みかんのつぶつぶ
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なんだか、日に日に衰弱してゆく気がする。 意識も、もうどこか彼方へ飛んでいってしまっている。 言葉を発する力も、弱々しい。
ただ、単なる身体的状態の沈みなだけなのだろうか? また上がってきてくれるのだろうか?
夕食を終えて、煙草を吸いに外へ連れ出す。 どうも、あんまり煙草は吸いたくない様子なのだ。 なぜだかわからないけど。 あまり状態が良くないことだけは確かなのだ。
あっちの方へ行ってみよう・・・というので、 病院の敷地内を散歩する。
虫の声、 月明かり。 まるでE.Tのようだと思った。 E.Tを自転車のカゴに入れて、月を横切る、あのシーンのようだと思った。
バス通りまで出ていって、しばらく車の往来を見ていた。 もう寒いから帰ろうか?という私の問いかけに、 思いもかけない答えが返ってきた。
「ショウタロウは?・・・」
彼は、息子を探しにきたのだ。 先日から頻繁に息子の名前を口にする。
彼は、何かを息子に託したいのだろう。
「ショウタロウは今夜は塾に行ってるから、 来るように言っておくね」
私は、涙がこみ上げてきて、声の震えを抑えようと必死だった。 せめてもの救いは、車椅子を押している手前、 正面から彼に話しけないで済んだことだ。
病室へ戻る道を、なるべく遠回りして押して帰った。
ホントに生きているのは辛いと思った。
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