がたまらなく好きで、だいたいいつも勝手に恍惚としてしまう。どこまで沈んでゆくんだろうとぼんやり考えると、ため息が出そうにうっとりする感じになる。柄杓の先は、清い水の中をくぐって果てもなく深くて暗いところへと向かう。実際にはほんの数十センチの深さなのだからほんの数秒の後には底に行き当たるようにできているのだけれど、そのことを知っていてさえも、もしかしたら果てがないのかもしれないと錯覚するあの一瞬が、いつも不思議で、得難くて、大切な何かだと思う。 -
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