みかんのつぶつぶ
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寒い。 こんな季節になったのだ。 また、 この季節がやってきたのだなあ…
グリセオールの効果があったらしく、 今日はとてもすっきりとした顔で起きていた。 何か話しかけてくるのだけど、 どうも理解してあげられなくて。 痰がからむ。 なかなか吐ききれない。
痛み止めの座薬は、 痛みがきてから使うということになった。 モルヒネの副作用で、 意識が朦朧としてしまうことを最小限にするために。
食後に服用していた粉薬も、 点滴に入れることになり、無理をして飲まなくてもよくなった。 下剤のラキソ30滴は、様子をみて与えて見る。 固形物のほうが飲みこみやすく、 サラサラとした水分は、逆に飲みこむときに 気管へ入ってしまう危険が高いのだ。
本当は、 もっと早く、 こういう処置をして欲しかった。 もうとっくに、 こういう状態だったのにな…
リハビリの先生が ベッドサイドまで来てくださって、 手足を柔らかくするマッサージをしてくださる。 先生は新婚の主婦でもあるため、 調理方法についての問いかけをしながら リラックスをさせてくれる。
焼き魚は先に塩をふって焼くのか、 煮魚はひっくり返すものなのか、
彼はじっと聞いている。 少しだけ表情が変化するので それが答えになるのだ。
子どもの頃、 彼は「物知りタダシくん」と呼ばれていたと姉達が言っていた。 得意げに答えていたであろう彼の表情が目に浮かぶようだ。 これまでも、 時事問題や歴史のことなどを質問すると、 簡単に噛み砕いた回答をしてくれたものだった。
でも、 彼自身のことを明確にしてくれることは ほとんどなかった。 自分のことは、 自身のなかで処理をする人なのだ。
そんな彼が、 「辛い」「寂しい」「嫌だ」「欲しい」 あんなにまでも要求をしていた心は 夏の終わりとともに 光を失ってしまったようだ。
病院の敷地内にある木々が落葉する景色を、 1年前の彼を想いながら眺める。 こんな風に、 落ちてゆく木の葉をみつめながら 退院する日を数えていたであろう彼の気持ちを想う。
季節は繰り返す。 あたり前のように巡ってくるんだね。
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