みかんのつぶつぶ
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2001年09月01日(土)

衰弱のしかたが、あきらかに今までと違う。
眠り方も、静かにスヤスヤとして・・・

冗談を言ったり笑ったり、楽しそうにしているのだが
弱々しい声であり、痰もからみがちだったり・・・

「もう帰りたいです、生きているのがつらいです。帰らしてください」

熱にうなされたように、抑揚のない言い方で、
看護婦さんに訴えていた。
回転の悪くなった脳で、精一杯感じたことなのだろうか?

「俺は身体障害者じゃないよ、健康な人間なんだから、元気になるんだから」

私が顔を見せたとたんに無表情に、抑揚もない声で、
まるで独り言のように吐き出してきたのだ。
記憶の欠片のなかから拾い集めて、主張してきたのだと思う。

もしや、眠っているようで眠っているのではなくて
様々な思いや苦悩に、翻弄されているだけなのだろうか・・・

彼はまだ、自己の世界へ入りきってしまうことを必死に拒んでいるのだ。きっと。
空想の世界から急に現実的な言葉が飛び出してくる・・・


少しづつ少しづつ
健康だった彼の姿や精神が
目の前から失われてゆく。

少しづつ
さよならして行くんだね。

寡黙な優しさを持つ彼らしく。



いやだな・・・
彼の影が薄くなっている。
全てを丸く包み込むような雰囲気を
身体中から発している・・・
父がそうだったように。

 


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