海の男と言えば海図である。 ま、そうなのかとあらためて訊ねられたらあまり自信はないし実は自分でもちょっと違うだろうなと思ってはいるのだがやはりボートオーナーとしては海図の1枚くらいは持っていたほうがよろしい。というワケで1枚だけ注文してみる事にした。のだが、その1枚が難しい。 候補は次の3つ。 1.横須賀港横須賀・1/11000 2.東京湾中部・1/50000 3.ヨット・モーターボート用・浦賀水道・1/75000 フツーに考えれば、というか何も考えなければ3番で決まりである。東京湾の南半分がほぼ網羅してあるしサイズもB3と扱いやすくお値段も¥1470円也と手頃とまでは言えんが許容範囲である。縮尺がやや大きいのが唯一の難点であり最大の難点でもある。だってさあ、釣りのポイント探せないじゃん。根とか。元々そういう目的で作られたモノではないのだから仕方が無いと言えば仕方が無いのだが、それはつまり我々の求めるモノではないという事だ。 となると1か2である。こちらには共通の難点がいくつかある。まず、でかい。B1サイズであり縦の長いほうは1mを超える。これを広げられる場所は船内ではアフトデッキだけなのだが我々が出船した場合そこは大量に釣られた魚のウロコやヌルでベトベトのハズであり地図を広げるにはあまり適当な状態とは言えない。いらぬ憶測をするな馬鹿ッ!まあンなモノは気にせずデッキに置くなりさっさと折り畳むなりすれば良いのだがなかなかそうは出来ないもうひとつの難点が待っている。実に高いのだ。 こちらはお値段¥3360円也。これに送料と代引き手数料が加わると4千円を超える。ちなみに「1冊」ではなく「1枚」である。楮の手漉き和紙に金箔と漆で画かれているとか裏が鈴木京香のお宝水着ポスターになっているとかそういう事は無いようなので、やはりこれは高いと言わざるを得ない。オシャカサマの手から飛び出せない我々木っ端船乗りとしてはまあ2〜3枚も買えば行動範囲をカバーできてしまうのだが、海外航路の本船はきっとこれを全部買ってるんだろうなあ。儲かってしょうがねえだろうなあという気もするのだが一社独占の状態ではなかなかボッいや高値安定の状況を打破する事は難しいようだ。というワケで私のような貧乏オーナーが気軽に汚したり折り畳んだりできるシロモノではない高級品なのである。 とはいえこっちしか無いんだよなあ。ハンパなモノを買っても役に立たんもんなあ。1枚で済ませようと思ったら東京湾中部になるのだが、これは縮尺がややハンパな感を否めない。地上の5万分の一地図を思い浮かべてみると良い。かなり細かい情報も載ってはいるが、ペラをカジって極貧のどん底に突き落とそうと待ち構える暗岩のひとつひとつまでわかるかと言えばそこまでではない。さらに今のところ行動範囲はマリーナからほぼ10Km以内に限られている。何しろ燃料タンクがショボイのでそれ以上先まで行くと帰って来られる保証というモノが無いのだ。これはいずれ装換の予定だが逆に言えばいずれであり10Km以遠の情報は今すぐ必要はないとも言える。それにその頃にはGPSも動いているハズなので、もしかしたら広域図が必要になる事自体がないかもしれないではないか。 と、さんざん悩んだ結果横須賀港横須賀に決定。超詳細図でありこれなら滅多に見つからんような小さな根までバッチリ出ている。ハズである。多分。滅多に見つからんような根をワシが見つけられるかどうかという事もあるが少なくともチャレンジはできる。でもなあ。道路があっても自分の位置を見失うようなヤツだからなあ。役に立つといいんだけどなあ。無駄になったら勿体無いなあ。
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