みかんのつぶつぶ
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最後に、
あれが最後だったかも知れない笑顔は、
眠っていたときの笑顔だった
目を開けた彼に、
「笑っていたけれど、
なんの夢をみてたの?」と問いかけると、
「歩いてたんだ、一生懸命」
小さな声で、
得意顔になって、
意識が混濁するなかで、
このときだけは、ハッキリと、確かな彼の言葉になって
ベッドに横たわる足元で、
母が彼に呼びかけていた
「どうしたんだ、こんなになって
起きて歩かなくちゃだめじゃないか
一生懸命に歩かなくちゃ」
眠っている彼の耳に、母の言葉が届き、
その言葉のおかげで、歩けたんだね
ホントは、大好きだったんだよね、お母さんのこと。
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