みかんのつぶつぶ
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2001年03月04日(日)

今日で、外泊は終わり。

金曜日から今日までの、この三日間。
穏やかに 語りかけるように 爪痕を残すように 
静かに静かに、時の流れを感じていた。

首から肩にかけての痛みは、
痛み止めが切れるととたんに、表情が歪んでくるほどだ。
彼は、騒がずそっと、身を横たえる。
しばらくすると起きてくるから、
少し眠ったほうがいいよ、と声をかけると、

「眠ると一日が 早く終わっちゃうから」

目をあわさず、つぶやいていた。
照れていたんだね。
だけど、精一杯の気持ちなのだろう。
私は、言葉につまっていた。

彼は、
少しでも、
自分自身の気持ちを前に持っていこうと
必死なのだ。
静かに、必死なのだ。

息子の、6歳の時の誕生日に買った望遠鏡で、
窓の外、病院の方向を覗いていた。
高台にあるマンションの4階だから街が見渡せる。
だけど病院は、山の向こう側。

「向こうの山が邪魔していて、見えないでしょ。
今度、病院の屋上に行ってみようか…」

「屋上って、あるのかな」

「あるでしょ、屋根があるんだから」

雨上がり、富士山が姿をあらわしてくれた。


彼には、脊髄への転移は話していない。
呼吸をつかさどる筋肉にも腫瘍があるという。
恐らく腰にまで……と。
社会復帰は無理だ。

「下手したら、2、3ヶ月であっという間に逝ってしまう」

シップ薬を貼ってあげる。
ベッドで寝違えたと思っているから。
いや、
それは私へのカモフラージュかもしれない。
心配させない為の。
そんな痛みではないことは、
彼が一番承知なのだから。

3月8日午前8時50分 開頭手術開始予定

手術に、意味はあるのだろうか。
脊髄にまで転移しているのならば、
手術で痛くて不自由な思いをさせることが、
果たして…………?

彼と子供達へは、手術の話ししかしていない。
もう3回目だから、手術をすると言っても、
またすぐ元気に帰ってくると思っている。
今回は、特に表面だから1時間位で終わると先生から言われているし。


明日。
嫌だな、月曜日。

すぐに、帰ってくるよね。
きっとだよ。


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