『鍵』 - 2002年09月29日(日) いつも思ってた 沢山沢山雪が降って 沢山沢山雪が積って 誰も家から出れなくなればいいって。 秋が来て冬が来る 日が落ちるのが早くて夜が長い 朝起きても暗いんだ 学校が終わって帰ると ランドセルの奥底にある『鍵』を探しながら考えてた 沢山雪が降ってお父さんとお母さんが家から出れなくならないかな そしたら三人でオセロをするんだ テレビ見ながらご飯食べて そうだ トランプでもいいなぁ 鍵っ子だった。 だからと言って孤独だった訳ではないはずだ きっとすごく大切にされてたはず きっと。 虐待なんてなかった ただ家に居なかっただけ。 真夜中に車の音がする 親が出かけた音 大人になって聞いた話では 溜まったストレスを ドライブ好きのお母さんが夜中に お父さんと2台の車でドライブに行ってたらしい そんな事知らなかった アタシは置いていかれたのだと よく一人で窓から外を眺めてた 次車がきたらきっとお母さんだ 次こそはお父さんだ そう思いながら 道を行く車の数を数えてた そう 真夜中に。 小学生の頃だった。 帰ってきた2台の車を見て安心して まるでずっと眠ってたかのように寝たふりをして親を迎えた 帰ってくると必ず水鳥の部屋を覗くからだ 眠った顔を見て安心しただろう 不安と気を使う そんな事を覚えたのは小学生だった 小学生の低学年の時 今でも忘れられないこの不安感と孤独感 アタシは自分の小学生の子供に与えちゃいけないと思う。 土曜日 学校から帰ってきたら お母さんがキッチンで料理をしていた だから土曜日が大好きだった 大急ぎで帰って いい匂いのする家の玄関を開ける ちっさな家だった 玄関を開けたら 開けっ放しのドアからキッチンが見えた 『おかえり』そう笑ってお母さんが料理を作っている 何作ってるの? 水鳥は必ず答えた お母さんは決まって言う 名前なんて無いから分らない そんな名の無い料理を水鳥は すごく楽しみに待ってた。 子供達が言う 『今日のご飯何?』 水鳥は答える 名前なんて無いからわかんない 子供達はキッチンを覗き込んで考える 時に意味不明の料理の名前をつけたりして笑ってる彼らも あの時のアタシと同じ気持ちなんだろうか 今はいくつもの『鍵』を持つ 家 仕事場 車 小学生の時はたった一つ 大切な『鍵』 アタシはその『鍵』が 実は大嫌いだった 鍵のかかってない家に帰りたかった 冬の寒さの中 冷え切った家に帰りたくなかった 淋しくなって知りもしない電話番号を押し捲った 単なるいたずら電話に思えただろう 知らない人達にアタシは 『母』がどこにいるか聞きたかったのだ 時々鳴る無言電話にアタシは 遠い記憶を重ねる この電話の向こうでは 小さな子供が泣いてるんじゃないだろうか きっとアタシの孤独の根は 『鍵』の中にある 孤独の拒絶の哀しみのドアを開ける『鍵』は どこに行ってしまったんだろう 『鍵はどこですか?』 水鳥。 ...
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