夕暮塔...夕暮

 

 

乙女椿 - 2003年01月15日(水)

木の隣に「春」の字をそっと置いてみる 乙女椿は淡き面影



木に春と書けば笑みこぼれるように花開く君の面影を見る









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実家の庭でこぼれる程咲いていた薄い桃色の椿の花、あれが乙女椿と呼ばれる品種だと知ったのは割と最近のことで、年々花の数が減っている事を気にかけて調べてみて初めてわかったのだった。あの木いっぱいに花が咲いていた頃、うちには沢山兎がいた。乙女椿の木の並びに兎小屋があって、兎たちは勝手に土を掘って地下に巣を作り、時々庭木の根をかじっては祖父を困らせたけれど、鷹揚な気質で孫に甘い人だから、大したお咎めも処置もないままだった。もう十数年も前の話。その後悲しい事件があって、兎は一旦我が家から全部いなくなった。私はそんなに幼くなかった筈なのに、あの時の事を思い出そうとすると記憶が曖昧になる。人間は、こうやって、つらい事を封じ込めるようにできているのか。

もう二度と飼うこともないと思っていたら、数年前妹が突然兎を買ってきて驚かされた。「とても安かったの」と妹は笑ったけれど、そんな値段とは思えないくらい可愛い子で、里帰りする楽しみのひとつになった。病気になったと聞いた時、心配はしたけれど、まさかこんなに早く死んでしまうなんて思わなかった。リビングの丸い影、ゆったりと伸びた姿が懐かしい、人懐こい子ではなかったけれど、とても好きだった。




やわらかで長き耳持つきみの背を撫ぜた陽だまりの丸い残影


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