待つ人の - 2002年11月21日(木) 待つ人のいないドア開ける冬の日も淡々と過ごしてゆく強さを ************** **** ** * 日付も変わる頃、友人は地下鉄の改札近くで自宅に電話して、帰宅の遅さを告げた後、「ああー…ちょっと考える」 と顔を少し曇らせて答えて終話する。不思議に思って、何を? と尋ねると、「お風呂、今日入るか、明日朝にしようかなって。」 いいね、そういうの。私はなんとなく心暖められたような気持ちになって、つい口に出してしまう。もちろんひとりの暮らしは嫌いじゃない、面倒も多いけれど、虚勢じゃなく心地いい事もたくさんある。 「ご飯とか、こんなに忙しくても、自分で作ってるんでしょう? 凄いよね、本当…」 一度も実家を離れたことのない彼女が真剣に尊敬をこめて言っている事がわかるから、全然嫌な感じはしない。この手の発言は微妙だ。ニュアンスひとつで自慢にも嫌味にもなる。 だから私は素直に笑う、「ご飯作るのってすごく楽しいよ、この頃ちょっと凝りすぎてて、1日潰れることもあるけど」。 もちろん、実家暮らしだったらいいなあって、思う事も沢山あるんだけどね。 穏やかで優しい祖父母と、もう12歳になるビーグル犬の事を考える。 電話線でつながろうと思えば容易い、受話器の向こうに懐かしくてきれいな光景が広がる、地平線ぎりぎりまで満たす新雪の平野、庭に霜のおりた朝、冷たい水の底で眠る錦鯉たち、ひややかな感触の廊下に満ちる澄んだ空気と、祖母が畳を擦る箒がけの音。声も凍るように清冽な冬の始まり、なのにこんなに甘くて、今は少し痛々しい。 本当は、人間は多分ひとりで生きていくことには向かない生き物だと思う。 だけど私は今1人だ。自分で、そう選んだから。 -
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